[こちらはネタ、シチュエーションなど書き殴りを捨て置く場所です。大体、リサイクルされます。CP名は一応、表記しますがその他の表記は特にしないのでお気を付けください。ジャンルはバラバラです。]


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↑new



2014. 11.7.fri.22.27




[PSYCHO-PASSパロ]
椅子の背もたれをぐいー、と押し、首を仰け反らせると真後ろのデスクで作業している同僚の姿が見えた。珍しく真面目にやってるのか、と椅子のキャスターを転がして、その液晶を覗いた。たくさんのウィンドウが開かれているようだが、やけに画面は暗く、表示されているのはどれも画像のようだった。
「何見てんだ?」
「宮地サン? あー、ちょっと前の事件のほとけさんの写真すね」
「……お前、それ、ギリギリっつーかアウトじゃん」
「なんだかんだ言って、セキュリティ、ザルっすから」
宮地は溜息をひとつ吐いて、椅子を隣に並べて画面を覗き込んだ。ひとつひとつをじっくり見ていくと、どれも切断された体の一部だった。そして、どの断面にも共通点があった。
肉の断面、赤から黒へ変色しつつ、しかし、中央の骨は白い。時には脂が外気に触れることによって、冷えて白く固まっているものもあった。総じて死体が見つかった場所が暗かったからなのか、どの写真も鮮明とは言い難かった。
「ザルだと感じてんのはお前くらいだ。いいから、仕事しろ、高尾」
「気付いたっしょ? 言ってもシカトされんだよなぁ。多分、緘口令が布かれてる」
「うちの係の仕事じゃないしな」
しかし、所詮は裏道を使ったとしても執行官が手に入れることのできる情報なんていうのは価値があるものではなく、あえていうのならば、隠してあるという状況にある情報そのものがエサにほかならない。
「担当って三係でしたっけ?」
「これって、のこぎりか……?」
「っぽくないすか?」
肉の断面がぐちゃぐちゃになっており、よほど切れ味の悪いもので切ったのだろうと思ったが、どうもこのぐちゃぐちゃっぷりをつい最近見た。昨日の現場に転がされていた死体だ。
「のこぎり好きなんすかね〜」
「ちらっと聞いただけだけど、三係の方では切ったあとにやすったんじゃないかっていう話も出てたみたいだぜ?」
「やするってなんすか……金属ヤスリ?」
ありえねえー!! と笑い出した高尾、執行官であり、宮地の部下である。この係の中では最も若いのだが、一番の古参である。宮地よりもこの仕事には詳しいかもしれない。しかし、あまり仕事熱心ではなく、今までの数々の功績からは想像は付きにくい。熱心ではない、というだけであってもちろん不真面目ではない。やるときにはやる、最善の一手のみを打つことに長けているので、傍から見ると何もしてないように見えるだけなのだ。と言っても、本人が一手で終わらせるのをもったいないなどと言って普通に働くこともあるので、さらに日頃がただのサボりにも見える。この部下についてこれだけのことを把握できたのここ最近の話だった。
同時に仕事に慣れ、自信を感じ始めたのもここ最近である。
「まー 、そんなに面倒なヤマじゃないっすね、コレ」
腹を抱えていたと思えば、突然、笑うのをやめて言った。元から少し吊った目を細める。緩く弧を描く口元も相まって、鋭く冷たい印象を与えた。
「……へえ、お前が言うならそうなのかもな」
複雑な思いを全て押さえ付けて宮地は、高尾に釣られるように薄い笑みを浮かべた。




2014.11.7.fri.20.12




[PSYCHO-PASSパロ]
ずっしりと重い、奇形の銃を構える。それを奇形と呼ぶ世の中ではないのだが、少し旧時代の武器をかじってきたせいで、この銃の方が奇形だと思ってしまう。リボルバーだとか、ライフルだとか実弾を込めるような武器は、数十年前に比べると遥かに一般人には手に入らないところにあった。学んだ以上、実物を手にしてみたいものだとか考えながら、脳内に響く聞き慣れた女性の声に耳を、いや、意識を傾ける。
対象の犯罪係数が更新されました、無機質な機械音がそう告げるやいなや、銃のあらゆるパーツが開き組み変わる。さらに複雑な形へと変形したその銃。そして、銃口に青い光の粒子が集まり、収縮していく。
放たれた光線は誰の目も止まることなく、対象の身体へと吸い込まれていった。
大きな破裂音と共に狭い室内に細かく裁断された肉片、生臭く赤い鮮血が雨のように降り注いだ。紺色のウィンドブレーカーの背にそれらが付着するのを感じながら、宮地清志はその部屋を後にした。

最近、相互さんになった柚月さんに「執行官宮地さん、どう?」って言われてときめき死を迎えたので、ちらっと。もうちょい書く予定あります〜(フラグ) あ、でも事件とか考えるのは無理なんで、それっぽいことだけ(フラグ)




2014.11.02.sun.19.21




高尾和成はため息をつきながら、定期券を改札に押し付けた。終電も近い時間となり、駅には人がまばらにいるだけ。たまには定時で帰って満員電車に揉まれてみたいものだと、歩を進める。エスカレーターをゆっくり登り始める。どうせほかに乗っている人はいないのだ。これもダイエット効果あったりしないのかな。あまり長くはないエスカレーターと階段は比較的にこの地下鉄が古いということを示している。新しい列車ほど地下へ潜るのなんのって。
駅を出ると空は濁った紺色を広げ、ぼんやりと細い月の姿を確認できるくらいだった。小さな古い駅の横は寂しい商店街がある。これまた駅と同じく小さい。日中や休日は和気あいあいとした商店街なのだが、如何せん時間が遅い。もう少しで日付が変わってしまう。そんな商店街も半ば、とある金物屋の角を曲がった。いかにも、な路地裏。狭い路地が長く伸びていた。木造の家がちょこちょこ目に付く。そのうちの一軒。蔓が絡みついた小さな家の壁には暗い緑の蔓が絡みついていた。曇りガラスの窓はオレンジに染まっている。ほっ、とさきとは違う安堵のため息を零しながら、くすんだベルのついた扉を押す。
「ただいま、宮地サン」
「おう、おかえり」
ちりりん、とベルが鳴った。
カウンター席に座り、隣の椅子に鞄を置いた。宮地は高尾が席に着くと同時くらいにカウンターの内側へ入った。その手には布巾が握られていたので、掃除でもしていたのだろう。
「新しい豆仕入れたんだけど、どうする?」
「え〜、こんな時間に2杯も飲んだらオレ寝れないじゃないすか」
「だよなぁ。明日、土曜だしよくね? ……もう今日か」
ポットを持ち上げる腕が見えた。でも、と突っ伏した高尾の耳にコーヒーをドリップする音が聞こえてくる。コーヒー独特の匂いも香ってきた。
「オレも手伝いましょうか?」
「ん? ああ、いつもの会合だから? いいよ、休めって」
「はぁ。深夜の宮地サンは無駄に優しくて辛い」
「俺はいつも優しいだろうが、轢くぞ?」
「そこは挽かないと」
「誰が上手いこと言えと。ていうか、そこまで上手くないわ」
薄い浅葱色のコーヒーカップを受け取りながら高尾は笑った。宮地が銀のミルクが入った容器とスプーンも渡す。
「そんなこと言っても独り身だし、暇なんすよねー」
「まあ、分らなくもないけど。言っとくけど、時給は850円までな。3食付き」
「高校生すか!!」




