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「追ってこないって事は振り切ったようね…」

「流石赤井さん!」

「キャメル…戻れ…。三月、覚悟は決まったか…」

「そんなのとっくに決まってる。」

「な、何?どういう事?」

「ふ…そのうち分かるさ。取り敢えずもう1度お前は隠れておけ。全て話終えるまでな。」

「了解。」


そう言うと私は再び赤井さんの真横、後部座席にて黒いシートを被った。



キャメルさんにそう指示を出した赤井さんを乗せた車は大人しく走行不能となった車のある場所へと戻っていった。

そう、これで終わりではない。
仕上げがまだ残っているのだから。
…さて、タネ明かしと行こうじゃないか…零君。




「大丈夫か?」

「あ、赤井…!」

「悪く思わんでくれよ…仕掛けてきたのはあんたらの方だし…ああでもしなければ死人が出る勢いだったからな…そこで提案だが…今、あんたが持っている携帯と…さっき発砲したこの拳銃…交換してはくれないか?今ならもれなく、オマケもつくぞ?」


交渉は上手くいったのだろう、赤井さんは電話口に話しはじめた。



「久しぶりだな…バーボン。いや…今は…安室透君だったかな?」

通信機越しに零君の息を呑む声が聞こえる。


「君の連れの車をオシャカにしたお詫びに…ささやかな手土産を授けた…楠田陸道が自殺に使用した拳銃だ…。入手ルートを探れば何かわかるかも知れん…ここは日本…そういう事は我々FBIよりも君らの方が畑だろ?」

『まさかお前、俺の正体を!?』

「組織にいた頃から疑ってはいたが…あだ名が「ゼロ」だとあのボウヤに漏らしたのは失敗だったな…降谷零君…。」

『…!!』

言い当てられてしまった零君は黙ったままだ…


「恐らく俺の身柄を奴らに引渡し…大手柄を上げて組織の中心近くに食いこむ算段だったようだが…これだけは言っておく…目先の事に囚われて…狩るべき相手を見誤らないでいただいきたい…君は、敵に回したくない男の1人なんでね…それと…彼の事は今でも悪かったと思っている…」

…彼?彼って…誰…。


「ああ、それとそのへんで女子高生を拾ったので保護して無事に家まで送り届けて欲しい。まあ、オマケだと思ってくれ。」

『…はあ?』

「それと、君達が欲しがっている物を持たせてあるから彼女から受け取るといい。」

赤井さんはそう言って私を覆い隠していたシートを捲りあげた。


「やっとですか。」

「ああ、降りてくれ。」

「き、君は…!!」

バタン、車から降りてドアを締めるとそこから離れようとする私の手をジョディさんが掴んだ。

「ど、どういう事なの…!?なんでこの子が降りて…ねえ、シュウ!」

「大丈夫だ。手を離せ、ジョディ。」

「そんな事言っても…。」

「ジョディさん。私は大丈夫ですから…。」


微笑みかけるとジョディさんは息を呑みながらゆっくりとその手を離した。


「よし、キャメル車を出せ…。」


赤井さん達を乗せた車は再び峠を降りる道へと戻っていった。


「ど、どういう事なんだ…何故君が…。」

降りた先には動揺した小林さんがいた。流石にあの車に乗り合わせているのは予想外だったのだろう。

「小林さんもいらしてたんですね。」

「詳しい話はまた後日…それより、これ、欲しいんですよね。父さんの残したメモリーカード。」

「どうしてそれを…」

「これは父さんがあなた達に残したデータ…当然暗号解読が出来るのは父さんが所属していたゼロ…警察庁警備企画課だけ。」

「…なら、メモリーカードを渡してくれるな?」

「はい、ただし、私もその中身を知りたいんです。…父の追う組織の情報が。」


私の言葉に小林さん達はゆっくりと頷いた。
それを確認して私は服のポケットからメモリーカードを取り出すと小林さんに手渡した。


「…時期に降谷さんがここへ来る。それまで待っていなさい。…風見、車の中に彼女を。」

そう小林さんに呼ばれてはい…と返事をしたメガネで長身の風見という人は「降谷さんがくるまで助手席にどうぞ…」と私を車に乗るように促した。



それからこの場に白いRX-7が到着するまでは早かった。
バタン、と乱雑に開かれた運転席の扉からは息を乱した零君がこちらへ走り寄ってきた。
思わず私は助手席から降り、彼の前に立つと、そのままこちらへ走ってきた彼の腕の中に閉じ込められてしまった。


「あ、あの…安室さ…」

「…無事でよかった。」

「……。」


零君はそっと私を離すと車を撤収するように部下に指示し、私を今度は彼の車の助手席へと促した。









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