あっちこっち難攻不落【三輪秀次】



負けたな、と直感が告げた。
と、同時に足場が派手な音を立てて崩れた。急いで、飛び上がるが回避はできない。砕けたコンクリートの破片が爆風で手足や頬に当たっているのを感じた。粉塵がうっすらと視界を曇らせた。私の孤月にかすりもしてくれなかった、標的であるその人が目の前に迫ってく気配があった。着地するまで上半身だけで避ける? そんなに器用なことはできないし、できたところで、こいつにはなんの障害にもなりはしないだろう。どんなに小さくて軽い粉塵のひと粒ひと粒にも重力はかかる。晴れてきた視界の人影が微かに口を開いたのが見えた。同時に重りを付けられた足が地面を捉えた。
「諦めろ」
その瞬間、耳元で銃声がした。
目を開けると、いつもの天井があった。淡いオレンジ色の照明が眩しかった。よっこらせ、と腹筋を全力で使って体を起こす。その勢いのまま、立ち上がって、部屋を出た。隣のブースにいるはずの三輪に声をかけるためだ。急がないと、ひとりで勝手に学校へ行ってしまう。
諦めろ。
三輪が私を殺す瞬間にいう言葉だ。言い方を変えれば、三輪が勝利を確信した場合にのみ発せられるもので、私の負けもとい、トリオンでできた戦闘体の機能の停止の宣言でもあった。
もう何度目か、いや、数える方が馬鹿らしいくらい言われてきた言葉だ。ただし、何回言われても、それが何に対しての言葉であるのかは分からない。単純に、模擬戦での勝利についてなのか、はたまた、私がボーダーの隊員でいることについてなのか。あとは、お菓子だとかジュースを賭けて戦う時は、その賭けの品についてなのかもしれない。
「三輪! さっき、どっち先に撃った?!」
訓練室の扉を全力で押した。バンッ、と鋭い音がした。部屋に入ると、いつもどおり三輪は寝っ転がったままぼうっとしていた。ただし、ドア(または私)が立てた音にぱちくり、と目を瞬いていたが。
「……右足」
ちなみに、この数秒の間は、そんなものも見えなかったのか、見えないやつに教えてやる必要はない、と私を小馬鹿にしようとして、そのあと、私にいいから教えろと迫られるのを見越し、諦める、その思考の過程、逡巡の結果である。
朝の模擬戦3本勝負が恒例行事(週に3回)になってから、早2年は経とうとしている。上記の会話はもう既に何度も繰り返してきた。三輪は学んだのだ。素直に答えを教えることが、一番楽だということを。
「うわ、もうギリギリだね」
「本当だな」
三輪はかばんを持って、学ランの襟元を正していた。その手首から覗く腕時計を見ると、そろそろ出発しないと学校に遅刻しかねない、そんな時間だった。
私も隣からかばんを取ってくる。当たり前というように、玄関に向かって廊下を進んでいく三輪。こいつは何を急いでいるわけでもないのに、やけに歩くのが早い。そんな三輪の後ろを早足で追った。

三輪のせいで早足登校が日常になり、随分と足腰が鍛えられたような気がする。予鈴が鳴っているのを聞きながら校門を抜ける。本部から学校までの道中、私と三輪に特に会話はない。前は、三輪の攻撃パターンが一切読めなかったし、ほとんど視認することもできなかったから、散々詰め寄って一から十まで、とにかく全部を説明してもらっていたので、それなりに会話はあった。しかし、こうも高い頻度で戦っていれば三輪の戦い方というものを体が覚えてくるし、それこそ三輪が相手をしてくれているおかげである程度の攻撃なら見えるようにもなった。三輪に説明してもらうこともなくなり、もちろん、共通の話題なんてそうあるわけもなく、ふたりして無言のまま、せかせかと(しているのは私だけだけど)歩いている。
「あ、古典の教科書忘れた気がする」
時間割を思い浮かべ、かばんに詰めてきた教科書を思い出す。古典の教科書は机の上にあったような気がしてならない。