宮地がじーちゃんがやってた喫茶店継いだ。

5人みんなで集まる日に高尾が引っ越したって話して「ちょっとぼろいっちゃあ、ぼろいんですけど。駅近くて、大家さんが1階で喫茶店やってるんすよ。そこのコーヒーが美味しいのなんのって。あとね、オレが終電で帰っても起きててコーヒー煎れてくれるんであうよねぇ、マスター……」もしかしてなぁ、なんて思いながら聞く宮地。

「仕方がないな。わたしとて、さゆさんが愛した店を売りたくはないよ。潮時なのだろう……」
「選択肢はせれしかなくはないだろ! ばーちゃんが愛して、じーちゃんが愛して……おやじもおふくろも、もちろん俺もこの店を愛してる。やっと、コーヒー飲めるようになったんだよ……俺が、継ぐ!!」
脱サラして、じーちゃんから経営の話聞いて(じーちゃん、喫茶店はじめる前は税理士だったりして)お客さんは常連さんばっかだし、その姿勢を変える気はないから、暇なときは資格の勉強とかしてる。じーちゃんとの約束で高尾がどんなに遅くなってもコーヒーを煎れてあげることって。面倒くさいなと思いながらも引き受けて、土日は高尾が手伝ってくれたりする。
黒子っちが偶然やってきたり(古書巡りの果て。イメージが神田の隅っこ)、黄瀬くんが黒子っちから話聞いて収録に使わせて欲しいって言ってくるんだけど、断ったのに黄瀬くん自身が気に入っちゃったり。近所のじーちゃんたちのマニアックな同好会の会合とかひらかれたり。

ホモじゃない。ただ、最終的にはホモかも。
待っているのがこんなにも楽しくてつらいなんて。な宮地と
定時に帰りたいなんて嘘、夜のあなたの嫌々言いながら煎れてくれたコーヒーが美味しいですよ、な高尾。





2014. 3.27.thu.12.14




【森笠】
三月十日。森山由孝は晴れて海常高校を卒業した。泣くのをこらえて後輩に見栄を張る同級生たちの輪の中で、森山も涙を隠した。湿っぽいのは大嫌いな元主将に倣う。そんな元主将を尊敬してやまないとある一年生が号泣しているのは想定内で、森山も元主将もバスケ部全員が「やっぱり」と笑みをこぼしたのだった。
 式が終われば今度は、どこぞのカラオケだのファミレスだので打ち上げが待っていた。バスケ部で行われる三送会(三年生を送る会)はもう少し先の予定なので、ここで最後な訳じゃないし、と二年生の眼鏡がわんわん泣き続ける図体ばっかり大きい子供みたいなモデルを慰めた。
 校内は、賑わっていた。笑い声も泣き声も響いていた。まだ春というには遠く、春一番もまだだし、桜はつぼみの先端をほんの少しだけ赤くさせているだけだ。それでも、花粉だけは意気揚々と春を告げていた。ただでさえ、花粉で眼も鼻も痒くて困っているのに誤解されかねないな、とぼやく。誰も突っ込んでくれないので、元主将に同意を求めると、部で一番長身のおかんポジが笑った。森山、それ墓穴だろ、と。否定すれば、ら行の言えない二年生は全力で泣きついてくる。「分かい(り)づらいっすよおおおおお」とモデル以上にうるさい泣き方だ。

 「止まるな。負けるな。お前等ならできる」

 元主将はくるり、と背を向けてそう言った。
 男は背中で語るもの、と言ったのは誰だろう。
 うるさくむさ苦しい集団が突然静かになって、近くで騒いでいた人たちもなんだなんだ、というように黙ってしまった。たくさんの視線を感じるなか、元主将は声を張り上げた。練習中の怒声と同じように、短い言葉を三つだけ。後輩たちには大きく確固たる強いものとして映っているだろう背中は、同じ三年生からしてみてばボロボロで決して強くはなかった。涙を隠しているだけで、ただの照れ隠しだということに後輩たちは気付く様子はない。笑いをこらえて肩を震わせたり、むりやり引き攣った困り顔を作ったりと三年生は大忙しである。
 分かりやすい背中だな。そうだな。熱くなってきた目頭を押さえる。視界から元主将もおかんポジも眼鏡もら行言えないやつもモデルも消えた。真っ暗な世界。
 勝て、と言わないのは自分が負けたから。進め、と言えないのは自分はもう一緒に進んでやれないから。
 そこに自分たちはいないから。
 元主将の思いが痛いほどに伝わってくる。
 今日、誰よりも大きくて重い後悔と責任を背負ったまま、この元主将は海常高校を卒業する。

 森山の瞳から涙は零れなかった。



卒業もの一個も書いてなかったなぁと思って。




2014. 3.25.tue.10.40




【宮高】(緑高も有)

「っくそ」
昨日、友人を部屋に泊めた。そのせいで部屋がかなり汚い。実はかなり綺麗好きな俺だが、ばれると色々と気を遣われたり、逆に一切の気遣いのなさに苛立つことが必須なので隠している。そんなわけで、友人の昨晩の暴挙(服を脱ぎ散らかす。寝っ転がってスナック菓子を食べる。ゴミを捨てない。etc……)をよく我慢したなぁ、としみじみ思いながら俺は掃除機をかけている。やっと出ていった友人を恨めしく思いながら、畳のへりとへりの間に挟まった柿の種の破片を睨みつけた。この際だ、畳を取って掃除をしよう。そうと決まれば早い。部屋の端から、畳を一枚めくっては掃除機をかけ、を繰り返す。そんなに広い部屋でもない。すぐ終わる。
「あ?」
思わず声に出てしまった。畳の下のベニヤに何か赤い跡が付いていた。赤というか茶色というか。まるで、いや、まさに血が乾いたような色だった。実は一介の貧乏大学生がこんな新しいマンションに住めているのは、何年か前にこの場所で集団自殺(詳しくは知らない)があったからなのだった。不動産の人が一応、濁して説明してくれたが、そんなのは調べれば一発だ。そういうことは信じない性質だし、ホラーは割と好きなので俺には好物件だったりする。友人たちが面白半分で泊まりに来るのが玉に瑕。それ以外は、風呂もキッチンもあって、和室もあるしコンビニも近い。駅は少し遠いが、大学には自転車で行ける。いいことずくめだ。
そんな話は置いておいて、とにかくそんないわく付きの物件で、畳めくったら血痕出現。フラグ立ったよね、これ。
さてさて、ここでめくらないという選択肢はない。
畳がずっと被さっていたせいで、日焼けした様子もなければ腐っておるようにも見えないベニヤ板に手をかける。影になってはいるが、食べかすなのかホコリなのか、そんなのの集合体が微かに起きた風にもふわふわと舞い上がったのが見えて、咳き込みそうになった。マスクでもしときゃあ良かったと思うも後の祭り。もう知らん。勢いだけでめくる。
「っわ?!」
そこには、オレンジのパーカーとジーパン。それらの服の端から覗くのは白骨。指の骨に、足の骨。頭蓋骨。理科室の標本のように白くはなくて、どこか茶色っぽくくすんでいて、頭蓋骨には髪の毛が中途半端に残っていた。
よく収まってたなぁ。
成人男子が腰を抜かして盛大に尻餅をついておきながら何を言っているんだろう。本当にそう思う。どうしよう。どうしよう。したいじゃん。骨じゃん。死体?! 警察に電話だ。いや待て。いま電話したら実家もどんなきゃいけないやつだわ。ふむ、あかんな。
「こんにちわ」
「あ、こんにちわ」
正座した男がぺこりと頭をさげた。俺も首だけで会釈するが、この姿勢(相手から見たらM字開脚。野郎のM字開脚ですがなにか)はものすごく首が下げづらい。
「オレ、高尾和成って言うんすけど」
「はあ」
「お名前伺ってもいいすか?」
にへら、と笑ってみせた男は、いつの間にかあぐらに脚を組み替えていた。俺もこんな姿勢でいるわけにいかない。よっこいせ、と片膝を立てた。
「宮地清志、デス……?」
「宮地サンですか。大学生?」
「大3ですけど……」
「まじか、年上じゃん。オレ、大2……だった?」
大2だった、というのは中退でもしたのか。
「ん? あんた誰だ? 勝手に家入ってんじゃねーよ」
「気が動転して一周回って、冷静になるってやつ? 高尾和成ですってば。あー。オレね、これ」
そう言ってにやにやと(笑みの絶えないやつだ)と自分の真下を指した。
高尾と名乗った男の下は畳でもベニヤ板でもなくてコンクリとホコリと服を着た白骨死体。なんでそんな不安定なところに座っていられるんだろう。

