[こちらはネタ、シチュエーションなど書き殴りを捨て置く場所です。大体、リサイクルされます。CP名は一応、表記しますがその他の表記は特にしないのでお気を付けください。基本、黒バスになるとは思いますがジャンルはバラバラです。]


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2015. 12.27.sun.22.12





[おそ松さんネタ]

ひょんなことから吸血鬼になってしまったカラ松は、食事こそ変わってしまったものの、それ以外は、特に変わることなく生活していた。そう、食事以外は……。


「うわぁっぁ!?」

ぼたり、顔に何かが落ちてきた。それは、あっという間に首筋まで流れ込んでしまい、冷たさと、眠気を一気に覚ますような強い匂いにカラ松は跳ね起きた。
ガツンッ、と額に衝撃が走る。
真っ暗な部屋の中ーーカラ松にとってはなんの障害にもならないーー枕元に、額を押さえてごろごろと悶えている一松の姿があった。

「い、一松……?」

首筋に手を当てれば、ぬるり、と滑った。血の、甘い香りが鼻の奥をついた。空腹にダイレクトアタック。ぐうう、と間抜けにも腹が鳴る。と、同時にくらりと目眩。甘い香りだけで、飲んでもいないのに、胃もたれでも起こしたかのように気持ちが悪い。

「にいさ〜ん、いま、ハラ鳴ったよねえ?」

片手で額を押さえたままの一松がゆらりと立ち上がった。
一松は半裸だった。血だらけの半裸だ。
とにかくマズイ、カラ松も布団を跳ねのけ、立ち上がる。そして、猛ダッシュで逃げ出した。
後ろから、吸血鬼になってしまった自分よりも化け物然としているというか、ゾンビ映画に出てきそうというか、「お前、ゾンビか?!」と問い詰めたくなるような一松が、ものすごいスピードで追ってくる。

「血を吸え〜〜〜」
「その!! 腕の血をとめろ、ばか、失血死でもする気か!? っていうかめっちゃ怖いから!! すと、すとっp!?」

ドッタバッタと走り回って、流石に近所迷惑か、とカラ松は元いた所、六つ子の寝室へ飛び込んだ。数秒のタイムラグもなく、カラ松に飛びつくように一松が走り込んできた。

「吸う? 吸っちゃう??」
「吸わない!! まず、血を止めろ!! そして服を着ろ!」
「カラ松が吸ったら、キズ治る」

呆気に取られているカラ松。一松は腕を差し出した。
ちなみにこれだけの騒ぎの中、残り四人は爆睡中である。

「これ、ほとんど無臭のインク」
「どういうことだよ!?」
「いやだから、カラ松兄さんに血を吸わせたい」
「俺が、血が嫌いだって知ってるくせに?!」
「だから、だっつってんだろうがああ吸えオラッ」

カラ松のパジャマの胸ぐらを掴み、ガンを飛ばした。ひっ、とカラ松は息を飲んだ。あ、思い出したように首から提げていた十字架を握る

「……お前がそれ持っててどうする」
「あ、確かに」

うっかり空腹に耐え切れずに一松の血を吸ってしまった時以来、毎日のようにカラ松を追っかけてくる一松。どうにもクセになったらしい。元々の血の苦手さに拍車をかけるハメになり、今や死活問題である。まさか、血が食料になるなんて思わなかった……。
十字架は、チョロ松がカラ松にあげたものだった。もはやモンスターは一松の方である、その認識は兄弟の中でも共通である。
一松は血気盛んなのか、ちょっとやそっと血を垂れ流したくらいでは、貧血のひの字もないようで、毎日、空腹&貧血に苦しんでいるカラ松には羨ましかった。もちろん、そんな弱味を見せた瞬間に一松に血を纏わせた指でも口に突っ込まれかねない勢いなので、顔には出さないようにしているが。
兄弟は「ウィンウィンじゃん、吸っちゃえよ」だとか「需要と供給がコミットしてるわけだし、うるさいから吸いなよ」だとか「オレのも吸う?」「吸わないんだったら、さっさと灰にでもなってよ」と一松の血を吸うことに誰も反対はしていない。
カラ松だって、吸わなきゃ死ぬのだ。覚悟くらい決まっている。苦手だなんだって騒いでいる場合ではない。
ただ、ひとつ、あまりにも大きい問題があった。