「今日、古典ある?」
「他をあたれ」
「あるかないか聞いてる」
「あったらなんだ。関係ないだろ」
「ソウデスカ。んー、出水にでも借りるか。米屋持ってなさそうだし」
出水は100%置き勉なので、いつ何時借りに行っても教科書がある。クラスが違うから、時間割がかぶることもないし。教科書は出水、課題は三輪。頼るならここだ。米屋に頼ることは特にありません。
「この間、出水の教科書に落書きしたのお前だろう」
「え、どれ? リーディング?」
「いや、数学」
「数学か……。何書いたか記憶ないなぁ。ていうか、出水に教科書借りたんだ」
出水の教科書は、もはや交換お絵かきノートと化していると言える。私の落書きに誰かしらのコメントが付いている。大抵は米屋と持ち主である出水。どうして、米屋のコメントがあるのかは謎である。あいつら、おんなじクラスなのに。一緒に勉強しているとも考えづらいし。謎である。
「俺だって教科書くらい忘れることはある」
「そうそう、だから貸して」
三輪が忘れるのだから、私が忘れないわけがない。出水に借りろ、と言われるだろうと思っていたのに三輪はため息をついてから、ああ、と頷いた。
「……取りに来い。いつだ?」
「あれ、あっさり。たぶん、4限」
「体育だな、こっちは。早めに来い」
分かった、ありがとう、と手を振りながら、靴箱へ。三輪と私はクラスが違うので、ずらっと並ぶロッカーの郡も違う。玄関が三輪と別れる場所なのである。と言っても、教室があるフロアは一緒なので、階段で合流することも少なくはない。まあ、大抵はそのまま事務室へ行ってしまうので、やっぱりお別れだ。A級の任務関連で、欠席届けとか出しているのだろう。同学年の他のA級がA級なので、ボーダーについて、先生たちは三輪に色々なことを任せているような気がする。
隊長もしているし、人をまとめるのは決して苦手ではないのだろうけど、好きではないんだろうな、と感じている。そもそも、人の同意とか得るの下手だし、穏便に物事とか進められないし、見るからに俺に付いてこいって口よりも背中に語らせちゃうタイプだし。それでも付いていきたくなる背中なのだから、やっぱり一種、まとめるのが上手とも言えるのかも。
階段を登り終えたところに友達がいた。後ろから、肩をたたいて声をかける。聞けば、やっぱり古典は4限目だ。

ふっ、と三輪が視界から消えた。今日は特別フィールドでもなんでもない。何もない、仮想の空間だ。隠れる場所など存在しない。つい数秒前、壁際まで追い込んだというのに、目の前からいなくなるわけがない。撃ち抜かれた手首に意識を向けている場合ではなかった。上か、と気づいた時にはもう遅かったようだ。うなじに、ひやりと冷たいものを感じた。
あっという間に、背後を取られてしまう。
「相変わらず、弱いな。諦めろ」
うなじからのどぼとけへ。間違えて熱されたアイロンに触れてしまった時のような、ほんの一瞬、微かな痛みが喉に走る。もちろん、痛覚は切ってあるので、それはそうぞうでしかにのだけど。バンッ、という銃声が聞こえたのは痛みが喉を通り抜けたあとだった。黒い煙のような、トリオンがゆらゆらと朧げに空気に霧散していく。
がくん、と膝が崩れ落ちた。尻もちを盛大についてしまう。そのまま、仰向けに寝っ転がると、三輪の足先が後頭部に触れた。見上げた三輪の目はいつもと変わらず冷たい。銃口よりかは少しあったかいかもしれない。
痛くはない。けれど、荒くなった呼吸がさらに詰まり気味になる。ゆっくりと右腕を伸ばす。残りわずかのトリオンを腕の先の孤月へ。負傷している割にタイムラグはなく、音もなく伸びた孤月は三輪の首があったであろう場所を辿った。