オレ=これ=骨

やっと元の感覚? を取り戻した俺。同時に冷静さを失った。
「え…………幽霊…………? は?? 轢きたい」
「オレ轢かれんの? ブフォォ」
腹を抱えて笑い出した高尾にイラッとしたので、殴ろうと拳骨を振り抜くが空振った。
「え?」
自分のグーに握った手と高尾の顔を何度も交互に見る。
「分かった?」
「高尾和成19歳。死因は練炭自殺やって一酸化炭素中毒。苦しかった。ここに埋めたのは自殺者応援サイトの運営者かなんかの多分、ヤのつく自由業のお兄さん。オレの内蔵とか今頃、誰かの体のナカだったりして。でも、服とかそのまんまだし、平気かも。っつーか、一緒に自殺した人とどうしてオレだけ別の場所なんだろう。山に捨ててくれるって約束だったのに。まあ、そんなわけで、8年前に自殺した幽霊です☆ ふつつかモノですがヨロシクでっす!!」
「死ね」
「ざんね〜ん! もう死んでマス」
癖とは恐ろしいものである。初対面の人間につい、で死ねなどと言ってしまうとは。いや、幽霊だった。人間ではない。そういう問題でもないが。
「なにがヨロシクなのか、俺もよろしく聞きたい」
「笑顔こわっ」
「うるせえ、デフォだ」
「だからさっき説明したじゃないすかー」
「成仏しろ。即刻。今すぐ。」


ひとしきり騒ぎ倒した後、ふと部屋を見回すと骸骨と幽霊がいて、もう一度、静かに腰抜かした俺は散々高尾に笑われた。
この幽霊は地縛霊ならぬ物縛霊とでもいうのか。Wi-Fiのように骨を中心とした一定の距離しか自由がきかないらしい。骨を警察に渡されると困る、と突然、真剣に言われてしまった。八年も見つかってなければ後何年経とうがあまり変わらないかもしれない。俺が越す時にでも通報はすればいいか、という結論に至った。ベニヤ板も畳も戻して、掃除機をかけて、おしまい。いつも横にうるさいのがいること以外は生活にはなんの影響もなかった。基本的に家を出れないのか出ないのかは分からないが、俺が大学行く時もバイト行く時も、帰ってきた時も家にいる。もしかしたら俺がいない間にどこかに行っているのかもしれないが知ったことではない。
なんだかんだと二週間が経過した。そして、やっぱり問題はこの何事もなく馴染んでいる幽霊なのだった。

「オレ、けっこうメシとか作るの上手いんすよ?」
「いや、お前、幽霊だから」
「……あ、そうだった」
ぽん、と手を打った高尾。
「お前がいたんじゃ、女とか連れ込めねーだろうが、成仏しろ」
「宮地サン、彼女いないじゃん」
「うっせ。いいから邪魔」
油を多めに引いたフライパンで四つに切った茄子を炒める。じゅー、と小さな気泡をあげながら青紫を一層黒に近づけていた。いいなーうまそーオレも食いたい、と繰り返す高尾をシカトして、程よく色がついたところで菜箸であげる。しなぁ、とした茄子を皿に盛った。
「おかず、それだけ?」
「めんどくさいからな」
一人暮らしの大学生がまともに料理をするのは珍しいことなのだ。元大学生のくせにこの高尾という幽霊は俺に向かってもっとマメに料理をしろと言ってくる。なんでも、生前は毎日きちんと自炊してお弁当も作っていたという。実家暮らし、ではなかったのだろう。はっきりとは言わないが口ぶりから誰かと一緒に暮らしていたようだ。どうせ社会人の女性のヒモでもやっていたのではないだろうか。身長もそこそこ高いし、顔もそこそこ整っていると思う。イケメンかと言われると、どちらかと言えばイケメンかな、くらいだが、何よりも人懐こい笑顔が目立つ。笑顔、というか笑いが絶えない。俺自身も感じているが、高尾はすごく距離の取り方が上手い。出会って数時間で、そこらの友人よりも楽しく会話ができてしまった。お互いのことを何も知らないのにおこまで話を盛り上げられるというのはなかなかすごいコミュ力だと思うが、同時に少し怖くもあった。なんとも言えない違和感がわだかまったまま胸の中にある。
「白メシと素揚げの茄子って……せめて味噌汁くらい作りましょーよ」
「てれれっててー。いんすたんとみそしーるー」
「似てない」
ばっさりである。
「じゃあお前がやれ」
「ちょ、ムチャ振り」
こほん、と一つ咳をした高尾。俺は茶碗と茄子を乗せた皿を持ってキッチンからリビングへ。脚の低い、本当はキャンプだとかアウトドア用のテーブルにそれらを並べる。フローリングに置くにはあまりにも不似合いなそれはとても便利なのだ。仕舞おうと思えば仕舞えるし、しかもかなり小型になる。そう思うとどれだけの人数をこの部屋に泊めてきたのかと頭が痛くなってくるが見なかったことにしよう。
ちょっと待って、と叫んでいる高尾をキッチンに置いて俺は手を合わせた。いただきます、とポン酢を茄子にかけた。
「ぼくドラえもん〜」
初代ドラえもんのそっくりの声であの有名な自己紹介が耳元で囁かれた。とどめにふぅ、と耳に息を吹きかけられてポン酢がそれはもうどぼっ、と。一気に出てしまった。茶色くポン酢色に染まった茄子から視線を高尾にあげる。
声にならない何かがこみ上げてきた。そう、これは殴りたいのに殴れないもどかしさである。