「一松の血、死ぬほどマズイんだよな……」

弟を喜ばせるためだけに、弟を傷付けるのは嫌だった。っていうか、何よりもまじでマズイ。なにこれ、本当にこの世の物質? と言いたくなるほど、美味しくない。
これなら、他の誰かの血を飲みたい。それが本音だった。ぶっちゃけると、需要と供給はコミットしてないのである。ウィンウィンではないのである。十四松に頼みたいくらいだ。
っていうか、俺、今言った?
カラ松はギギギ、と壊れたおもちゃのような動きで首を回して、そっと一松を見た。あ、やばい。本能が告げていた。

一松がカラ松の口に血濡れた拳を突っ込む前に、チョロ松が起き、ストップをかけ、十四松がカラ松の首筋にチョップを決めて意識を刈り取り、おそ松はチョロ松に起こされ、寝ぼけ半分に一松にラリアットを入れて、鎮静化させた。
ようやっと松野家に静かな夜がもたされたが、カラ松と一松の戦いはまだまだ続く……!!



フォロワーさんのめちゃくちゃ素敵設定を思わず書きました。
↓こちらです。
@toufu_928さんのツイート

そろそろ年末ですね、死にそうです。うえー忙し……くない。忙しくなきゃいけないのに、なんだか暇なので、かなりまずいんですけどね!!









[カラ一? (一カラ?)]

一松が目を覚ますと、視界はぼんやりと薄暗かった。もう、夜はとっくにとうに明けているはずで、世界はもう動き始めているはずだ。いつもそうなのだ。今日だけ、早起きすることも寝坊することもないはずだ。
目は開けたものの、まだ眠かったし、手足を動かそうという気持ちにはならない。
起きなくては、と思わなくもなかったが、もう少しぼうっとしてよう、そう思った時、

「一松」

すぐ近く、耳元でカラ松の声がした。
自分の横で、何かが動いた気配はしなかった。隣のあたたかさがいつもよりも近いことに、気が付いた。
ぱっと、視界が明るくなった。
焦点が定まらないほど近くに、カラ松の少し深爪気味の指先が見えた。一度二度、またたきをすると、指先の向こうにはカラ松の顔があった。

「お前……マスク付けて寝るの辞めろよな、自分が今どうなってるかわかってる?」
「カラ松兄さんが見える」

そういうことじゃねえよ、とカラ松が笑った。

「あ、おはよう。先にこっちだったな。いい加減に起きろよ」

マスクのゴムを引っ張って、離した。ぱちん、という音と共に、顔に不織布が擦れた。
おはよう、とカラ松に返して、体を起こす。
寝ているうちにそうなってしまったのか、鼻と目を覆っていたマスクを正しい位置に戻して、隣を見た。
腕をさすっているカラ松が「お前のせいで痺れた」と呟いた。


[六つ子(トド一狙ったはずが一カラが漂っています)]

とある日暮れ、家には一松とトド松がぼんやりと居間でテレビを見ていた。彼らの兄と弟たちは、仕事を探すわけでもなく、今日も今日とて、町のどこかをブラブラしているのだろう……。

「最近のニュースって、バラエティー色強いよね」

携帯電話をいじりながら、ちらと画面に目を遣ったトド松が、円卓を挟んで向かいに座った一松に言った。一松は、机に顎を乗せて、どこを見ているのか掴めない目がトド松へ向いた。

「仕方ないんじゃない」
「まあ、そうなんだろうけどさぁ。あ、見て、あみちゃんだ」

それは誰だ? 一松が言外にトド松に告げる。テレビを指差し、そこには、白いワンピースの女の子がにっこりと可愛らしい笑顔を振りまいていた。

「グラドル。いいおっぱいしてるよね」
「服着てるけど」
「そりゃ、水着の方がいいけどワンピースも可愛いと思わない?」
「水着より下着……っていうか、もっと大きい方がいい」
「兄さんの性癖を押し付けないでよ。ボクは、あのくらいが好きなの!」
「と言うと?」
「えーっとね、CかDくらいで、似合う服があんまりなくて、胸大きいこと悩んでる女の子可愛くない? 太って見えるのイヤ! とか言ってる子」

