フィディオはみんなの人気者だった。
女の子からも好かれて、チームメイトからも信頼されて、頼れる存在。
ボクもそんなフィディオを尊敬していたし、信頼していた。
フィディオとやるサッカーは楽しかった。
よくマルコとジャンルカもいれて、四人で遊んだりもした。マルコの作るパスタをみんなで食べたり、ジャンルカの漕ぐゴンドラに乗ったり、四人でサッカーをしたり。
毎日が本当に楽しかった。




「アンジェロ、一緒に帰ろう!」

「うん!あ、買い物して帰ってもいい?」

「もちろん!練習に付き合って貰ったしね。何を買うんだ?」

「夕食の食材!」


その日は、フィディオの練習に付き合ったから、いつもより帰る時間が遅かった。
夕食の食材を買い終えて、帰る途中。
普通なら、また、明日、で、お別れの筈なのに。
トラックが突っ込んできて、ボクを庇ったフィディオが跳ばされて、本当に一瞬の出来事で。
わけが分からなかった。ボクは無傷で、フィディオは血まみれで。


「アン…ジェロ?」

「っ!フィディオ!」

「…無事?」

「ボクは無事だけど、フィディオが…!」

「良かった………アンジェロ、好き、だよ…」

「…え?」

「退いてください!」


誰が呼んだのか、気づけばボクの回りには野次馬と救急隊員の人でいっぱいだった。
フィディオが運ばれて行くのを見つめながら、ボクはパニックを起こした頭で一生懸命フィディオの言った言葉の意味を考えていた。



数時間後、フィディオが亡くなった、と連絡が入った。
何がなんだか、よくわからない。なんでフィディオはボクを庇ったのか、なんでフィディオはあんな言葉を残したのか、なんで、フィディオがいないのか。


「ねえ…フィディオ、あの言葉は、どういう、意味なの」


涙が溢れる。葬式でフィディオに問い掛けてみた。
フィディオは答えてくれる筈も無く。
残された言葉の意味はわからないままだった。



涙葬
(君って残酷だね、)




*「葬式」さまへ提出
凄く難しかった…ありがとうございました。



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