高尾ちゃんが自殺するに至る経緯だとか、一人だけ部屋に転がされてた理由とか。真ちゃん(恋人?)との過去とかさ、実は真ちゃんとヤのつく自由業の方(青峰くん?? 黄瀬くん??)が繋がってたりとか。湧き出る妄想。
そして、こいつら出すと、まさかの宮地が一回り年下になってしまうという大問題。








インターホンに出ると高そうなコートに身を包んだスーツの男が立っていた。画質の悪い画面に、眼鏡が反射しておりその顔はあまりはっきりとは見えなかった。
「…………しんちゃん……?」
「え?」
高尾の独り言に振り向いたところでもう一度、チャイムが鳴った。居留守は使えないだろうし、俺には使う理由がない。ただ、あまりにも青い顔をした高尾を見るとどうしていいかわからなかった。こんなに明るい高尾だ。かなり世渡りが上手かったはずだ。人から嫌われるような性格はしていない。曲がりなりにも数ヶ月一緒に暮らしているのだ。
どうして自殺したのだろうか。
何度か聞こうとしたことはあるが、珍しくあからさまに嫌そうな顔をして聞かないでくれという雰囲気を出すのだ。
「はい……」
「突然、すみません。〇〇銀行の橋本というものです」
「あーあの、いいです大丈夫です」
小さな液晶の向こうで男が声を発した瞬間、後ろからひっ、と引き攣ったような声がした。急いでインターホンを切って、高尾のもとへ行く。ソファに丸くなって、ガタガタとわざとらしいほどに大きく肩を震えさせている。
「こっちむけ」
カーペットに膝をついて俯いた高尾の顔をのぞき込む。
「っひ……!! あ、しんちゃん、ごめんなさい、ごめ……っ……だから、もう、」
「高尾!!」
まだ外にさっきの男がいるかもしれないなどと気が付いたのは怒鳴ったあとだった。触れられないのがもどかしい。思わず、その肩を揺すろうと伸ばした手はすぐに冷たい布地を撫でる。







バイトから帰ってくると、玄関には高尾はいなかった。いつもなら、ドアを開けるとそこには絶対高尾がいる。日中暇なのか俺が帰ってきたときが一番饒舌でテンションが高い。おかしいな、と思いつつリビングに行く。ここにもいない。
「たかおー?」
いないのだろうか。
いない?
いないってどういうことだ。当たり前だが高尾は幽霊で、いや決して当たり前などではない。なにが当たり前だ。元から朧げな存在だ。いつ消えてもおかしくない。むしろ、今まで本当に存在していたのかどうかすら不安になってくる。
リュックを投げ捨て、じわりと冷たい汗が体中這うのを感じながら和室のふすまをすべらせた。
「たかお!!!」
白骨の上に敷かれた畳の真ん中に高尾は座っていた。入口に背を向けているので俺からは黒い後頭部とオレンジのパーカーしか見えない。
「宮地サン、ごめんなさい」
「なにが」
「オレには体がないし、どうも宮地サンにしかオレのことが見えないみたいだから、オレには解決できない。近い間に、警察、じゃなくても黄瀬か青峰か……緑間あたりがオレの死体を回収しにくると思う」
淡々と告げる高尾。その声には、悔しさのようなものが滲んでいる気がした。
「それって……」
「ここに住めなくなったら、やっぱり困ると思うんだけど、本当にオレには謝ることしかできない。ごめんなさい。すごい迷惑かけました。申し訳ないです。オレのわがままだし、もう今更って思うかもしれないけど、早いうちに引っ越してください。今だったらまだ、平気だと思う……」
「どういう意味だよ!!!」
「…………オレからは何も言えない。実はオレの記憶、半分くらい飛んでるんだよね。親の顔とか名前とかも分かんないし、家とかも。覚えてるのは、殺される瞬間と、それに関わった奴らについてだけ」
「は……はあ? え、なにいってんの。意味わかんねえ」
「ごめんなさい」
「俺に、できることは」
「え……なにいってんの。分かってるよね、あいつらヤクザだよ!? 何してくるか!!」
「いいから!! ここまできて何にも知らないまま、なんてできるかかよ」
音もなく立ち上がった高尾が下に人差し指を向けた。あの日、初めて高尾を見た時と同じように。出して、と消え入りそうな掠れた声でそう言った。今にも泣き出しそうな表情をしている高尾に笑って見せて、俺は畳とベニヤをめくる。半年ぶりくらいに見たそれは全く変わっていなかった。
「手袋とかある?」
「手袋?」
指紋とか残るとまずいから、とすらすらと指示を出す。できるだけ動かさずに指の骨を折れ、と死体の横にあぐらをかきながら薄く笑っていた。
「今、上になっている左手の薬指折って。指輪……ごとでいい」
「結婚してたのか……」
掃除用に買っておいたビニール手袋をはめて、骨に触れた。温かくも冷たくもない骨。軽い。そう思った。ゆっくりと指一本だけを摘みあげる。肉に覆われてないそれは、本来ならばありえない方向にも容易く関節を回す。高尾を見る。高尾はにこり、と無言で頷いた。
ぱき、と大した力も込めずに折れてしまった。
「それ、持っててくれる……?」
懇願するような、縋るような視線。






書き殴ったなぁ。まとまらなくてごめんなさい。というかまとめる気はなかったですよね。
宮地に高尾の指の骨持たせたかっただけ。今となっては、本当にそれだけ。

ここで一句。

ニュース見て 思わずホモる 腐女子かな

事実は小説よりも奇なり、とも言いますし、ニュースの事件はそのままネタになります。うまうま。




2014. 2.14.fri.00.00




【宮高】
 日も暮れてしまった道を宮地と高尾は歩いていた。緑間は、一人で帰ると言ってそそくさと帰ってしまった。気を遣わせてしまったことを悪いと思いながらも甘えてしまう。
 「あー、高尾。これ」 
 宮地はズボンのポケットから何かを掴んで高尾に差し出した。それがなんなのか全く分からないまま受け取る。
 「あ。チロルチョコだ」
 手のひらに三つ乗っている四角いチョコレート。カラフルな包装。
 「バレンタインだろ?」
 「宮地さんからもらえると思ってなかった……。オレ、何もないや。あ、ん? あった!!」
 ズボンの横のポケットを叩き、後ろのポケットを叩き、コートのポケットを叩いて、高尾がぱっと顔を輝かせた。宮地は特に期待していないのか、興味なさそうにそんな高尾を黙って見た。コートから出てきたのは、のど飴。誇らしげにそれを押し付ける。
 「おー、ありがと」
何も考えずに宮地はそれを口へ放った。高尾は、チョコをまだ食べるつもりがないのか、じっと見つめてから大事そうにポケットに仕舞い込んだ。そんな扱いをされても困るのだが、満更でもない。キシリトールの爽やかさ、今は痛いくらいに喉に冷たい。
 「これで、ホワイトデーはなしでいいな」
 なんとはなしに言った言葉。高尾が酷く驚いていた。自分が言った言葉を考える。納得した。考えなしに、容易に言っていい言葉ではなかった。ただでさえ、卒業という言葉に過剰反応するのに。なんで、そんなにも先のことを怖がっているのか。俺が信じられないのか、と少し不満を抱く。でも、それだけ自分と離れたくないと思っているのだと思うと、やはり満更でもないのだった。
 「宮地さん、返して」
 ぼそっと呟いた高尾は、また、いつだかのように寂そうな表情をした。
 「もう、喰っちまったし、んぐ?!」
 肩をぐっと下げるように掴まれて、強引にキスをされる。周りを確認をする暇もなく。そして、呆気なく、離される。
 「あーあ、色気のねーキスだな」 
 苦笑いで言う。冷たさの余韻のようなものが口に残っていた。
 「ホワイトデーはオレがきんと、用意するから、待っててください」
 半ば、睨みつけながら、べーっと小さくなった半透明の飴を下に乗せて見せてきた。紅い舌と白い飴がコントラストになっていて、不意にキスしたくなったが、やめる。
 「期待してっからな。三倍返しな」

