epilog









「…で、有希子さんが毎週通ってた…と。」

「そうよ!でももうこれで私が毎週通って変装のチェックしに来なくても大丈夫ね!」

「お世話になりました…」

「まあ私的には会いに来る口実がなくなってちょっと残念だけど…」

「有希子さん…。」

頬に手を当てうっとり顔の工藤新一の母である有希子さんに呆れ気味のまま苦笑いを零す。隣の工藤の顔は見ていないがきっと呆れている事だろう。


「まるで別人ね…」

「本当に赤井さんですか?」


あまりにも元の赤井秀一の顔と別人な沖矢昴の顔を見てジョディさんとキャメルさんは驚きの声を上げる。
2人に変装と変声機について赤井さんが説明している間に工藤親子は私にじわじわと詰め寄ってきた。
ニヤリと笑う顔は流石は親子と言ったところか、そっくりだ。



「ところで、三月ちゃんも嬉しい事、あったんじゃない?」

「…え?」

「もったいぶらねーで吐いちまえよ。安室さんと上手くいったんだろ?」

「な…!…えと、別に…。」

「そんな事言って、顔が赤いわよ〜!」

「いや、だ、だから…あはは。」

「その顔、上手くいったって言ってるようなもんじゃねーか。」

「…蘭とかには内緒だからね。」

「はいはい…(どーせすぐバレるだろうよ)」

「で、告白はどっちから?もうキスは済ませた?」


さらに詰め寄ってくる有希子さんに私がタジタジになっていると、赤井さんがゴホン…と咳払いを一つした後、有希子さんにそろそろ飛行機の時間では…と話しかけた。
どうやら助かったらしいが、有希子さんから何度も電話でいろいろ教えてよね!と言われ、苦笑いを零す。

有希子さんは帰りがけにじゃあね!と私と工藤の頬にキスを落とすと上機嫌に鼻歌交じりのまま工藤邸を後にする。

少し照れくさいけれど有希子さんから自分が大切にされているという事に嬉しさを感じた。
何しろ、両親がなくなった直後に連絡をくれた優作さんと有希子さんは私の事を自分達の子供のように思ってくれているらしく、親だと思ってくれていい、と私に言ってくれたのだ。
だからこそ、私は両親の死から立ち直ることが出来たのかもしれない。


「私も空港、ついて行くから!」

「え、ちょ、三月姉ちゃん!」

「大丈夫、話は聞こえてるから。」


つんつん、と耳につけた集音機のイヤホンをつつくと私も有希子さんを追い掛けて有希子さんが乗ろうとしているタクシーに乗り込んだ。



「有希子さん。私も空港まで行きます。」

「え?いいのよ!新ちゃん達と話す事があるんでしょ?」

「いいんです、それに私…有希子さんと居たいので。」


タクシーに乗り込み、照れくさそうに頬を掻きながら有希子さんを見て言うと、直後に有希子さんからの盛大なハグを受ける。


「もお!三月ちゃんたら!」

「ははは、すごく仲がいいんですね。」

「ええ!自慢の娘なんです!」

「…!」


タクシーの運転手に何気なく話しかけられた有希子さんは笑顔でそう返した。
ああ、今凄く心が満たされている気がする。

私達を乗せたタクシーは少しゆっくりとした運転で空港へと向かった。

搭乗ゲートまで有希子さんを見送り、待合から飛行機が飛び立つ所を眺めていると集音機から重要な会話が漏れて来る。
イヤホンで音楽を聞くふりをしながら私は耳を傾けた。


『今朝、キール…水無怜奈からメールが届いた。』


キール…CIAから零君のように組織に潜入しているスパイで赤井さんに情報を流す約束をしたという…

『じゃ、じゃあ赤井さんが生きてるって事は奴らにバレてないようですね!』

水無怜奈が殺したハズの赤井さんが生きている事が奴らにバレると、奴らは真っ先にそのキールを消す筈だからそういう事になる。 零君がベルモットや組織に嘘をついたということだ。


