> らくがき-3



私は一年の時から続けて、女子の学級委員の座に祭り上げられている。去年は同じ中学から上がってきた友達に面白がって推薦され、今年は同じクラスだった人達に推薦され。
同じ境遇に、男子の学級委員長の尾浜がいる。彼とも、久々知くんと同じく二年続けて同じクラスなので、つまり一緒に学級委員長の仕事をするのは今年で二年目だ。男友達の中では一番仲が良いと言っても多分過言ではない。
「ねえ、尾浜ぁ。ちょっとノート貸してくれない?」
「なんのノート?」
「古典。今日の授業寝ちゃってさあ」
「えー。しっかりしてよ、学級委員長〜」
「面目ない!」
肩をすくめてみせると、尾浜はけらけら笑った。仕方ないなあと呟いて、机の中からノートを出してぱらぱら捲り。
「あ、やば、俺も寝てる」
「しかりしてよ、学級委員長!」
「うわー夢野に言われたー」
うわー、ってどういう意味だ。尾浜は笑ってから、視線を私から離して。
「おーい、兵助!」
――なんで久々知くんを呼ぶの!
ぎくっと一瞬焦った私に構わず、尾浜は久々知くんに向かってちょっと来てー、と手招きした。
「なに?」
「古典のノート貸してー。寝てた!」
「勘右衛門はまた……」
久々知くんは呆れたようにため息をついて、自分の席に戻って行った。
私が寝ていたことまで告げ口されてはたまったもんじゃない。既に久々知くんには知られているかもしれないけど、もしばれていなかった場合、わざわざ自分の株を落とすようなことは避けたい。
「じゃあ私も友達の借りて……」
「え、いいの?後で兵助の貸してあげるけど」
「えっ」
尾浜の席を離れようとしたところで、尾浜に言われて思わず動きを止めた。尾浜は可笑しそうに笑った。
「夢野わかりやすー!」
「え、いや、でも……」
「勘右衛門、なに夢野さんにちょっかいかけてんの」
なんてやっている間に久々知くんが戻ってきた。尾浜はそんなことないもーん、としれっと返して、久々知くんのノートを借り受けた。
「ありがと」
「落書きするなよ」
久々知くんの忠告に尾浜があははと笑ったら、久々知くんはそのまま席を離れて教室を出て行った。
――あ、ノート私も貸してって言えばよかった!
後になって気付くも遅し。
「放課後までに写しとくから、その次夢野ね」
「え、いや久々知くんの了承が」
「後で俺から言っとくって!」
尾浜くんは軽くそう言って、久々知くんのノートをめくり始めた。どうしようかと思ったが、結局、じゃあよろしく、と言い残して席に戻った。
――だ、だって!久々知くんのノート借りるなんて恐れ多いこと、こんな機会じゃなきゃ無理だし!



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