 「10円の三倍で30円すか?」
 「ちげーよ。20円の三倍で60円だよ」
 
 (チロル⇔のど飴)






2014. 2.14.fri.00.00





【チャリア】 
 やっと平坦な道に差し掛かり、高尾はいつも通りリアカーに乗って、ラッキーアイテムも抱えている緑間に話しかけた。
 「ねぇねぇ、真ちゃん? 今日、なんの日か知ってる?」
 「知らん」
 「えー。うーん、そっかぁ」
 緑間の表情を見ることはできないが、日頃に比べ機嫌の悪そうな声をしていたので、(素気ないのはいつものことだ)大人しく引き下がる。これ以上は何も聞かないことにする。何か怒らせるようなことをしたかなー、と考えつつ、角を曲がる。なかなか、このリアカー付き自転車、操縦が難しいのである。重いし、自転車の幅とリアカーの幅は全く違うし、といろいろ気を遣わなければいけないことが多い。最近は慣れてきたからいいものの最初は何度もぶつけて緑間に怒られたものだ。それもこれも高尾が常にじゃんけんに負けているのせいなのだが。一番、注意しなくてはいけないのが坂道。次に曲がり角だ。ぎりぎりで曲がろうとすると、リアカーを壁に擦ってしまうのだ。
 「高尾、止まれ」
 「え?」
 急になんだ。
 「らじゃー」
 角を曲がってすぐのところへ停める。車も歩行者もいないので問題はない。緑間はリアカーを降り、角に置いてあった自販機の前に立った。ああ、おしるこか、と納得する。
 「落とすなよ」 
 そう言って、何かを放った。それは綺麗な弧を描いて高尾の両手にすっぽりと収まる。
 「?」
 缶だ。ホットココアだった。手袋をしていても、その熱が伝わってくる。手袋を外して、素手で持つ。冷えてぎこちなくしか動かない指にじんじんと痛いほどに響く。
 「真ちゃん、ありがとー。珍しいじゃん、どしたの?」
 「人にあんな質問をしておいて、お前も大概だな」
 そう言って鼻で笑った。その緑間の手には当然、おしるこである。
 「え? もしかして、もしかするの?! ぶふぉっ……!! 真ちゃんったら、キザねー」
 「笑うなら、返せ!!」
 「来月には、おしるこキャンディー探し出しとくわ」


 「もしかして、さっき怒ってたのってオレがチョコあげなかったから?」
 「……何のことなのだよ」

 (ココア⇔おしるこキャンディー)






2014.2.14.fri.00.00




【黄笠】
 いつもよりも人、というか女子が多いことにうんざりしながら、シュートを入れる。仕方のないことだと分かっていても、落ち着かない。集中できない。黄瀬を追い出したらいいのか、と本気で考える。
 眉間にしわを寄せ、険しい表情の笠松に黄瀬が申し訳なさそうに小さく頭を下げた。気にするな、という意味で顎で入口に溜まっている女子を指す。

 「センパイっ! すみませんっス!!」
 「いいよ、気にするな。仕事みたいなもんだろ」
 練習が終わり、やっと女子達が去って静かになった体育館。部員達も帰ったが、今日は全く練習した気がしないので、いつもよりも長く居残る。黄瀬の大きな紙袋の中からは軽い紙やビニールの擦れ合う音がしていた。
 「いくつもらったんだ……?」
 「あー、いくつくらいっスかねぇ」
 「食べるのか?」
 こんなにたくさんの菓子類を仮にもモデルをやっている人間が食べるとは思えなかった。まず、この量は食べ切れる量ではない。特に素人の手作りが日持ちするはずもないし。
 「そこはマネージャーさんと相談っス。センパイさ、今日、機嫌悪かったのって嫉妬してたから?」
 楽しそうににやけながら黄瀬が言った。きょとん、とした表情で笠松は返した。
 「嫉妬って何に? え? 俺、機嫌悪そうだった?」
 無意識で表情に出てしまっていたのか。体育館がうるさいことには特に問題はなかったのだが、やはり女子があれほどいると駄目なのか。顔には出してないつもりだったのにな、と小さく呟く。
 「センパイ……ひどいっス」
 何か、ぐちぐちと言っているようだが無視して、ドリブルシュートを決める。何本かシュートを入れて、何かに気が付いたらしく、黄瀬の方を向く。
 「あー、あのさ、黄瀬」
 「なんスか?」
 「少しだけ、待ってろ」
 ボールを置いて、床を指さす。え? と驚いた表情の黄瀬を振り返ることもなく走っていってしまう。

 「これ、やる」
 照れているのか、目も合わせずに手のひらよりも少し小さいくらいの箱を手渡しして、笠松はすぐにボールを持った。黄瀬はひにゃりしたものが乗った手のひらを見る。橙とも黄ともとれない、渋い色合いのあの箱。キャラメルだった。
 「センパイ。これってどういうイミ?」
 「っだ、だって、今、チョコレート買うの恥ずかしいだろ?! ……やっぱり、チョコじゃなきゃダメか?」
 ちゃんと、バレンタインとしてくれたんだな、と安心とともに嬉しさと愛おしさもこみあげてくる。後ろから、ぎゅっと抱きしめた。笠松が頬を赤くして、黄瀬を見上げていた。
 「オレ、センパイからもらえると思ってなかった」
 「急に真面目な顔すんなよ。なんか、照れる」
 「さっきから、ずっと照れてるっスけどね」 
 「っせえぞ!」
 「次の14日には、センパイが食べ切れないくらいのあめ、準備しとくっスよ!」
 「あめ?」
 「何味が好き?」
 「……はつみつれもん」

 (キャラメル⇔はちみつれもん味のあめ)
 