『ああ、多分…だがメールといってもアルファベット3文字だけ…』

『アルファベット3文字?』

『何かの略語ですか?』

『いや、お前らもよーく知ってる酒の名…RUM(ラム)…奴らのコードネームだ…組織にいた頃二、三度耳にしたが…どうやら奴らのボスの側近らしい…』

側近…ラム…そして水無怜奈は単語だけを送信してきたという事はそれだけ切迫した状況で打ったメール…そう赤井さんは続けた。

「ラム…。」


組織の大物ついに動こうとしている…?
…零君。





飛行機を見送った後空港のバス停へとぼとぼと歩く。
無性に零君に会いたくなったけれど、彼は昼からポアロだと言っていた。今の時間はきっと車でポアロに…
そう考えていると、バス停横の駐車場に白い見慣れた車を発見した。

白い、RX-7…零君の車…!?
物陰からこっそりと車を見ていると助手席の扉が開きプラチナブロンドの女性が小さな鞄を片手に降りた。
あれは…ベルモット。
大方、仕事で海外に用事があるので零君に車で送らせたのだろう。
彼女は扉を閉めるとスタスタと空港へ消えていった。

彼女に気付かれていない事に安堵していると急にスマホが震え始めたので少しドキッとしつつ画面に目を移すと“安室さん”と表情されていた。
タイミングが良すぎて不審に思いつつも通話ボタンをタップすると『そんな所で何してるんだ。』と優しいトーンで話し掛けてきた。
はっと車の方へ目を向けるとこちらを見つめて余裕の笑みを浮かべている零君が…


「…バレてた?」

「全く、ベルモットが気付かなかったから良いものの…で、こんな所で何を?」

「ちょっと知り合いの見送りをね。」


と、会話しつつ助手席に乗り込もうとするも、零君にそれは制されてしまう。
疑問に思っていると零君はどこからか取り出した消臭スプレーを助手席に振りかけた後、座席部分にクッションを敷き、私に乗るように促す。


「あの女の香水の臭いが苦手でね…お前にそれを移したくない。」

理由を聞くとキッパリとそう言われてしまい、思わず顔を赤くしてしまう。

車はポアロに向けて走り出し、パワーウィンドウを開いて消臭剤の臭が外へ流れ切ると、今度は車いっぱい、零君の香りが広がった。

大好きな零君とこんな風に一緒に居られるのが夢みたいで、思わず笑が溢れる。


「…どうした?」

「なんでもないよ。今日は蘭達と出掛けるから、私もポアロで降りるよ。」

「ああわかった。…そう言えば三月から受け取った組織のメモリーカードだが…」

「何かわかったの!?」

「解読は進んでいるがもう少し掛かるとのことだ。」


1体その中にはどんなデータが…にしても、何故ベルモットはそれを破壊せずに私に渡したのだろう。
考えているうちにポアロのすぐ側にあるパーキングへと到着した。

「三月、着いたぞ。」

「うん。ありがとう零君。」

車を降りて人ごみに溶け込めば零君はたちまち安室透に変わる。
零君と呼べる2人の空間が名残惜しくてなかなか助手席から降りれないでいると、零君は私の肩に手を置くと引き寄せ口付けた。


「んっ…」

「…きっと今お前と同じ事考えてる。」


三月の考えてる事なんてわかるよと微笑む零君が愛おしくて今度は私からもキスをした。

ちゅ…ちゅ…とリップ音を鳴らしながら何度も唇を重ね会う。
私達はまた明日会えるとは限らない。
お互いを確かめ合うようなキスに2人ともが夢中になっていると、突然車の外からドサッと何かが落ちる音がした。
私達は瞬時に身体を離して音のした方向へ顔を向けた。




「あ、安室さん…三月…」

「み〜ちゃった。」

「ら、蘭……」

「園子さん…」

そこには蘭と園子の姿があった。2人ともこちらを凝視していて、蘭の足元には彼女のカバンが転がっていた。
まあつまり…さっきのアレを見られてしまったと言う所だろう。
園子に関してはニヤニヤとこちらへ詰め寄ってくる。


「やっぱり、三月と安室さんはデキてたのね!!車の中であんなに熱いキスを…!!」

「ちょ…!園子!!」

「ご、ごめんね三月、安室さん…私達たまたま通り掛かって…見るつもりじゃ…」

「なーに言ってるのよ蘭!そう言ってる割にじーっと見てたじゃない!」

「え、もしかして結構前から見てた…?」


最初に安室さんがアンタにキスする所からずっと見てたわよ!
声を張り上げる園子に気を失いかけると私はそのままポアロまで連行され、零君のバイトが終わるまでずっと2人に問い詰められるのであった。








1部end













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