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「すみません、ジョディさん…未成年の私だけでは退院手続きが出来ないもので…」

「いいのよ。…でも本当に送って行かなくていいの? 」

「はい。駐車場に単車を置いてあるので…。ありがとうございました。」

「そう、ならいいんだけど…じゃ私達、いくところがあるから…」



ジョディさん達と別れるとスマホの電源を入れる。
画面には新着メールが1件。



「あ、赤井さん…!良いんですか、変装もせずに…。」

「大丈夫だ。組織の奴らはこの付近には来ていない。」

「…で、私はこれからどうしたらいいんですか?」

受信メールにあった通りに病院の駐車場へ出ると沖矢昴の姿ではなく、変装を解いた姿の赤井秀一がキャメルさんの車に寄りかかり私を待っていた。
周囲にジョディさんやキャメルさんの姿はない。



「では手始めに…携帯をマナーモードにして…一緒にこの車に乗ってもらおうか…ただし…」

「ただし…?」

「この車の主達には気付かれんようにな。」








「ら、来葉峠?」

私と赤井さんが後部座席に潜むキャメル捜査官の車は助手席にジョディさんを乗せて走り出した。
恐らくジョディさんは赤井さんの死体すり替えトリックに気付きかけている。


「ええ、行けばなにかつかめる気がするのよ…」

私と赤井さんは車に揺られながら工藤邸の音が聞こえる集音機を阿笠博士に改造してもらったワイヤレスイヤホン型の通信機に耳を傾ける。


『ミステリーはお好きですか?まあ、単純な死体すり替えトリックですけどね…。』


予定通り零君は工藤邸を訪れた。本当の仲間を引き連れて…。
しかし、流石FBI捜査官。こちらの車内では工藤の仕掛けたトリックを段々解いていっている…


「…少し、飛ばしますよ。」

「え?」

「後ろから妙な車が数台…つけて来ているんでね…」


そう言うとキャメル捜査官は車のギアを上げた。
私と赤井さんは暗い中目配せすると、ニヤリと笑い合う。

来たのだ。別に動いていた彼の本当の仲間が。
目的は赤井さんと深い間柄であるジョディさんやキャメルさんを捕らえるため…そしてそれを赤井さんを釣る餌に…
しかし、いくら目的の為とはいえこんな事…
おそらくその指示を出したであろう安室さん…零君は赤井さんの事で熱くなっていて周りが十分に見えていないのだろう。
ポーカーフェイスを装っていても彼は何処か焦っている。
だから昨日はベルモットを好きに動かせ私を危険な目に合わせた…そう考えると納得が行く。
まあベルモットの事だから、私の事は話していないのだろう。

しかし、零君の推理を聞いていて改めて分かる工藤の頭のキレの速さ…そしてそれに乗った赤井さんの度胸…それを推察する零君の洞察力…私のような奴が果たしてこの場に居合わせて良いのもなのだろうか。



追っ手の車を振り切ろうと走るこの車…前の2人の話だとタイヤがエア漏れを起こしていていつ追いつかれてもおかしくない状況…
そして、イヤホン越しの素晴らしい推理ショーもいよいよ大詰め。

赤井さん…出るならそろそろじゃないですか?




「屋根を開けろ…」



「…え?」



「開けるんだキャメル…」


車の屋根が徐々に開いていく。
それと同時に後部座席に映し出されたのは腕を組みそこに堂々と居座っている…


FBI捜査官…赤井秀一



「シュウ!!」

「あ…赤井しゃん…!」

「私もいますよ!」

「え!?三月ちゃん!?」


さて、追っ手の車も後部座席から振り返る赤井さんの姿を確認したのか、少しスピードを緩めた。



『あ…赤井が!?赤井が車に乗っているだと…!?』



「どうやら向こうも気付いたようですね!」

「ああ。このカーブを抜けたら200mのストレート…5秒だキャメル。」

「え?」

「5秒間ハンドルと速度を固定しろ…このくだらんチェイスにケリをつけてやる…」

「りょ、了解!」

「…っていうかあんた何処で何やってたのよ!何で車に乗ってるわけ…!?それに三月ちゃんも…」

「全て思惑通りだよ…あのボウヤのな…コイツはただのオマケだ。」

「失礼な。」


車はいよいよ200mのストレートに入る。



「無茶よ!タイヤのエア漏れで車が揺れているのに、拳銃の照準を定めるなんて…!!」

キャメルさんがカウントダウンするなか、拳銃を構えた赤井さんは余裕そうに笑う。

ストレートの終わり、車が正面のガードレールにあわやぶつかってしまうかというタイミングで、赤井さんはついに弾丸を撃った。

その弾丸は追っ手の車のタイヤに見事命中、その場から動けるわけもなく追っ手からの追跡は止まった…だが、まだこれで終わりではない。






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