2014.2.14.fri.00




【チャリア(ショタ)】
 「真ちゃん! 真ちゃん真ちゃん真ちゃん!!」
 ランドセルの留め具が外れているのか、走った歩数分だけ、ばこばこという独特の音がした。大声で叫びながら、緑間の方へ駆けてきた高尾。すぐに横に並んで、もう一度、真ちゃんと呼んだ。
 「なんなのっお……?!」
 何なのだよ! と怒ろうとした瞬間、口に何かを詰め込まれた。甘い。むきゅむきゅと咀嚼するたびに甘さが口いっぱいに広がった。
 「なんなのだよ!」
 飲み込み終わって、きちんと言い直すと高尾は自慢げな顔をして答えた。
 「ましゅまろだけど?」
 「……」
 そんなことは分かっている。
 「えへへ、バレンタイン。真ちゃん、ましゅまろ、きらいじゃなかった?」
 今更、聞くことではないと思うのだが、結果から言えば、嫌いではないからいいのだろう。高尾は照れているのかはにかんで、そう言った。
 「お前はどうなのだよ」
 「へ?え、オレ?オレ、すきだよ。ましゅまろ」
 やっと、気が付いたのか、ランドセルの留め具を片手で閉めていた。見えないのは分かっているだろうが、どうしても手の方に視線が行ってしまうらしい。斜め後ろに首を伸ばしていた。自分から視線が離れた隙に緑間は自分の手提げに手を入れた。
「高尾」
 「どした、真ちゃ、んぐ」
 「バレンタインなのだよ」
 振り向いた瞬間に高尾の口に押し込む。仕返しだと言わんばかりに緑間も勝ち気に微笑んだ。
 「しんひゃんもまひょまおなのかお」
 「何を言っているのか、分からないのだよ」
 高尾が咀嚼し終わるのを待つ。
 「真ちゃんもましゅまろなのかよ、って。ましゅまろってふにふにしてて面白いよな!」
 あと、甘いし! と付け加えた。
 
 「チョコでなくともよかったのか」
 「なに、いまさら。いーんじゃね? だって、バレンタインって好きな人に甘いもんあげる日だろ?」
 頭の後ろに手を組んで、笑った。
 「なっ……! 高尾?! な、なにを、言ってるのだよっ!」
 「え、なんで真ちゃん、そんなあわててんの?オレ、おかしなこと言った?!」
 





2014. 2.6.thu.0.19




【宮高】
「……一体いつから俺は宮地さんに愛されていると錯覚していた?」
「泣きながら言うセリフじゃねーだろ」
はは、と乾いた笑いを零す宮地。俯く高尾の頭にその大きな手を置く。
「高尾、お前が嫌いになったわけじゃない。ただ、もう、好きじゃなくなった。ごめん」

愛染さんのセリフの誤用。





2014. 2.6.thu.0.19





俺は起きたら、シンタロウ・ミドリーマになっていた。

ほとんど狂いというものを知らないはずの俺の誇るべき体内時計に従い、目を覚ましたらまだ日が登りきっておらず暗かった。眼鏡を取ろうと枕の横に手を伸ばす。もふり、とあまりにも柔らかくすべすべとした何かに当たる。枕だ、枕。俺の枕は蕎麦殻で枕カバーは麻の筈なのに、俺の頭を支えているそれは羽毛のように軽く、しかしやんわりと押し返す低反発。さらりと滑るような絹に包まれ、触り心地が良かった。どんな素材だ、軽くて低反発って。というか俺の蕎麦殻枕を返せ。枕が変わるとしっかり眠れないタイプなのだよ、俺は。バンバン、と周辺を叩きまくりようやく、見つける。メタルフレームの冷たさが一瞬にして俺の体温と同化する。

「……ここはどこだ」

体を起こせば壁は白い煉瓦が積まれていて、窓にはガラスははまっていない。ぬるく磯臭い風が頬を撫でた。

「お目覚めですか、シンタロウ様」

音もなく現れたのは黒子。ただ、高尾みたいなオールバックセンター分けの上、触覚もきちんとあった。なんだそれは高尾の真似か、と聞こうとしたら、ムッとしたように唇を尖らせた。

「僕の名前はテツヤ・クロコーです。クロコではありません」

「クロコー……」

日も登り始め、視界も良好と言える。黒子……の服装はまるで古代ギリシャのような白い布を肩からかけているだけのようなものだった。まあ、俺もそうなのだが。 肩から腿へ落ちた薄手の毛布を適当に畳みつつ、黒子が何かを差し出した。受け取る。

「これはなんだ」

「シンタロウ様が作らせたものではないですか、カズナリ様と仲良く設計なさっていましたよね」

魔法のステッキだった。よくやすられた俺の身を包んでいる絹と遜色ないほどの木のステッキ。木目がうっすらと透けるが、鮮やかな青に染められている。先端には陽光に青や緑、赤と色を変えるハート型の宝石。オパールか何かだろうか。重さや触感からしてガチな宝石である。プラスチックなどではない。カズナリ様とは。

「おはよっす、シンタロウさま!!」

「お前はリョウタ・キセーか?」

「突然、なんスか?オレはリョウタ・キーセっすよ!!」

人の名前間違えるなんてひどいっすよぉ、とくねくねしているいつも通り鬱陶しい黄瀬は黒子に絡み始めた。こいつも無音で現れたな、と思ったら俺が寝ていたベッドの後ろがドアもなく空間が開いていた。どおりでこの開放感だ。ちなみに後ろを確認していなかったのは首を寝違えているからである。首を回すと痛いのだよ……。

「じゃあ、そこにいるのは、なんだ。ダイキ・アオミーネにアツシ・ムラサキバーラにセイジュウロウ・アカーシか」

「? シンタロウ、大丈夫か?」

赤司が苦笑いで首を傾げた。流石というほどに古代ギリシャ風の服に違和感がない。黄瀬に引き続きぞろぞろと入ってきたのは、中学時代のチームメイト達だった。全員がオールバックセンター分け触覚付きである。青峰は触覚も糞もないが。なんだその頑張りすぎなセンター分けは。

「僕はセイジューロウ・アカシだし、こいつはアツシ・ムラサーキバラだろ?」

「 ダイーキ・アーオミネだ。 お前、ほんと大丈夫かよ。頭でも打ったんじゃね?」

青峰が眉根を寄せる。一人だけのばし棒が2本あることにもアーオミネってなんだよ、とも決して突っ込みはしない。だって、面白くないし。にしても呼びづらい名前である。赤司だけちゃっかり回避しているしな。黄瀬も回避させてやればいいものを。リョータでいいじゃないか。いっそ、リョーター・キセにでもしろ。いや、黄瀬の名前なんてどうでもいいのだよ。

「……ちなみに俺は?」

「ミドちんさまはミドちんさまだし、あえて言うならシンタロウ・ミドリーマ?」

「良かった……まだマシだったのだよ」


身に覚えのないファイルがあって、ファイル名が『緑間』。で、開いた結果がこれです。これを書いた私の心理状況を30字以内で述べよ。







2014. 2.1.sat.07.52




【緑黒】「どうして、僕に感情を与えたのですか」
抑揚などなく、音と音がむりやり繋ぎ合わさったような言葉が紡がれる。獣の骨でできた冷たく滑らかな手足。つるり、とした頬をぎこちなく撫でた指先は、小さな球体関節が機能する細い指だ。
「俺とて望んでいたわけではない」
ただの偶然なのだよ。白い絹の手袋に包まれた技師のその右手からも造りものの骨の音がした。
硬い骨と骨がぶつかる音。皮膚も肉もない、脂肪も血管もない細い細いそれらも模したただの骨。
筋肉は愚か可動部の決まった人形に感情を表す手立てなど、言葉しかない。人ならば、と人なのに表情が乏しい自分を造った男を見る。なぜ、こんな無骨な大男から人形が生まれるのか分からない。変わることも動くこともないけれど、優しい微笑を浮かべる人形、今にも泣き出しそうな人形、眉を下げ困った表情を浮かべる人形。僅かな差異のある喜怒哀楽の顔を持った何も思わない同胞たちを見つめる。

