03



昼休み、私はいつもクラスの女友達と机をくっつけてお弁当を食べる。私は廊下側に背を向けて、友達二人はそれぞれ私の両隣で向かい合う形。私だけ席が遠いから、友達二人のくっつけた机の溝をまたいでお弁当を広げている。私もこの辺の席がよかった。
「次って英語だっけー」
「は?時間割見てよ」
「私、目悪いんだって!代わりにお願いしまーす」
「アニメばっか見てるからじゃないの?」
「アニメに罪はない!ずっとテレビから離れられない私が悪いんだ!」
「自覚ありとかタチ悪いわー」
友達に代わりに黒板横に貼ってある時間割を確認してもらっている時だった。
「――ちょっと、君達」
と、声がかかった。私のすぐ後ろで聞こえたから、廊下の窓からだろう。友達二人が先にそちらに顔を向けて、え!と目を丸くした。
私も同じように後ろを振り返る。亜麻色の髪の男子生徒がいた。制服がブレザーってことは、高等部の先輩だ。中等部の男子の制服は学ランである。
「なんですか?」
「団蔵いる?」
「え、加藤……」
尋ねられて、教室の中を見渡した。
「いないみたいですねー」
「ああ、そうか……」
答えると先輩はうーんと顎に手を当てて考え始めた。なんだろう、もういいのかな、と思っていると、友達がちょっと!と私の肩を叩いた。
「え、なに?」
「あんた何普通に田村先輩と喋ってんの!」
「田村先輩?知り合い?」
「違うっての!田村先輩って言えば、学園でも指折りのイケメンで――」
「――おっとそれは聞き捨てならんな!」
――おっと誰かが急に会話に割り込んできた!
驚いて振り返ると、友達曰くの田村先輩の隣に、もう一人先輩が増えていた。ネクタイの色が同じだから、田村先輩とは同学年らしい。隣の田村先輩はすごく嫌な顔をしている。
「げっ!お前何しに来たんだよ!ここは中等部校舎だぞ!」
「それを言うならこちらの台詞だ!まったく、こんなところでお前と鉢合わせるとは……」
「なにぃ!」
窓の向こうで何やら言い合いを始めてしまった。なんなんだろう、この人達。
「平先輩だっ」
「このセット見れるなんてラッキー!」
「え?なに?ラッキーなの?」
「あんた本当……!見なさいよあの二人!どっちもすごい美形でしょっ」
友達に言われてもう一度二人を確認する。うーん。そりゃあ俗に言う不細工ってわけじゃないけど……。
――正直、三次元の男の子の美形の基準ってわかんないんだよな。
「てかあの人達何しに来たの?騒がしいよね」
「あの二人にそういうこと言える女子ってあんたぐらいじゃない?」
「え。そんなことないでしょ」
なんて友達と言っていると、言い合いしていた二人がばっとこちらを見たので驚いた。
「君達!この私とこいつと、どっちが格好いい!?」
「は?」
後から来た方の先輩がそんなことを言った。田村先輩も顔をしかめつつ私達の方を見ている。
――なんかめんどくさい人達に絡まれた気がする。
どうする、と友達に聞こうとしたら、二人はあっさりと言った。
「私は田村先輩派です」
「私は平先輩派です」
「なんだと!」
「じゃあお前は!?」
――何答えてんだよ!これ私も答える流れじゃんか!
田村先輩に聞かれて、うげーと思いつつどうしよっかなあと考える。
――正直、そんな意味わからんこと言ってる時点でどっちもないわーって気分なんだけど。
「えーっと、じゃあ……」
――あ、そうだ。
「じゃあ私は加藤派で」
『は?』
私以外の四人がそう目を瞬かせた。ガラッと教室のドアが開いて、慌てて飛び込んできたのは加藤だった。
「花倉!なに俺を巻き込んでんだよ!」
「あはは。いやちょうど帰ってきたのが見えたからさ」
「だからって――」
「おい団蔵!ちょっとツラ借せ」
「え、ええー!ちょ、田村先輩!今のは俺ほんと被害者!」
「三木ヱ門はともかく、私よりも好かれるとは気に入らんぞ!」
「はあー!?それを言うなら滝夜叉丸ならともかく、だろ!」
「なにをー!」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、加藤を連れた先輩二人は去っていった。まあ、加藤と田村先輩は知り合いだそうだし、別に問題ないだろう。
「……っていうか、三木ヱ門と滝夜叉丸?」
「あんた本当にあの人達のこと知らないわけ?」
「田村三木ヱ門先輩と、平滝夜叉丸先輩よ。覚えときなさいよね」
「……はあ!?」
――なんてこった!あの二人も『忍たま』キャラと名前丸被りじゃないか!
――うわ!名前わかってたらあの意味わからん言い合いも、リアル滝夜叉丸とミキティの喧嘩ー!ってテンション上がったのに!


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