星降る夜へ-4



東は藍色、西は赤色。その間は薄暗い紫色。
俺はやっと門に向かっていた。まったく、先生ったら酷いよね。ちょっと外出許可をくれればそれでいいのに、なにもあんなに止めなくても。でもいいよ、もうすぐ君とあの場所に行けるから、俺は今すごく機嫌がいいんだ。始終機嫌よく笑っていると先生は結局変な顔で外出許可証を出してくれた。悔しそうで申し訳なさそうな顔をしていたね、あれどういう意味かな、雷蔵わかる?隣を見ると、雷蔵は首を傾げた。ふふ、わからないよね、一緒だ。
「――夢太、どこ行くの?」
声がかけられて、振り返ると心配そうな顔をした伊作先輩がいた。一年の時からお世話になっていた先輩で、問題が一旦解決した今でも何かと気にしてくれているいい先輩。こんばんは、と笑うと彼は顔をしかめた。
「やっと先生が出してくれたので、これ」
そう言って勝ち取った外出許可証を見せると、先輩は一瞬目を瞠って、それからあの時の先生と同じ顔をした。悔しそうで申し訳なさそうな顔。どうして最近、俺を見ると皆あんな顔をするんだろうね、雷蔵。
「それじゃあ、あんまり時間ないので。いってきます」
「……そっか。いってらっしゃい、気を付けてね」
伊作先輩は俺の顔を見てそう言った。両手がぎゅうっと拳を握っているのがわかった。どうしたんだろう、雷蔵、変だねみんな。
俺は今こんなに、機嫌がいいのになんだか申し訳ないや。
「――君達を救えなくて、ごめんよ」
伊作先輩が小さく呟いた言葉は、ふらふら歩き出した俺には聞こえなかった。
「ああ、ほら雷蔵、一番星だ。急がなきゃ」
だからそう言って、俺は急いであの場所へ向かう。

*  *

――『雷蔵、今年の七夕は一緒に天の川を見に行こう』
――『見に行く?学園でも見れるでしょ』
――『もっと綺麗に見える場所があるんだ。一緒に行こう。教えてあげる』
そう囁くと、雷蔵はくすぐったいと笑った。俺は雷蔵、君の笑う顔と声が、本当に大好きで大切で仕方なかったんだよ。


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