sss![](//img.mobilerz.net/sozai/253_w.gif)
連載主とサッチ
2010/03/01 02:59
「なんだ?チビ、お前、みかん剥くの下手くそだな」
「…」
目の前で、みかんの皮をボロボロの細切れで剥いているチビに、おれは思わず吹き出した。
つい先日、クルーの誰かの故郷から大量に送られてきたみかんを、食後のデザートに、とコックに差し出された。
それに喜んだのはおれだけじゃなくて、珍しくマルコ抜きで一緒に飯を食っていたチビも同じだった。
ちなみに、マルコは只今お出かけ中だ。
まあそんなわけで黙々とみかんの皮を剥いていたわけだが、あまりにもチビの剥き方が下手だ。
なんというか、もうこれは皮をちぎってると言った方がいいんじゃないか?ってくらいに下手だ。
「…むー」
「拗ねんな、拗ねんな」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやるが、結構気にしてたみたいで、なかなか尖った唇は引っ込まない。
「チビの手はちっさいもんなー」
「さっちのては、おっきいね」
ぺたりとくっつけられた手の平。
どうやら興味が手の方にずれたらしい。
一安心だ。
「チビの手はあったかいなあ」
チビの指先は、おれの指の付け根にすら届いてなくて、やっぱりこいつはガキなんだなあ、と再確認してしまう。
「さっちのてもあったかい」
「そうかー?」
「うん。おっきくてあったかい」
「そうか。チビの手はちっさくてあったかいなー」
ぎゅっと、小さな手を握り込んだ。
「おとなになったら、さっちよりおっきくなる」
「楽しみだな」
いつの日にか、こいつの手の方がおれの手よりも大きくなる日がくるんだろうか。
楽しみで、なんとなく、寂しいような気もする。
そうなる日よりも先に、チビがみかんを上手に剥けるようになったとき、もう一度こうして手を合わせてみたい。
そう、思った。
前へ | 次へ