同時に左手に仕込んでいたレイガストを起動させた。今出せる最高速度で密度を上げた短刀状のスコーピオンを横に振り抜いた。手応えを感じたところで、トリオンの露出過多、トリオン器官の損出。
視界に照明が映る。ほとんど転がり落ちるようにベッドを降り、部屋を出る。安定の隣の三輪くん突撃訪問である。
「どこまで切れた?!」
「もっと静かに入ってこれないのか?」
「三輪が逃げるから」
「左の膝下」
「落ちた?」
わずかに視線を逸らしつつ、三輪は頷いた。思わず、ガッツポーズを決める。おおっと、三輪の表情が険しくなったぞ。
未だに三輪に勝てたことはないが、たまに、それなりの傷を負わせることはできる。手足の1本でも落とせればいい方だ。普段は、孤月しか使わない私だが、器用だからスコーピオンとの併用に変えたらどうだ(実はスコーピオンへの変更)と勧められて、つい先日から使い始めた。まだ慣れないが、私がスコーピオンに手を出したことを知らない三輪は少し驚いたのではないだろうか。初出である今回の一回きりしか使えない作戦だ。
「スコーピオンか……合ってるんじゃないか?」
「本当に? 三輪がそういうこと言うの珍しいね」
自分でも、絶対に孤月よりも向いてるなぁとは、孤月を選んだ時から実は思っていたことだった。とはいえ、私が憧れて入った、ボーダー隊員が孤月を使っていたので、ずっと孤月を使っている。それでも、まあまあの戦果は出せていると思う。
「いや、スコーピオンじゃなくてもいい。このまま、孤月を使うなら、専用オプションを使え。お前には変形用のトリガーが向いてる」
「本気で言ってる?」
三輪は私が孤月を使っている理由を知っているので、私の言葉から何かを察したようだ。三輪に気を遣われるのはなんだか嫌だが、嘘は言わないやつなので信用しよう。
「ああ、冗談なんて言ってどうする」
「それ褒めてるよね。絶対に褒めてるよね」
「? 褒めてはいないが……? 向き不向きの話でしかない」
スコーピオンへの転向を勧められた時は、孤月は諦めろと言われているような気がして、めちゃくちゃ落ち込んだ。三輪は私の(たぶん)戦術的なセンスを認めてくれたから、変形オプションを勧めてくれているんだと判断した。あと、変形しても重量は変わらない。三輪は重さに関しても触れなかった。それは、決して孤月に重さ負けはしてないっていう自信に変えさせてもらってもいいだろうか。
「あとで頼んでみる。米屋にでも教えてもらうか」
一番身近な、その手のプロといえば米屋だろう。たまに模擬戦付き合ってくれるけど、あいつもあいつで、強いやつとしかやりたがらないので、なかなかB級の下の方の私なんか相手にしてくれない。なんだか、頼むたびに渋られるんだよなぁ。三輪に頼めよ、ばっかり言ってくる。もう色々と頼んでるんだってば。米屋なんて、戦闘関係でしか頼るところないのに。
「あいつは特別器用だからな。すぐに使いこなしたが、佐藤にはまだ無理だ。陽介にものの数秒でやられるぞ。少しは慣れてからにするんだな」
「それもそうかぁ。ま、まだお目にかかってもいないしね、専用オプション」
「きちんと付き合ってやるから、安心しろ」
三輪って、なんだかんだ言って優しいんだよなぁ。面倒見がいいのか。付き合いが特別長いわけでもなければ、同期入隊なのに、B級から上がれる気配もない私とA級の中でも精鋭の三輪が、どうしてこんなに気をかけてくれているんだろうか。三輪がいなければ、私はB級になれてたかも怪しいから、本当に感謝しかない。
「陽介とやるのは、俺に勝ってからだな」
鼻で笑いやがったな、このやろ。無理だと思ってるな……。まだ分からないじゃないか。私に専用オプション勧めたことを後悔させてやるしかなさそうだ。
「一本取ったら、米屋とやっていいってこと?」
「そんなに陽介と模擬戦したいのか?」
「へ? 別に米屋じゃなくてもいいけど、あれが一番手っ取り早くない?」
