04-3



この時期、春市のご両親は数日かけて見世物をするらしい。家で飼っている動物達を何匹か連れて山を下り、見世物小屋で芸を披露するのだという。で、その間、町の小屋を作るために春市のご両親は家を空けるそうだ。代わりに動物達の世話と家事を春市がやらなければならないが、一人では絶対に無理。ということで、毎年友人達に頼んで手伝いをしてもらっていたそうだ。
春市の説明を聞いてから、早速実際に手伝いをすることになった。今、仙蔵と文次郎と留三郎は春市に連れられて倉庫に来ている。
「はい」
「なんだ?これ」
春市が倉庫から出してきたものを見て、留三郎が首を傾げる。皮を幾重にも重ねて作られている、筒状の装身具。
「これ、両手足に巻いて、縄で縛ってね。みんなに世話してもらう子達はみんな大人しいはずだけど、念のために」
「噛まれた時の対策ってことか」
「うん」
言われた通りに両手足にそれを付けると、結構な重さがあった。
「これ、随分重いな……」
思わず仙蔵が呟くと、春市は苦笑した。
「一日つけてれば慣れるよ。別に走ったり跳んだりするわけじゃないし、大丈夫だよ。まあ、小平太くんはそれ付けて元気に走り回ってるけど……」
「あいつはな」
そう仙蔵と春市が会話していると、文次郎があっと声をあげた。
「これ、結構いい鍛錬になるぞ!」
「お!文次郎、偶にはいい事を言うな!」
「偶には余計だ!」
出たよ、鍛錬馬鹿。目を輝かせて両手を振り回す二人を見て、思わずため息をついた。
「仙蔵くん大丈夫?ごめんね、やっぱり嫌だった?」
「えっ」
春市が申し訳なさそうにするので、仙蔵は慌てて首を振る。
「だ、大丈夫だ!どうせ暇だし、なかなかない体験だしな!楽しみだ」
「そう?ふふ、よかったあ」
春市が嬉しそうに笑ったので、とりあえずほっとした。

春市の家に来てから四日。この日の朝、春市の両親が戻ってきた。
「あら、今年はいつもと顔ぶれが違うわね!」
「新しい友達かあ?」
二人は仙蔵達を見て、そんな風に言った。
「いつものみんなは学園辞めちゃったから」
「そうなの?残念だわ」
「まあ、新しい友達はいいことだなあ」
母親の方はハキハキした人であり、父親の方はのんびりした雰囲気の人。どちらも仙蔵達を歓迎して、気のいい人たちだ。
「いやでも、いいわね、この子達」
「ん?なに?」
「ふふふ」
母親の方は何か考えたように笑った。



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