その気持ちに気付くのはまだはやい



もう二時間くらいはたっただろうか
大粒の涙を枯らすことなくポロポロと零す君を抱き締め慰め続ける

何を聞こうともイヤイヤと左右に頭を振るばかりで、一向に泣き止む気配も言葉を口にする様子も無い

本日何度目になるだろうか、君の名前を音にする

「リン」
「…」

やはり返事はない

「リン、何で泣いてるの?」
「…」
「リン、俺…何かしちゃった?」
「っ…」

リンの顔をのぞき込み問うと涙をいっぱい溜めた瞳がぐらりと一度歪み、黙って首を振った

「リン」

何時ものなら言葉のように聞こえるリンの音が感じられない
リンの表情から伝わる悲しい気持ちしか今の俺にはわからない
リンに何かあったのは確かだ
しかし原因がわからない
俺は何かしてしまっただろうか
はたまた、他のボーカロイドが何かしたのか
マスターと喧嘩をしたのだろうか
リンの気持ちがわからない自分に苛々する

「…リン」

しかし、返事が無くても溢れ止まらない涙でいっぱいな瞳でも、俺の腕から逃げようとしない態度が、俺を落ち着かせてくれる


「リン、お願いだから」
「…」
「リン」
「…」
「ごめん、」
「…」

揺らぐ瞳に自分の姿が映っていることに気付いたと同時にリンが俺の背に手を回した

「…レ、ン」


か細い声が耳に届くと同時に何かが弾ける音がした












………………………………
20110330

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