思えば初めて会ったときから惹かれていたのかもしれない。 三和と櫂はよく一緒に行動することが多い。櫂はそれを好んでいないが、拒んでもいない。彼にとって三和とは、唯一まともに話をする存在である。しかし、決して三和のことを友人などとは言ったりしない。そのかわり三和が話しかければ反応し、極稀に笑ったりする変わった奴だ。そんな彼を見ているのが面白い、というのが三和の率直な感想であった。 「櫂ー帰ろうぜー」 「ん…あぁ」 櫂の返事はいつも素っ気ない。 だからといって何かがあるわけでもないのだが、気だるそうな櫂を見ているとなぜか撫で回したくなる。…これがいわゆる母性本能というやつなのだろうか。なんて、一人で笑ってみる。櫂が不審そうにこっちを見る。それがまた面白い。 「……何見てるんだよ」 「別に何でもないぜっ!」 「全く…お前はいつもそうだよな」 櫂は溜め息をついた。 三和といると櫂はいつも溜め息ばかりだが、呆れながらも着いてきてくれる。それが三和にとっては嬉しかった。 今となってはこうして一緒に歩くことも話すことも当たり前のようになっているが、こうなることが出来たのにはそれなりの努力があったからだ。 櫂は正直言って素直じゃない。 何を話し掛けても無視、全てうるさいの一言で一蹴と、最初は全く可愛くないやつだ、と思った。しかし不思議と悪印象を抱くことはなかった。むしろ今までにいなかったタイプなこともあり純粋に面白かった。 ある日、櫂がカードショップでヴァンガードファイトしているところを見て、話を持ち出した瞬間に櫂の表情が変わったことから、徐々に距離を詰めていった。そして今の関係に至る。 「今日はカードショップ寄ってくか?」 「別に寄るつもりはないが……お前が行きたいなら行ってやってもいい」 「それじゃ久しぶりにヴァンガードファイト、しようぜ?」 「…面白い。いいだろう、その勝負受けてやる」 「よっしゃあ!」 三和は子どものように無邪気に笑う。それに釣られて櫂も少し笑った。 その隙を見て三和は櫂の左手に指を絡ませた。 三和と櫂とは、たまに手を繋いだりする間柄である。登下校で、休日の買い物で、二人きりの時で。主に三和から指を絡ませることが多いのだが、たまに櫂からの時もある。今日もそんな、何気ない感じで。 珍しく拒もうとしない櫂もまた可愛いと思う三和なのであった。 |