女子!-4



本当に来てくれたら、苦労はないんだけど。あの避けられようだと難しそうだよなぁ。
なんて思いながら、学園まで戻って来た。小松田さんが丁度門の前にいて――実習終わりの三年生を待っているらしい――入門表にもサインしたし、さっさと長屋に戻ろっと。
今日は折角数馬と一緒にお茶なんてできるっていう幸運に恵まれたのだから、このまま一日が終わればいつになく幸せな日だったと胸を張って――
「夢太!やっと戻ったか」
突然声をかけられた。
正門のすぐ近く、一年生がよく昼寝に使っている大樹の影で待っていたらしい彼。
「雷蔵……じゃなくて、三郎だ」
「その通り!お前のせいで折角の午後休が中断された鉢屋三郎くんですよ〜」
「何それ?」
めんどくさそうかつ恨めしそうに、皮肉らしい言葉を言う鉢屋三郎くん。
首をかしげると、三郎はこれ見よがしにため息をついた。
「お前なあ、この私が在籍する五年生の一員として、その体たらくは恥ずかしくないのかね」
「どう言う意味だよ」
「さっき、三年は組の浦風藤内から伝言を受け取った」
浦風?確か数馬のお友達くんだ。もう実習から戻っていると言うことは、どうやらかなり早く課題を済ませたらしい。
俺は話したことないけど、どうして彼から伝言なんて?

「……お前、明後日の休日、補習な」

突然の一言。俺は一度目をパチリと瞬いて、はあ!?と声をあげた。
「何で!?この前の座学のテスト?いい線いってたと思うけど!」
「違います」
「じゃあ実技?あ!そういやこの間火縄銃の撃ち方で文句言われたけど、でもあれ及第点じゃなかった!?」
「違います。もっと直近だ、お前今しがたの行動を思い出せよ」
「今しがたって、俺は鍛冶屋に行って来ただけで」
「帰りにナンパしてただろう」
「ナンパなんてしてねえよ!……あ、いや、したわ」
「それだそれ」
よく考えなくても、あの誘い方は完全にナンパだわ。
単純に数馬とお茶したかっただけだけど、今自覚したらすげえ軽い奴みたいじゃん。とはいえ。
「それが何だよ」
「『三年生の女装にあっさり引っかかるとは、五年生にもなって情けない!』とのことです」
「えー!」
実習監督の先生が見ていたんだろう。いや、それはちょっと俺の威厳に関わるので言い訳を――
「ちなみに、引っかかっていなかった場合はお前の可愛い後輩の方が補習ですね」
「ぐっ……」
「さーて、五年は組の夢野夢太くん、三年生の女装に見事引っかかった感想はぁ?」
――こいつ午後休中断されただけでどんだけ根に持ってんだよ!
三郎のニヤニヤ顔は相変わらず腹立たしいことこの上ない。
しかし学級委員長のいない五年は組の委員長も兼任して頂いている身としてはお逆らい申し上げるなどとてもじゃないけど致しかねますよ畜生が。
「……いやあ、今時の三年生はレベル高いですね」
「はい夢野夢太の目は節穴ということで補習内容は追って連絡するそうでーす!」
「うっせえ!」

女子
[あとがき]



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