この服なら似合うよって服屋巡ってあげたいっていうか、脱いじゃえばって!! なんて付け加えながら、楽しそうに笑ったトド松。きゃー言っちゃった!? という少し恥ずかしさの混じる笑顔を見せたが、言っている内容にはそんな可愛らしい要素は含まれていない。

「もっと大きい方がいい」
「出たぁ、大きければ大きい方がいい派! 一松兄さんは貧乳派だと思ってたんだけどな」
「うわ、偏見」
「一松兄さん、巨乳派か……ぱふぱふしたい、ってやつ??」
「顔うずめたい」
「あ〜〜分かる」
「マスクのままで?!」
「「え??」」

突如、居間へ走り込んできた十四松。その両手にはどら焼きがあった。

「ねえ、一松兄さん! マスクのまま?? マスクのままで、ぱふぱふするの?!」
「どこから湧いたわけ、十四松兄さん」
「十四松、それ」

十四松の右手から、一松がどら焼きを奪った。空になった右手をじっと見つめた。おそ松兄さんの、と小さく呟いた。

「これ、おそ松兄さんのなの?」

やっちまった、面倒くせーと言わんばかりに顔をしかめた。十四松は左手のどら焼きを大きくひとくちで食べた。

「なんでボクのはないの? 一松兄さん、半分ちょうだい」
「もうない」
「ひどくない?! いつもちみちみ食ってるくせに」
「で、一松兄さんはマスクで巨乳に飛び込んでぱふぱふ?」

台所から「俺のどら焼きどこー?」という声が聞こえてきた。

「十四松兄さん、それはとりあえずもういいから」
「十四松、謝ってこい」
「あー! 一松兄さんも食べたのに」
「持ってきたのは十四松だし」
「まあ、ボク食べてないから知ーらない」

おそ松がどら焼きを求めて居間へやってきた。

「俺のどら焼き知らない? 誰が食ったのか知らない?」
「「「知らない」」」

3人は揃って首を横へ振った。
おもむろにポケット手を突っ込んで、「何かが入ってるぞ」と表情で示したおそ松。

「教えてくれた奴には、いいものあげちゃおうっかなぁ」
「オレ!」
「十四松」
「一松兄さん」

と十四松が勢いよく挙手し、同時に一松が十四松を指差し、トド松は一松を指差した。

「おそ松兄さん、いいものって?」
「一松、お前、トド松にちくられてんのにそれでいいわけ? っつーか、食ったくせに図々しいな!!」
「でも、みんな教えたよ、おそ松兄さん。あ、ボクはいらないから」
「お前は誰の味方だ?」
「十四松兄さんの、かな?」
「トド松、オレは……?」

腕を伸ばして、トド松のパーカーの袖を引っ張った。わずかに首を傾げて見せる。

「ボクの方が可愛いからムダ」
「トド松も兄さんも同じ顔」
「ねえねえ、俺は?? 俺も可愛くない?」

どら焼きのことはもういいのか、おそ松は一松と同じようにトド松のパーカーの袖を引っ張る。上目遣いにトド松を見たが、トド松は心底気持ち悪い、という表情をしておそ松を撃退した。

「俺も同じ顔じゃん、ひどいよー! 」
「おそ松兄さんもマスクのままで、巨乳に飛び込みたい?」
「十四松、何言ってんの? 生に決まってるだろ!! 生! お前、マスクって、どういう趣味してんの?あ〜もしかして焦らされるの好きなの? やっだ、兄さんドン引きしちゃう〜〜」

当の一松はリモコン片手にチャンネル回していた。おそ松の方など見てもいない。

「トド松ぅ〜、一松がシカトする!! 俺、寂しい」
「もう、うるさいなぁ。ツッコミはチョロ松兄さんの仕事であって、ボクじゃないんですけど。チョロ松兄さんどこ?」
「呼んだ?」

居間の柱に寄っかかって、石田純一ばりにかっこ付けたいつも通りのカラ松がいつの間にかそこにいた。

「チョロ松兄さんどこー?」
「呼んだかい?」
「チョロ松にーさーん」

一松がすくっと立ち上がった。
何を察知したのか、トド松は、自分にぐだぐだと絡み続けるおそ松を部屋の端まで蹴り飛ばし、ちゃぶ台をさっとおそ松を蹴飛ばした方向に寄せた。ぐえ、というカエルが潰れたような音が聞こえたような気がした。

