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連載主とサッチ

2010/03/01 02:59


「なんだ?チビ、お前、みかん剥くの下手くそだな」

「…」

目の前で、みかんの皮をボロボロの細切れで剥いているチビに、おれは思わず吹き出した。

つい先日、クルーの誰かの故郷から大量に送られてきたみかんを、食後のデザートに、とコックに差し出された。
それに喜んだのはおれだけじゃなくて、珍しくマルコ抜きで一緒に飯を食っていたチビも同じだった。
ちなみに、マルコは只今お出かけ中だ。

まあそんなわけで黙々とみかんの皮を剥いていたわけだが、あまりにもチビの剥き方が下手だ。
なんというか、もうこれは皮をちぎってると言った方がいいんじゃないか?ってくらいに下手だ。

「…むー」

「拗ねんな、拗ねんな」

ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやるが、結構気にしてたみたいで、なかなか尖った唇は引っ込まない。

「チビの手はちっさいもんなー」

「さっちのては、おっきいね」

ぺたりとくっつけられた手の平。
どうやら興味が手の方にずれたらしい。
一安心だ。

「チビの手はあったかいなあ」

チビの指先は、おれの指の付け根にすら届いてなくて、やっぱりこいつはガキなんだなあ、と再確認してしまう。

「さっちのてもあったかい」

「そうかー?」

「うん。おっきくてあったかい」

「そうか。チビの手はちっさくてあったかいなー」

ぎゅっと、小さな手を握り込んだ。

「おとなになったら、さっちよりおっきくなる」

「楽しみだな」

いつの日にか、こいつの手の方がおれの手よりも大きくなる日がくるんだろうか。
楽しみで、なんとなく、寂しいような気もする。
そうなる日よりも先に、チビがみかんを上手に剥けるようになったとき、もう一度こうして手を合わせてみたい。
そう、思った。




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