先導者 | ナノ






アイチ視点





「櫂、くん」

自分でもよくわからない。
目の前を櫂くんが歩いていて、変にそれを意識しちゃって、櫂くんのことを考えてたら頭がぐるぐるして。だからってぼくはなんで今櫂くんに抱きついてるんだろう。

「ご、ごめんね櫂くん…急にこんなことしたりして」

櫂くんの返事は、ない。
どうしよう、絶対ぼくのこと嫌いになっちゃったよね?…別にもともと好きだってことが前提なわけじゃないんだけど………って、ぼくはなにを考えてるんだろう。
顔色を伺うにも、後ろから抱きついてるんじゃ出来ない。それにこんなことしたあとで櫂くんと顔を合わせるなんて恥ずかしすぎて出来ないよ。だったらはじめからこんなことしなければよかったのに、なんて思うけど今更遅い。
櫂くんの背中に顔を埋めながら考える。けど、最善の策は見つからない。
…ぼくはどうしてこんなことしたんだろう。自分がよくわからない。

「……アイチ」

だめだ、櫂くんに名前を呼ばれるだけでも今のぼくは、どきどきしてつらい。

「(心臓が破裂しそうだなんて、)」

心臓の鼓動が櫂くんに伝わっているのだと思うと、顔が火照る。少なくともこんな姿を櫂くんに見られなくてよかった…のかな。
櫂くんの背中は大きくて、温かい。







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