「い、一松……?」
「おかえり」
「ただいま??」

ふらりとカラ松の目の前に立った一松。両手を前に差し出した。ヒッ、と怯えたような声を上げたカラ松にぎゅっと抱きついた。

「一松? なんだ、兄さんがいなくてさみしかったのか?」

デレっと、顔を緩ませて「よしよし」と一松背に腕を回した。

「カラ松兄さん、背中」
「背中?」

一松の腕の中で、両手を万歳してぐるりと半周した。
カラ松の耳元でよいしょ、という声が聞こえた。
一松の腕がカラ松の腰に回され、がっちりとクラッチされた。
嫌な予感がしたのか、カラ松の顔が強ばったのも一瞬、一松は腰をわずかに落とし、カラ松を後方に反り投げた。うわぁぁぁというカラ松の間抜けな悲鳴があがる。(=一松はカラ松にジャーマン・スープレックスを的確に決めた。)
派手な音を立てて投げられたカラ松をクラッチしたまま離さずそのまま一松はトド松に「カウント」と言った。

「いや、カラ松兄さん、飛んでるから」
「え?」

クラッチを解き、畳に寝っ転がされたカラ松を覗き込んだ一松。いつもの眠たげ表情で、てへぺろをして見せた。ぺろ、の部分はマスクの下で見えないが。
カラ松は白目を向いていた。チーンという効果音がどこからともなく聞こえてきた。

「ただいまぁぁ?!」
「あ、チョロ松」

紙袋を両手に提げ、リュックの左右から巻いたポスターを覗かせたチョロ松が息を切らしながら、走り込んできた。

「おそ松! どら焼きは俺がおやつに買ってきたやつだからね!? あと、ポケットに入ってるものって、どうせどんぐりとかだろ、即刻捨ててきなさい! あと、トド松が本気でウザがってるから、絡むのも大概に!!
一松! お前は、もう少し説明っていうものをしてからカラ松に危害を加えてくれ!? カラ松兄さんの存在自体が気に食わないなら、その旨をきちんと説明する!! 分かったか!? あと、巨乳に飛び込む前にマスクは取りなさい、いいね?
十四松! お前もポケットになんか入れてるだろ!? おそ松兄さんと一緒に外にポイしてきなさい!! ほら今すぐ!! ていうか、外で遊んできたら、手を洗ってからどら焼き食べなよ!!
トド松! おそ松を潰すのはやめなさいね、ちゃぶ台汚れちゃうでしょ! 一松が貧乳派だって知っててカマかけるのもやめてあげて。いつだか、カラ松にいじられて、すっげえ怒ってたから!!
フゥ……これでいい?! にゃーちゃんのところ戻るから、大人しくしててね?! あ、カラ松には、うざいって言っといてね」

ちゃぶ台の下からヘビのようににゅるるんと這い出てきたおそ松がポケットの中身を机の上にぶちまけた。
それを見て、十四松も同じようにした。

「俺、ダンゴムシ」
「なめくじ」

それを見た一松が「それワラジムシ。丸くなってない」と付け加え、トド松はおそ松、十四松、ちゃぶ台の順に外へぶん投げた。ちゃぶ台からはワラジムシ1匹を落としもせずに。


[トド一]

トド松はいつものデートの最中だった。果たして、デートと呼ぶのが正しいかどうか分からないし、トド松自身はただ友達と遊んでいるとしか思っていない。

「トド松くん、ネコだよ」

右隣の女の子がきゃっ、と嬉しそうな声を上げて指さした。あーほんとだぁ、と周りの女の子もそちらへ視線を向ける。
トド松も、そっちを向く。
道路にのんきに転がる猫の前にしゃがみこんでいる男がいた。見慣れた背中だった。

「あ、兄さんだ」
「へえ、トド松くんのお兄さんかぁ」
「すごいネコ好きなんだね、可愛い笑顔」
「トド松くんと顔そっくりだぁ」

ひょいと、一松がネコの1匹を抱き上げた。
普段家では見せないような笑顔か、と言われれば、そうでもない。たまに見せる顔だった。
でも、そう見れるものではなかった。ごくごくたまにしか見せない表情だ。


