「そこ、間違ってますよ」
「え?」
魔が差したとは言え、我ながらお節介焼きな指摘をしてしまったと思う。だけど彼、磐田くんは、一瞬面食らってはみせたもののすぐに課題のプリントの何処を指しているのか察したようで、慌てて消しゴムをかけて、わたしに笑いかけてみせた。
「ありがとう、つ……ええと、緑川さん」
これといった根拠はないけど、多分この人は、変わった人だ、と。
そう思ったわたしは「どういたしまして」と返事を返し、さっさと自分のプリントを提出するべく教卓の方へ向かった。
(昔の話)
安美くんお借り
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