人形技師の真ちゃんと人形の黒子っち。





2014. 1.30.thu.07.53




【高黒】
君が僕を嫌いなら、僕も僕が嫌いだ。君が僕を好きなら、僕も僕が好きだ。そうありたいと願い努力するも、叶わないことだってある。どうして自分で自分を律し、統制することができないのか。謝るのは筋違いだろう。しかし、ほかに誰に謝ればいいのだろうか。 この世には何億何千という人がいるというのに、とてもとてもおかしなことに、
僕には君しかいなかった。
僕には君しかいらなかった。
君が嫌いな僕を僕は嫌いになれなくて、僕は僕のために君の中に残りたかった。

ごめんなさい。

引き攣った君の顔は、もしかしたらずっと求めていた言葉や想いよりもはるかに僕に歓喜と愉悦を与えたのではないだろうか。僕は体が動いてさえすれば今にも踊り出していたに違いない。まさに狂喜乱舞。喜びに狂う。嬉しくて嬉しくて、自分が愛おしくて仕方がない。まさか、ここにきて、僕は君よりも僕に愛していると伝えてしまうことになるとは。君の一番になりたくて犯した罪は巡って僕の一番へと導くものとなった。今まで僕は崇高な確信犯だったのに、その事実に気づいた瞬間、僕は窃盗を犯した者よりも卑しく、人を殺したものよりも愚かで、強姦を行った者よりも穢らわしい身となった。歓喜は絶望に変わり、罪にまみれ、あまりにも自分勝手で甘い罰に甘んじる。
どこで何を間違えたのか。問うにはあまりにも手遅れだった。
やっと僕はこじれた想いは、もはや半分眠りについた意識と共に終わりを迎えることができた。


高尾くんへの片想い拗らせた黒子っちの話。




2014. 1.14.tue.12.23





【花黒】
おめでとうございます。ただ一言、ありきたりな言葉だけを花宮に告げた。黒子は何も返さない花宮を睨みつける。たっぷり溜めたあとにどうして、と小さく呟いたのは聞き逃さなかった。
寒空の下の公園。木々に阻まれて街灯はあまり意味をなしていなかった。灰色の空、それほど厚くもなさそうな雲の向こう側には月が隠れているのだろう。
あのさ、返ってきた言葉は礼ではなく次の話題。黒子は花宮が何を伝えようとしているのかなんとなく予想がついていた。これだけの年数一緒に居て、でも、男同士で。転がる先はどこのなのか。見たくないからなあなあにしてきた。できれば、ふんわり自然消滅してくれればいいのに。相変わらず口を開こうとしない花宮を見つめながら、そんな後ろ向きな思いがぐるぐる巡る。
突然、名前を呼ばれる。少し上擦った声。逸らされていた目がこちらを向いた。地味に高い身長は、キスをするには丁度いいだけで、どこからどう見たってただの下衆でしかない発言は思いの外、空っぽで黒子にとっては痛くもかゆくもなかった。
「どうして……どうして、俺の誕生日なのに俺が、プレゼントなんて用意しなくちゃいけないんだと思う?」
そんなことは知らない、と薄く微笑んで首を横に振る。ため息をついた花宮が焦れったくて目の前の首に両腕を回した。そこにぶら下がるように腕を絡める。花宮の何かを言いかけていた口を強制的に塞いでしまった。
「馬鹿!! ックソ、やめろっての!!」
首を後ろに逸らして、逃げた花宮。再び黒子は無機質なビー玉の瞳をまっすぐ向けた。冷たい夜風が黒子の唇に触れる。花宮の口はいつだって、甘さなんてどこにもないカカオのすっぱい味がした。大丈夫だろうか、この味覚オンチ。そんなことを思うくらいにはまずい100%カカオのチョコレート。花宮と知り合わなければ知らない味だった。こんなに身近な味になるなんて誰が予想できただろうか。くすり、とまるで嘲笑うように笑い声を漏らした。
「僕はもう誠凛高校の黒子テツヤではありません。20代半ばのしがない保育士の黒子テツヤです」
「はっ……薄情なやつだな。じゃあ、ただのしがない黒子テツヤさんは俺のそばにいてくれますか」
「……どう、しましょうかね」
言いながら革の手袋を外す。黒子は迷うような素振りは一切見せず、花宮にその白い手を差し出した。困っているのか蔑んでいるのかか、どちらにも見えるような器用な表情でその手を取る。そっと、薬指にシルバーの指輪をはめる。手袋から晒されたばかりの指をゆっくりと這う指輪が冷たかった。いつの間にか、雲は流れて満月と半月のちょうど真ん中くらいの大きさの白い月が花宮の頬の紅を露にした。赤いですよ、と声をかけると、視線を外して至極不満そうに
「バァカ」
と言うのだった。



花宮くん、お誕生日おめでとうございます。君ほど私の嗜虐心を煽る人には会ったことがありません。大好きだよ。眉毛もげろ。




2013.12.16.mon.14.12





【緑黒*】自殺に成功した高尾くんに憧れる黒子っちとどちらの様子も見てきた真ちゃんの話。
昔から自殺願望が強かった黒子っち。結局、勇気はでなくて自殺できない。しようとしたら止められたり。死んでしまいたいほどに何かが嫌なのではなく、ただ死ぬことに興味がある。死ぬことに期待してるし、夢を抱いてる。綺麗なものだって信じている。中学の頃は、その考えというか思いに賛同もしていた緑間くん。
高尾くんの死ぬ瞬間を見て、何も綺麗じゃないと知る。ただただひたすらに何もかもが痛い、と黒子っちに訴えるも伝わらない。高尾くんの死体を見ても尚、綺麗だと言う黒子っちのどこか狂っているようなところが、結局のところ好きなんだと気づくまでの真ちゃんの話。高尾くんは諸々のストレスから自殺。
結末は、真ちゃんが黒子っちを殺すか、死にたいといい続けながらもいちゃいちゃするか。

このネタ古い……。






2013. 12.11.wed.19.45




今、すごく虹赤がきているので
【虹赤】
視力を失った赤司くんの話。
in病室

「センパイはこの間、俺に見せたいものがあるっていいましたね」
「……どうでもいいもんだったから気にすんな」
「俺、そういところ細かいですよ」
「あれは、なんつーのかな。それを見せたかったんじゃなくて、いや、見せたくはあったんだけど、お前におんなじ気持ちになって欲しくて……ああもう、なんのフォローになってねえや、はは……」
「それ、なんだったんですか」
「…………空」
「青空ですか?夕陽ですか?夜空ですか?」
「青空だよ……もう、しゃべんな。オレの為に黙れ」
虹村はその大きな手で赤司の両目塞ぐ。包帯が巻かれているわけでも眼帯がされているわけでもない。手のひらに薄い目蓋の下で眼球がごろごろと動くのを感じた。まつげの先端がつんつんと刺激する。
瞬きする赤司の瞳は動かなかった。鈍く濃度の高い、けれど傷口から溢れだしたばかりの血液のような鮮やかでどろりとした光を持っていた赤司の瞳が、動かなくなった。光を失い、じっとりと品定めをするような視線も、嘲笑うかのようにくれられる一瞥もしなくなった。
丸い紅は何も追わない。貴方も俺にとってひとつの理想だった。そう言って背中を見つめていたはずの紅は何も見ない。
「センパイは昨日の空の色が思い出せますか」
「俺は思い出せない。昨日も一昨日も、ただ青いという事実だけ塗り替えられて、それはもう想像とすら呼べるくらいで、そして、いつか青いということがどんなことか分からなくなる。人の記憶は何度も塗り直さなきゃ、定着できないんです。時間が経てば、塗装は剥がれる」
「何が、残るんですか」
虹村は何も答えられなかった。