「あれは特殊な方だろうし、もっと普通のアタッカーと経験を積むべきだ」
米屋にこてんぱんにされて自信喪失されないようにって、気を遣われているのか、なんなのか。やけに米屋とやらせたがらない。どうせ、米屋もやりたがらないけど。いつも楽しそうに模擬戦やるくせに私とは楽しくなさそうっていうか、とどめ刺すときの顔が苦しそうなのだ。らしくない。だから米屋にはあんまり頼まないけど、すごく参考になるから、もっと相手して欲しいところ。その点、出水はクズか!! って思うくらいに初っ端から容赦なくフルアタックぶちかましてくれたけどね。戦術も何もあるかっていうくらいに瞬殺された。視界いっぱいが、アステロイドまみれで一瞬にして作戦室送りだった。もう、出水とはやんないって半泣きで叫んだ。その時は米屋に(後から三輪にも)励まされた。
「それを言ったら、三輪なんてもっと特殊だと思うんだけど」
「同じくらいだ」
流石に自分が普通だとは思っていないらしい。オールラウンダー自体が稀有な存在だし。
「その意地はなんなの。あ、もう時間ぎりだ」
「ラスト行くか」
「うん、お願いします!」

「出水いるー?」
教科書を返しに、移動教室の帰りに出水のクラスに寄った。教室の後ろのほうで、机に向かっている出水と、そんな出水の前の席に後ろ向きに腰掛けた米屋を見つけた。米屋が先に気づいて、私に手を振った。
教室の後ろのドアへ向かい、そこからお邪魔する。他クラスに入るというのは、やっぱりなんだか、居心地が悪い。
「これ、ありがと」
「おー」
「コイツ、いま、だめよ。狩り真っ最中だから」
通りで一度も顔を上げないと思ったら。出水の隣に立って、その手元を覗く。米屋が私の手から教科書を受け取り、パラパラをページを送っていた。
「佐藤ってなかなか画伯だよな」
「幼稚園児みたいなのしか描けないやつには言われたくない」
「そもそも人の教科書でお絵かきしてんじゃねえ」
「あ、そうそう。今度、三輪から一本取れたら模擬戦付き合って」
「えー、メンドくさい」
「いいじゃん、ちょっとくらい」
なんでオレなわけ、と怪訝そうに聞いてくる。出水は何が楽しいのか分からないが、にやにやと話を聞いているだけだ。もちろん、狩りをしながら。
「米屋とやりたいの!」
米屋の両肩に手をかけて、思い切り揺する。がくがくと、一切の抵抗なく首を同じように動かす米屋の視線がぴたりと固定される。
「あ……そう、あのな、後ろに」
米屋の表情が引き攣った。出水が視線を送ってきている。とりあえず、揺するのをやめた。何かいるな……。何か嫌なものを背後から感じる。
「殺気を感じるんですケド」
「気のせいじゃないか?」
三輪が私の後ろから、隣に並んだ。そっと、私の腕を米屋の肩から外させて、退けという目をした。一歩離れると、三輪は米屋の頬をつねった。
真顔で。無言で。
ほら、米屋ビビってるよ。何事だよってなっちゃうよ。半分はハラハラしつつ、もう半分は、三輪ってたまに変で面白いなぁって思っていた。
すると、出水がちょいちょい、と私をつついてきた。なに? と座っている出水に目線を合わせるために少し屈む。
「あとでちゃんと、三輪がいいんです、三輪とやりたいの、って言っておけよ?」
「なんで? あいつ、私のことは鬱陶しくてしつこいから仕方なく相手してやってるくらいにしか思ってないよ?」
自分の言葉は全くもって、間違っていないだろう。これほど端的に三輪の中の私の印象を表すことはできないだろうってくらいだ。今更傷つきもしないし、ていうか、事実だしね。改めて、傷つく要素ないわ。出水の言い方だと、まるで私が米屋と模擬戦したら三輪が焼きもちやいちゃうみたいじゃないか。ないない。地球が逆回転を始めたってナイ。米屋とちょっと模擬戦やったくらいじゃ何も言わない。むしろ、私のしつこさ(諦めの悪さと探究心と言って欲しい)の矛先が自分以外に向いてくれて嬉しいだろう。よもや、弟子を取られたなんて思うことはないし、そもそも三輪は私を弟子だとは思ってない。私は三輪が師匠だと思ってるけど。
