03-3



春市が毒草園でぼうっとしていると、二つ下の後輩が現れた。彼も生物委員会だが、今日は活動日ではないので鉢合わせるとは思わなかった。
「先輩、何してるんですか?」
「別にい。暇だったから」
春市がへらりと笑うと、後輩もそうですかと同じように笑った。
「今日は委員会ないよ?」
「わかってますよー。俺も、暇だったので」
普段は暇なら教室でだらだらしているか、彼がやけに懐いているクラスメイト兼同室者の彼と一緒が常だろうに、珍しいなあと春市は思う。
「いつもは田村くんと一緒なのに、珍しいね」
「ああ、三木ヱ門ねー」
後輩は苦笑した。その反応に春市は首を傾げる。
「先輩見ました?今日発表された、あれ」
「あれ?なあに?」
心当たりが無くて尋ねると、後輩は知りません?と少し意外そうに言った。
「なんだっけ、サラサラストレートヘアーランキング?」
「えーなにそれ」
何が面白いわけではないが、語呂がなんとなく可笑しくてけらけら笑ってしまうと、後輩もつられて笑った。春市もこの後輩も、よく笑う質である。
「あれで、滝夜叉丸が載ってるのに自分が載ってないって怒って出ていきましたよ」
「あはは、相変わらずだねえ。あの二人は」
後輩の話に、春市は声を立てて笑った。
「そんなの気にしなくていいだろうに」
「まあ、いいんじゃないですかー。可愛くて」
「可愛いって!」
後輩の言い回しにまた笑う春市。後輩はそれに首を傾げた。
「先輩もよく立花先輩を可愛いって言うじゃないですか」
「仙蔵くんは可愛いじゃない。犬みたいで」
「……まあ、そのあたりは触れないでおきましょう」
後輩は小さく苦笑して、そうそう、と思い出したように声をあげた。
「先輩、そのランキングの話は立花先輩から聞いてないんですか?」
「ん?なんで仙蔵くん?」
「いや、だって、一位はあの人ですから」
「えっと、何ランキングだっけ」
春市が聞くと、後輩は乾いた苦笑を漏らした。
「サラサラストレートヘアーランキング、ですよー」
「ああ」
春市は一つ頷いて、笑った。
「そりゃあ仙蔵くんが一番に決まってるよ。まっすぐできらきらしているの」
春市の記憶の隅の方で、少し幼い彼がぴょんと跳ねた。その黒い髪がきらきらと陽の光を透かせる様が、鮮やかに思い出されるようだった。

まっすぐきらきら
[あとがき]



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