最悪!-5



「――ね!三反田数馬先輩!」
「……はああ!?!?」
俺の背後に向けてにっこり笑った乱太郎。
慌てて振り返ると、目を瞬かせて俺達を見ている数馬がいた。
「……え、あ!ごめんなさい!盗み聞きしてたわけじゃなくて!」
「いや、え!?なに!?なんでいるの!?いつから!?」
「えっと、伏木蔵の、告白とかしないんですかぁ?からです」
「結構嫌なとこから聞いてたね!?」
「わあすみません!偶然通りかかって!」
なんで?なんでよりによって数馬なの?
「その、誰にも言いませんから!夢野先輩に好きな人がいらっしゃるとか!言いませんから!」
「ちょっと待って、話し合おう、なんか嫌な予感がするの!」
「大丈夫です!絶対秘密にします!あの、僕委員会の仕事途中なので、失礼します!」
「ちょ、待って!」
静止も虚しく、数馬はぴゅーっと走っていってしまった。また随分と軽々と行ってしまった。
追いかけようとしたら俺が転けた。
「だ、大丈夫ですか?夢野先輩」
「数馬先輩、行っちゃいましたね……」
「最悪……」
別に他の人ならいいってわけじゃない。数馬で無ければいいというわけじゃ。でも、数馬に聞かれるのは一番悪いパターンじゃないだろうか。
一年生二人は顔を見合わせて、なんとなく申し訳なさそうに言った。
「確かにこの感じだと……」
「告白も裏目に出そうですね……」
その言葉に、ゆっくりと二人の顔を見た。どちらも心配と同情の混ざった表情をしている。
――あーもう!
「言ってること違うだろーがあ!」
『ごめんなさあーい!』
怒声を上げたら、二人は謝りながら逃げていった。

最悪
[あとがき]



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