あ、そうそう、と手を打って、小さく手招きをする。私は出水に顔を寄せた。米屋は三輪に日頃の生活態度とか成績とか色々なことを雨嵐のように説教されている。頬はつねられたままだ。ちょっと痛そう。
「三輪って好きなやついるらしいぜ」
「そうなの? 良かったぁ」
出水の耳打ちに三輪も米屋も私を向いた。全然、耳打ちの意味はなかったようだ。ふたりとも耳がいいようで。どうして私の顔を見ているのだろうか。ここは出水の顔を見るべきだろう。
「難儀なヤツ」と、米屋。
「ま、自業自得だろ」と、出水。
「どういう意味だ?」と、私達3人の顔を見回し、うっすら笑顔さえ浮かべて三輪が言った。
「「「どれ?」」」
三輪を除く3人の声がぴったりと重なった。三輪は眉間を押さえて、もういい、とため息と半分混じった、声とも吐息とも取れない微かな音を残して教室を出ていってしまった。数学の教科書持ってたし、数学ならフロアがもうひとつ上だし、そろそろ向かわないとギリギリだからだろう。
「良かったってなに?」
出水が一度引っ込めたPSPを机から出した。三輪から退避させていたのだろう。没収はされないまでも、確実に何かしらのお小言が降ってくることは想像に難くない。
「え、ああ、三輪に恋する余裕があるってことでしょ。成長じゃん」
「あー、そっちいっちゃうか。妥当……じゃあねえよな?」
米屋がちら、と出水を見る。頷きながら、PSPの電源を入れた出水はふん、と小馬鹿したように笑った。皮肉っぽいな、全く。
「あの三輪クンに好きな人っていうんだから、もう少し色めきたってやれよって気もするよな」
「まあ、お前はいいヤツだよ、ほんと」
ぽん、と肩を叩かれる。どうして米屋に励まされてるんだろうか。三輪がかわいそうなほどにな、と出水が呟いた。同時にゲームのBGMが流れ出す。
「もう鳴るぜ」
「あ、うん。教科書ありがと。物理借りてく」
「取って」
出水は顔を上げずに、そう答えた。椅子の後ろ2本の足に体重を預けて、机から体を離す。机の中を容赦なく漁り、物理の教科書を見つけ出す。じゃあね、と手を振ってすぐ隣の教室へ。
「とばっちりは勘弁してくれ」
やれやれとあからさまな仕草をした米屋が視界の隅っこに入った。よく分からんと思いながら、鳴り出したチャイムに自席へ急いで座った。

ひや、と冷たい銃身が俯いた私の顎を持ち上げた。銃弾を避けようと飛び上がったはいいものの、着地先をことごとく狙い打たれてしまっては、バランスを崩してのかろうじての着地、いや、誘い込まれた上に、ほとんど転んだようなものだ。膝をついたのも一瞬、すぐに体勢を直そうとしたのに、目の前には見慣れた三輪の得物である。
「あーもう、敵わないなぁ」
「せいぜい、俺の腕の一本くらいは取れるようになるんだな」
「うわぁ、遠いなー。三輪って気が長いほうじゃないでしょ」
「いつもなら、待ってろくらい言うくせにどうした。あと、俺は責任は果たす」
「楽しみに待ってろって言ってあげるから」
首でも洗っておいて、なんて冗談めかそうとした瞬間、
トリオン体でできた銃弾が私の喉で弾けた。
緊急脱出の声も半ばで、私の体は仮想のものから現実へと戻される。
さあ、三輪に逃げられる前に数え出したら切りがないような敗因を聞きに行こう。あと、人の話は最後まで聞いてって言おう。





あっちこっち難攻不落【三輪秀次】

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