2013. 12.8.sun.20.14




【宮黄*】
皮膚なのか筋肉、骨なのか分からないがずきずきと大きく響く痛み。心臓の鼓動にすら反応して大きく波打ち、やはり響く。じんわりと熱を持ち始めた皮膚は赤く、微かに赤黒い小さな斑点が見え、鬱血しているのだと知る。
曖昧模糊とした思考に反して、痛みだけが鮮明だった。痛みしか感じられなかった。
それでも、黄瀬は目の前の男に怒ることもなければ怨みの念を抱くわけでもなく、ただ愛おしいと思えてしまうのだった。恋は毒だと言ったのは誰だったか。黒子っちがそんなこと言っていたなあ、と思い出したところで遠くから鈍い音がした。少しして後頭部に新たな痛みを感じる。かあっと熱く茹だるようにそこに熱が集まる。しかし、継続して体は鼓動に合わせ軋む。
涙をぼろぼろと零し、しゃくり上げる男は息を荒くして、けれど静かに自分が組み敷いている黄瀬に言った。

「お前と、お前なんかと……会わなければよかったんだよな?」

その質問の答えを黄瀬は知らない。





2013. 11.26.tue.1.0




【赤黒、黛赤(赤黛?)→黛黒】黛黒って
「やっぱり、オリジナルには敵わないんだな」
「貴方と僕は別ですよ」
「それでも赤司は俺とお前を重ねてる。それでも俺は赤司の視界にいたかった」
「僕だって、同じだ。でも、それは叶いませんから」
「俺なんて出会った瞬間に振られてる」
「ふふ、責任を取りますよ」
こんなですか。




2013.11.21.thu.0.45




【緑高】視えるのに。俺には目の前のエース様の呼ぶ声が聞こえない。俺が目を閉じたら、俺の世界から俺のエースが消える。どんなに緑間が俺呼んでくれても、求めてくれても俺には分からないのだ。もし、俺が緑間を拒否したら。それが全てで、その全てはなかったことになる。
俺が見えなかったら、俺が気を抜いたらあいつはひとりになってしまう。聞こえていたってできないことが、どうして尚劣った俺にできるというのだろうか。

「しーんちゃん!」
高尾はヘッドホンを外しつつ前を歩く緑間の肩に手を置いた。緑間が何かを言おうと口を開き、つぐむ。提げた鞄から透明なプラスチックカバーのかかったスマートフォンを取り出した。何かを打ち込んでいる様子を見てにやにやと高尾は笑った。緑間はスマートフォンをズボンのポケットにしまい、高尾を向いた。
おはよう。
高尾にそう唇の動きで伝えた。それが自分の思い込みでないことを信じつつ、おはようと小さめの声で恐る恐る告げる。頷いた緑間にスマートフォンを突きつける。
『俺、うるさくない?』
『平気なのだよ』
うるさいのはいつものことなのだよ、あまり口を開けて話すことのない緑間ははっきりと一言ずつ区切るように口を動かした。
(高尾くんの誕生日とは関係ない)




2013. 11.17.sun




【真凛】スーパーでバイトしている凛ちゃんと、よくそのスーパーで買い物していく一人暮らしまこちゃんの話。

ジャラジャラと音を立てて、機械の小さな口からいくつもの小銭が出てくる。適当に指で数えつつ左手の手のひらに硬貨の大きい順に積んでいく。ワンテンポ遅れてしか出てこないレシートを待つ。混んでいるこの時間帯には一番イライラする。毎日、この時間、凛の担当しているレジにやってくる客ーー凛といくつも変わらないくらいだろう。身長が高く肩幅も広いのに優しげな顔つきが印象的だったーーをちらりと盗み見て、制服の胸ポケットからボールペンを取り出す。ギリギリ読めるかというレベルの文字でやっと出てきたレシートに数字を走り書く。
「レシートと354円のお返しです。ありがとうございましたー」
「どうも」
えんじ色のかごを抱えて、客はにっこりと微笑んで去っていった。隣のレジに入っていた先輩がニヤニヤとりんを見てきたので思わず目を逸らす。レジを待つ列は長い。さっきの客がレシートをどうしたのか気にならないわけではないが、それどころではなかった。レジ各地でレジ応援の合図の音が鳴っていた。

「昨日はどうも。一応、かけてみたんだ」
「え」
「蕎麦屋にかかったね……」
「あー、えっと……」
スキャナーの前をぴ、ぴ、とたくさんの品物が通り抜けてはえんじ色のかごに収まっていく。一方で空になっていく緑のかご。思わずモニターのボタンを押してしまい、エラーをした。急いでクリアのボタンを押す。
「さ、3567円でございます……」
「今度はきみの番号教えてね」

この間、スーパーでレジやってる子と話していて「電話番号もらった?www」「それ、渡すほうでしょ。レシートに書くやつ」みたいな会話をした結果。




2013. 11.16.sat




 【高緑】「お前はなぜ、そんなに勝利にこだわる」
 勝利を絶対とし、負けることを許さなかった男を思い出す。
 「それは、真ちゃんには言われたくなかったんだけどなー」
 「今の真ちゃんは分かんないもんね。仕方ないか」
 腰を上げ、ベッドの縁に手をかける。緑間に顔を近付け、にっこり、とそんな擬音が聞こえてきそうなくらいに満面の笑みを浮かべた。
 「勝ちたいから」
 理由なんてないよ。ただ、自分が負けている姿を想像するとね、吐きそうなほどに気持ち悪いんだよね。そんな自分は大嫌いだし、死ねばいいと思えるほどにね、認めらんないんだよ。どうして、そんなに勝つことに執着するようになったのかは分かんないけど、まぁ、負けず嫌いをちょっとこじらせちゃった感じかな。でもさ、いくらそんなこと言ったって、負けるんだよね、オレ。だって、どんなに負けないために努力したってさ、オレは凡人なんだから。天才には敵わないだろ。才能、なんて言葉で片付けられるんだったら、オレはこんな人間じゃない。だからさ、オレはね、オレにできることをするんだ。目的の為に手段を選ばないなんて、当たり前のことだろ? 誰だってそうじゃん。
 天才の相手は凡人じゃ務まらないけど、天才と、凡人の中じゃできる方の人間が組めば勝てるかもしんねぇって思ったんだよな。手段は選ばない。お前と会えたのは『運命』だと思ってたよ。ついてるなって思ったけど、ここまでなんだろ。だったら、オレは次の手段を探すだけ。オレの執着は勝つことにしかないからね。

 「なあ、緑間。オレに夢を見させてくれてありがとな」
真ちゃんが故障する話のボツネタ。いつかゲス尾は書きたい。








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