しらすで恋する動詞111




#しらすで恋する111

01.焦がれる(2015/12/21 19:28:06)

きみは知らないけれど、オレは知っている。それは、小さな恐怖と優越感だった。ごくごくまれに廊下ですれ違う時、あからさまなくらいに目を逸らしても絶対に気付きはしないきみに抱く想いがあった。それらは交ざりあってじりりと、くすぶる。不完全燃焼で気持ちが悪い。

02.追いかける(2015/12/21 22:01:35)

君はまだ、俺に届いていないと言うけれど、とっくのとうに君は俺の隣にいる。きっと、追っかけているのが好きなんだろうな。でも、あんまりひとりで行かないで欲しい。今度は俺が追っかけなくちゃいけない。走るのも泳ぐのも好きじゃないんだ。手でも繋いでおこうか。

03.諦める(2015/12/21 22:34:11)

またヘルメスにキスしただろ? 白坂は責める風ではなく、ただ諦めるように言った。対して、須藤は、眉を寄せて、けれど、うっすらと口角を持ち上げていた。君、ずるい俺が好きだろ、と呟くように言った須藤は、白坂の耳の輪郭をなぞるようにくちびるを滑らせた。

04.懐かし(2015/12/21 22:41:41)

商売道具となった世界史の教科書を、勝手にめくって「こんなんあったなぁ!」とひとりで笑っていた白坂が「諒、ヘルメスだ」とギリシア文化のページを見せてきた。もうキスはしないけれど、未だに俺はヘルメス会いに美術室へ行っているんだってバレたら怒られそうだ。
(大人になったふたり if)

05.望む(2015/12/22 22:15:47)

須藤がヘルメスとキスすることに焼きもちを焼くのは、何もおかしくないはずだ。だって、仮にも須藤は恋人なんだから。
どこか歪んでいる気がするけど、オレは、ヘルメスにそっとキスをする須藤を見ているのが好きなような気がするのだ。
オレはきみに、オレとヘルメス望む。

06.願う(2015/12/23 00:57:24)

君は、きっと俺なんかとは一緒にいない方が身のためなんだろう。君が不審に思う通り、俺は君とヘルメスを比較できないでいる。どちらも特別な場所にいる。君はそれで十分だと笑うけれど、俺は君の幸せを願っているんだ、これでも、一応。俺は君を幸せにできないかもしれない。

07.想う(2015/12/23 22:12:45)

冷房を入れたばかりの美術室は、もはや白濁しているのかと思うくらいにどんよりと重い。湿ったほこりが漂っているような空気に包まれていた。存在感の強い空気を掻き分け、ヘルメスに触れる。ひんやりと、あの日のまま冷たいヘルメスが気持ちいい。冬のヘルメスを想いながら。

08.見つめる(2015/12/23 22:20:39)

思えば君は俺よりもヘルメスを見ていたな、と須藤が言った。何も返せなかった。誰が好きこのんでコンクリの塊を見つめていたと思うんだ。
きみの顔をまっすぐ見れるほど強い心臓は持ってないんだ。冗談に返される笑みさえ、未だに直視できない。

09.悩む(2015/12/23 22:28:21)

彼がいない、チャンスだって思ってヘルメスに口づける。大抵、彼はそれを知っていて、するならオレの目の前でなんて言うから、実行してみた。けれど、彼は悔しそうに、そして怖いもの見たさみたいな顔をする。その表情はどこか艶っぽくて、それがとてもとても悩ましい。

10.惚れる(2015/12/27 12:15:19)

きみの何にオレは惚れたんだろう。きっかけはヘルメスとのキスで、決定打はきみの声。ヘルメスにそっとキスをするきみに、オレは未だに嫉妬より先に冷たい興奮を覚えてしまう。ヘルメスがいなければ、きみに出会えなかったのか。そう思うと、なんだかむかつくんだ。

11.逃げる(2015/12/28 12:03:19)

俺は、そういう人間なんだろうから、今更君を好きであることに抵抗なんてないけれど、きっと君はそうじゃない。烏滸がましくさえあるけれど、君は俺にあてられただけなのではないだろうか、そう思うのだ。君は、俺からもヘルメスからも遠く離れた場所へ帰った方がいい、まだ逃げられるんだから。

12.囁く(2015/12/30 17:37:50)

どうしてなんだろうな。まるでヘルメスに囁きかけるように須藤は言う。その言葉が、ヘルメスにではなく、もちろんオレにでもなく、自分に向けられていながらに、同時にオレたちにも向けられていることを知っている。複雑なのは確かだが、オレがヘルメスにキスをすればきみが笑うことだって事実だし複雑だ。

13.慰める(2016/01/23 11:26:38)

