> らくがき-1



――神様って本当にいたんだ。
なんて言い過ぎ?いや、そんなはずない!
「よ、よろしくね、久々知くん!」
「うん」
机を移動させ終えて、席についた彼は、私の言葉に頷いた。相変わらず、静かな人だ。
――席替えで片想い相手が隣の席なんて、漫画じゃないんだから!

* *

火曜日の一時間目はホームルームの時間と決まっていて、今回の席替えもその時間に行われた。
――なにこれ、神のいたずら?
普段寡黙な優等生として通っている俺が、内心こんなファンタジックな喜び方をしているなんて、誰も思わないだろう。
「よろしくね、久々知くん!」
「うん」
黒板にランダムにばら撒いて書かれた数字達から、くじで当たった番号を探し出し、席を移動させてから気が付いた。
隣の席に既に移動し終えていた彼女から挨拶されて、何を言うべきかわからず結局頷くだけに留まってしまった。もっと気の利いたこととか言えないのか、俺は。
――席替えしたら片想い相手が隣の席、ってどんなご都合展開だ。



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