「今日、すれちがった?」
「うん、兄さん見たよ。ネコといたね」

家に帰った時には、もうすでに一松は戻っていて、テレビを見ながら、みかんをむいていた。
トド松もかごの中のみかんに手を伸ばした。

「トド松」
「なに?」
「あんな顔してたら、バレるよ」

きれいに白い部分までとったみかんを口へ放るように入れるのを見つめた。手ひらの中のみかん。その丸さと皮の凹凸に意識が逸れた。

「あんな顔ってなんだよ」
「ネコに嫉妬する気持ち1ミリでもあるんだったら、少しはオレにかまってみれば?」

一松がずい、と目の前にきれいにむかれたみかんを差し出した。口を開ければ、投げ込まれた。

「なんのこと、言ってるわけ? このみかん、随分、苦いね」
「オレは嫌いじゃないよ」


[一カラ?]

カラ松は、マスクを見つけた。一松のストックだった。
朝のニュースでネコを見た。マスクから一松が連想され、ネコが連想された。
マスクを付けていたら、ネコに触れるかな、とふと思った。
見つけたマスクを付けて、代わりにサングラスを置いて、カラ松は町へ出た。

結果は惨敗。ネコには顔なんて関係なかったのだろう。マスクだけでは何も誤魔化すことができなかった。とはいえ、勝負服だったわけでもないので、そのままカラ松girl探しするという選択肢もない。大人しく家に帰るしかなかった。

「ただいまーって、一松だけか」
「兄さん、なんでマスク」
「お!! 気付いてくれたか! お前とお揃い」

一松は何か言おうとしたが、すぐに視線を手元に戻した。カラ松は気付いていないのだろうか。理由を聞いているのに答えになっていない。一松はそれを言おうとして、辞めたのだった。どうせ、大した理由なんてないだろう。そう判断した。

「お前もオレとお揃いにしてやろうじゃないか」
「は?」

ぽん、と手を打って大きく頷いた。そして、カラ松のポケットから極太マッキーが現れた。きゅぽん、とキャップが外される。

「なにを」
「わかってるだろ〜」

じりじりとカラ松が一松に迫る。一松は、じっとカラ松を見た。

「う、なんだよ、その目は……」

スキ有り、と言わんばかりに一松の拳がカラ松の腹に入った。大した衝撃にならないように、浅く止められたのがカラ松には(殴られ慣れすぎて)分かったが、それでも痛いものは痛い。

「ぐふっ、冗談だってば」
「カラ松兄さん、もっと凛々しくしてあげる」

カラ松の手からマッキー奪われ、速技で、カラ松の眉毛が倍の太さになった。
カラ松は洗面所で十数分ほど格闘するハメになったのだった。


[一カラ]

カラ「げほげほっ」
おそ「なに、カラ松、風邪〜? お、一松? 風邪引いてても容赦なしなの?? 」
一「手持ちないから」(自分のマスク付けてあげる)
カラ「げほげほっげほ!?!!」
チョロ「いやいやいや、珍しく優しいけど、それはないでしょって、あれ、カラ松どうして照れてんの?」


[一カラ]

「グラサンにマスクって、やっぱマズいか?」
「まずいと思う。通報されるんじゃない」

サングラスをかけ、今日も今日とてロック服に身を包んだカラ松がじっ、と一松のマスクを見つめて聞いた。

「花粉症かな、なんかムズムズする」
「グラサン辞めなよ」

一松がカラ松のサングラス手を伸ばした。されるがままに、サングラスは一松の手の中に収まった。

「なんかなぁ、グラサンないとなー」

サングラスをかけて、カラ松を見た。どう? と首を傾げた仕草で伝わってきた。

「不審者だな」
「そういうこと」
「マスクだけで行くか」

一松が棚を指さした。ストックはそこにある、ということらしい。カラ松は頷いた。
カラ松がマスクを付けて、一松がサングラスをかけていた。
カラ松は、一松からマスクを外させた。

「違和感あるな」

当たり前だ、と一松は思いながら、カラ松を眺める。マスクの似合わない顔だと思った。
やっぱり、カラ松girl探しはやめよう、と呟き、カラ松はいつものパーカーに着替えてしまった。
一松はマスクをつけたまま着替えるカラ松をサングラスの黒いプラスチック越しに見ていた。
すると、おそ松がやってきた。