俺は彼に頼ってばかりだと思っていた。頼る、だと少しニュアンスが違うかな。すべて彼に任せっきりだったのだ。それも原因のひとつだ。俺には、男同士だからなんていう言葉の意味も、彼の俺への思いも頭でしか分かっていなかったのかもしれない。ごめん、好きだよ、と白々しい言葉達は慰めになるのか。

14.別れる(2016/01/23 11:36:08)

きみは卒業したらどうするの? 深い意味は無い質問だった。ただ、もうヘルメスに会う機会はないんじゃないかと思っただけなのだ。きっと、こんな環境が揃うことはないって須藤だって分かってる。「君がいるなら別に」 オレがいるなら、ヘルメスと別れてもってこと? ……ああもう、さらっと言ってくれる。

15.待つ(2016/02/16 00:40:47)

水泳の独特のスタートの合図の音。まるで、危険信号みたいだとはじめは思ったものだ。テレビの向こうは水色で、泳ぎ出したばかりの水泳選手をカメラは追う。ビイイイッという音から彼の背筋は伸びっぱなしで、その目は何を見ているのだろう。飛び込み台を、きついゴーグルを待っているに違いない。
(大人になったふたり if)

16.ときめく(2016/02/16 00:46:15)

ときめくとときめかす、何が違うの? 彼が聞いた。するか、されるか。と答える。そのまんまなんだが、他にどう伝えようか。
「君に俺がときめかされる、つまり寵愛される。君が俺をときめかす、君が俺を寵愛するって感じ」
そこまで馬鹿じゃないよっ、と抗議の声。加えて、
「ときめかしてる、オレ」

17.自惚れる(2016/03/08 22:15:20)

ヘルメスと隠れてキスをする。俺はなにかに満たされる。彼が、少しだけ苛立って、俺になにも言わないでため息をつこうとして飲み込んで、俺は「一石二鳥だな」なんて思うのだ。なにが? と心の片隅が聞いてくる。数秒考えて至る答えは、やはり半分は彼を悩ませるだけだ。ああ、これが自惚れってやつか。

18.触れる(2016/05/03 21:14:01)

ぺたり、とまるで表面張力が働いているかのように須藤の手のひらはヘルメスの肩に張り付いた。小さな小さな春の風の中にまぎれているような、そんなほこりが覆っている体はいっそ滑りがよくてさらさらしている。けれど、えんぴつで汚れた須藤の手は湿っていて、すべらない。くっついて動かない。

19.寂しがる(2016/05/03 21:19:13)

休み明けにはっと思い出したように美術室へと続く階段を駆け上がる。なかなか開かない鍵をがちゃがちゃがちゃと乱暴に回して、勢いよくスライドしたドアはそれでも重さと木の歪みで半分くらいしか開かない。教室後方。棚の前にしゃがんで、ひと息つく。白い石膏の表情は微笑。俺の頬が、わずかに緩んだのを感じた。

20.思い出す(2017/05/15 15:44:35)

須藤のくちびるは柔らかい。少しがさがさしているのも、なんだかクセになる。ふと、ひやりと冷たく硬い、応えてくれもしないものを思い出して、須藤から体を離す。須藤のくちびるを親指でそっと触る。おれは今なにを考えた? まさか好きなひととのキスの最中に好きな人の好きなひとのくちびるを思い出すなんて。なにもかもが複雑だ。

21.誓う
22.躊躇う
23.弄ぶ
24.出会う
25.微笑む
26.拗ねる
27.奪う
28.溶け合う
29.抱きしめる
30.重ねる

31.隠す
32.染める
33.放す
34.戯れる
35.求める
36.傷つく
37.壊れる
38.気づく
39.伝える
40.疑う

41.憂う
42.応える
43.祈る
44.眠る
45.振られる
46.眩う(まう)
47.見つける
48.忘れる
49.信じる
50.振り払う

51.寄り添う
52.泣く
53.握りしめる
54.なぞる
55.慕う
56.憧れる
57.疼く
58.絡める
59.惹かれる
60.騙す

61.照れる
62.舐める
63.誤魔化す
64.確かめる
65.巡り合う
66.絆される
67.縋る
68.悔やむ
69.攫う
70.甘える

71.選ぶ
72.失う
73.狙う
74.飽きる
75.妬む
76.嘯く
77.掴む
78.手に入れる
79.秘める
80.悟る

81.振り回す
82.撫でる
83.茶化す
84.輝く
85.気にする
86.受け入れる
87.呼ぶ
88.持て余す
89.焼き付ける
90.突き放す

91.溢れ出す
92.近づく
93.守る
94.惑う
95.夢見る
96.叶える
97.頷く
98.恋う(こう)
99.感じる
100.頼る
101.捨てる
102.擦れ違う
103.刻む
104.探す
105.憎む
106.誘う
107.振り返る
108.狂わせる
109.温める
110.口付ける
111.恋する




(お題)
確かに恋だった http://85.xmbs.jp/utis/


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