順調に解体をしているとの報告を陣平君から受けている美和子さんに安堵の息を漏らしていると、突然、美和子さんに動揺が見られた。
「え…!ちょっと、何言ってんのよ…!?」
直ぐに美和子さんの隣に駆け寄って携帯に耳を近づけると私にも電話の内容が入ってくる。
『もう一つの、もっと大きな花火の在り処のヒントを表示するのは、爆発3秒前…検討を祈る。…これがたった今、液晶パネルに表示された文章だ。』
どうやら爆弾を止めて液晶パネルの電源を切ると、そのヒントは永久に表示されないらしい。
しまった…やはり犯人の狙いは警察官を殺すこと…!
つまり今の爆発は犯人がこの付近のどこかに居て陣平君が乗り込んだのを確認し、観覧車を止める爆弾のスイッチを押したという事…!
私と美和子さんは同時に走り出した。
こんな事をしてもこの大勢の中から見つからないのはわかっている。
だけど、これ以外今の私に出来ることは無い。
時間はもう残り少ない。美和子さんから携帯を奪うようにして取ると必死に陣平君へ話しかける。
「陣平君!はやく爆弾を解体して!!ヒントなんてなくても絶対に爆弾は見つかるから…!だからはやく…!!」
『悪いな三月…それは出来ねえ。』
「なんで…。」
『多くの人間の命がかかってんだ。それに、これ以上お前を危険な目に合わせると、俺があいつに怒られちまうからな。』
「だからあいつって誰なの!?ねえ、陣平君、お願いだから早く線を切って…!!」
『……お前といて割と楽しかったぜ。年の離れた兄弟みたいでさ。なあ三月、もしアイツと会えたら伝えてくれねえか。』
「なに…を…。」
『ありがとう…ってな。』
「陣平…君…?」
『おら、さっさとその携帯、持ち主に返してやれ。困ってんだろ。』
ゆっくりと携帯を持つ手を耳から外すとそれを美和子さんへと手渡した。
「いかん、後1分だ…!」
……
…聞こえる。「陣平君!!」「松田君!!」俺を呼ぶアイツらの声が。
気持ちを落ち着けようとタバコに火をつける。
ゴンドラ内にはNo Smokingと書かれているが、今日ぐらい、大目に見てくれよな。
いよいよ爆発3秒前、予め打っていたメールにヒントの答えを記すと、俺は送信ボタンを押した。
爆弾解除は、もう間に合わない。
悪いな、どうやら約束は守れそうにねえな…萩原…
…降谷。
その直後、大きな音を立てて無残に散った真っ赤な72番目の観覧車は黒焦げになって私達の元へと降ってきたのだった。
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