07-13



「つっかまーえたっ!」
――なのにまた罰ゲームの危機に直面している。こいつは恋人をなんだと思っているんだ。
春市と仙蔵が恋仲になって、手を繋いで部屋に戻って他の六年に怒鳴られた日から一週間が経ったこの日のおいかけっこは、仙蔵が縄に足を取られて派手に顔から転けて終了した。
春市はいつも通りの楽しそうな声で勝利宣言をし、嬉しそうに笑いながら仙蔵に近寄った。
「……今日の罰ゲームはなんだ……」
「罰ゲームじゃないってば!」
地面に伏せたまま尋ねた仙蔵に、春市は頬をふくらませて答えた。
渋々起き上がった仙蔵は、春市のにこにこした顔に眉を寄せる。
「そうだな、罰ゲームじゃなくてお願いか」
「そう!」
「で、どんな拷問じみたお願いなんだ」
「もー!すぐそういうこと言うよね!」
春市は不満げに言いながら、仙蔵の足にかかっている縄を解いてやった。
「仙蔵くんって明日は午前の実習の後はお休みだよね」
「ああ、そうだが」
頷くと、よかったあとにっこり笑う。明日何かさせるつもりか。今の笑顔で多少のことは甘んじて受け入れようと、いつものように仙蔵が絆されかけた時。
「――明日、午後から町に出ませんかっ」
春市が弾む声で言った。仙蔵がきょとんと春市の顔を見ると、春市は気恥しそうにはにかんだ。
「……え、何で」
何か裏でもあるのかと勘ぐって、仙蔵はぽつりと聞き返した。春市は途端にむっとした顔になる。
「恋仲の二人が一緒にいるのに、何か理由が要りますか?」
仙蔵はしばしぼうっとしてから、くすりと小さく笑った。
「ああ、そうだな。理由なんか要らないな」
「そうでしょ!」
春市は嬉しそうに笑って、そのままわっと声を上げて仙蔵に抱きついてけらけら笑った。
その様子があまりに子どもじみていて、思わず仙蔵も声を立てて笑った。

私も僕も、幸せでしょう!


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