「あれ、カラ松と一松? 何やってんの?」

カラ松は、答えようと口を開いたところで、目を半開きにして、顎を机に乗せていかにもだるそうにした。
そう来るか、と内心めんどうくさいと思いながらも一松はわずかに背筋を伸ばした。

「なにも」

カラ松が首を横へ振った。

「ちょっとな、今日は風向きが悪かったからかわいこちゃん探しはやめたんだ」

一松が、サングラスを光らせた。

「カラ松らしいなぁ」
「ただいま。もう、十四松もトド松も帰ってくるって。さっきそこで会った」

おそ松が呟くと、チョロ松が帰ってきた。すぐに十四松、トド松もやってきて、6人が居間に揃った。

「なあ、一松」
「うん?」

うっわ、やっべ、一松が仕掛けてきた?! お前そういうキャラじゃないだろ!!
カラ松は焦っていた。予想外だった。きっとすぐ睨まれて、大人しくサングラスを返してもらうことになるだろうと思っていたのに、まさか、一松が乗ってくるとは……!!
何が来るのだろう、ビビりながら会話を続けることしかカラ松にはできなかった。

「ちょっと、こっち来いよ」
「カラ松兄さん……?」

ちょいちょい、と手招きされた。

「あーもう、一松は懲りないなぁ。また、みぞおち食らうぞ、やめとけって」(おそ松)
「カラ松兄さん、殴られるのわかってて、ちょっかい出すよね」(チョロ松)
「カラ松兄さんはね、きっとMなんだろうね」(トド松)

カラ松は立ち上がり、一松の隣へ。サングラスをずらして、そこから覗かせた目はやはり眠そうで、どこまでも一松なのだが、ほかの兄弟には見えない角度だった。

「か、カラ松兄さん……?」
「一松……」

思わず身構えてしまった。
一松が肩に手を回してきたからだ。
腕が上がろうとした瞬間に体をこわばらせたカラ松に舌打ちをしそうになったが堪えた。カラ松は舌打ちなんてしない。

「マイブラザー、サングラスのせいでよく見えないよ」
「……カラま、」
「一松、オレはいつまでもお前の頼れる兄さんだぜ」
「あ、ああ……」
「いつもつれないお前、オレは……」

言葉を詰まらせた一松。逆行になった一松の目がサングラスに写った。一松の目が揺れた。普段、微動打にしない無気力示す目が、揺らいだ。
初めはふざけていた、しかし、最後のひとことは別だと思った。一松は何か言いたいことがあるのだろう、そこまでは分かったが、それ以外は何も分からなかった。
一松、と呼ぼうとしたが、小さな吐息となってマスクの中で霧散した。

「え……今日の一松、おとなしいね。つーか、カラ松兄さん、家ではグラサン取れよ」(チョロ松)
「ついに見境なくなったカラ松のおかしさに呆れ果ててるんじゃない?」(おそ松)
「弟に手を出すあたりはどうかと思うんだけど、哀愁漂うっていうか、なんかいつもよりも……」(トド松)
「カラ松兄さん、かっこいい?」(十四松)

カラ松に扮した一松は、ぴく、と動きを止めた。
肩を寄せて、ひそひそを話し合っている4人を振り返った。

「オレ、一松」

サングラスをかちゃり、と鳴らして下げる。
なぁんだ、と4人が胸をなでおろした。

「そういうことかぁ」
「安心したぁ」
「どおりで、カラ松兄さんにしてはウザさが足りないわけだ!」

口々に言った。
サングラスを外した一松は、カラ松からマスクを取った。目を丸くしているカラ松にサングラスをかけてやり、一松はカラ松の耳元で本当に小さく囁いた。

「納得いかない」

納得いかないのはカラ松だった。なんのことだって言うんだ。
カラ松は首を傾げた。



世界の加速度が怖いです。世界がおそ松さん色に染まっていますね。ほらもう、うっかり、カラーなんて単語が使えないんですよ。いま、からいちって読んだひといません?? うっかり、落書きしちゃった(´>ω∂`) あえて言うならトド一推したいなぁって思っています。





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