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「…え?退院を1日見送る?」

「はい、担当医から赤崎さんに伝えてくれ、と。」

「そ、そうですか…」


私の病室を訪れた看護師はそう私に言い放った。
おかしい、普通、こういう大切な話は直接医師から患者へ連絡するものではないのだろうか。
疑問に思いつつも私は看護師さんと二三会話を交わす。
…この人は大丈夫。ベルモットの変装の線を怪しんだけれどそれはない。私の考えすぎのようだ。


取り敢えず退院が伸びた事を安室さんに伝える為に電話をかけるも彼には繋がらない。
仕事中だろうか。メールを打つと返事はすぐに来た。メールではなく、電話で。


「あ、もしもし…」

『すみません、どうやら探偵の仕事の依頼主が事件に巻き込まれたみたいで…警察に呼ばれてるんです。だからその、しばらく電話は…』

「あ、そうですよね…すみません。」




警察沙汰になる前になんとかするのが探偵…と言いたいところだけれど、毛利探偵もとい、江戸川コナン名探偵、斯く言う私も数々の警察沙汰に巻き込まれているようなので偉そうな事は言えない。
探偵ってそういうものなのだろうか。
警察に呼ばれたと言う事は電話はしない方が良さそうだ。
…そう思って何気なく集音機のスイッチを入れると、今まさに



『仕方ありませんよ…彼女にストーカー被害の依頼を受けていたんですから…』


電話をしていた相手の…安室さんの声が聞こえてきた。
工藤…また事件に巻き込まれて…。
病室に戻り、つけっぱなしだったテレビを消してそっとイヤホンに耳を傾ける。



『そちらの2人は…英語の先生ですか?』


どういう状況だろうか…
情報もなしに英語の先生か…と安室さんが訪ねたところを見るとその2人はきっと外国人…そして“先生”と聞いたという事はおそらく事件に巻き込まれた彼の依頼人は教師、または今いる場所が学校…もしくはその両方。


『あ、いえこの2人はFBIの方たちで…訳あって捜査協力を…』


え、FBI!?工藤もそこにいるという事はそのFBIはジョディ捜査官とキャメル捜査官という可能性が高い。何しろ2人は休暇で日本に観光に来ているFBIのカップル…という設定なのだから、身を明かしていても不自然ではない。

そして、2人は真実を知らずに安室さんが組織の幹部でバーボンだという事を知っている…
工藤に私が聞いていることだけでも伝えようとメールの画面を開く。

それにしても安室さん、やたらとジョディさん達に噛み付いているけれど…やけにしつこい気がする。
日本の国家警察である公安だからこそ、日本に踏み込んできているFBIに対抗心を持つのは分かるけれども…それ以上の何かが、何かがありそうな気がする…。

…まてよ、赤井さん確か前に…


『 奴は俺が組織にいた頃から俺の事を敵視していた。その執念から俺の死に疑問を持ち、俺に繋がりのある者の近辺を調べているようだ。』


って、言っていたはず…FBIにすら敵視を向けるような何かが2人の間にあったとでも言うのだろうか…。


…それにしても、安室さんの声が大きくなるにつれて、少し盗聴器で拾った音に雑音が…ほんのわずかだけれど。


『ねえ、ちょっとゼロ…いや、安室の兄ちゃん…』

工藤?その時、雑音は、より一層強くなった。
もしかして、安室さん、あなたも盗聴器か何かを隠し持っている…!?


『安…の…ちゃん…さ…』

だめだ、全然聞こえない。
工藤、待って…!その盗聴器が本当にそうなら、言ってはいけない…!零君の正体を…!!


ピピピ…ピピピ…

その時、再び私の携帯がなり始める。しまった、マナーモードにしてない…画面をみると非通知と表示されていた。

不審に思いつつもその場で通話ボタンを押す。



「…もしもし。」

『Hello coolgirl。』

「…ベルモット。」


やはり…では安室さんの持っている盗聴器を聞いているのももちろんベルモット…そちらの盗聴器にもノイズが走っから私が怪しまれたと言うことろだろうか。


『あなたも懲りないわね。まさか入院中に盗聴器を隠し持っていたとは。』

「私の部屋を調べたんですよね。看護師になりすました時に。残念、隠し持ってたんですよ。」

『あ、そう。それは別に良いんだけど…あなたに今出てこられると少し厄介なのよね…だからその黒いイヤホンを外して病室から出ないで貰えるかしら。』

「…!」

何故私が黒いイヤホンをしている事を知って…!まさか、とこかで見ている?

『あなたの病室を調べたという事はその時に何かを隠していても別に不思議ではないわよね?』

「しまった、隠しカメラが…!?どこに…」

『探さない方が身のためよ。もしあなたが今からカメラを探したり、他所に電話をかけたりこの部屋から出ると…ナースステーションが吹き飛ぶわよ。もちろんナースコールも禁止…というかそれ、壊れてるから。』

「何…!」

『心配しないで。後1時間そうしてくれているだけで充分だから…。時間が過ぎればカメラを探すなり爆弾を探すなり好きにすればいいわ。』

「…なんで私が厄介なんですか?…もしかして、コナン君にあなたが関与している事がバレると不味いの?」

『まあ、半分正解ってところね。…じゃ、電話は切るけど、 このスイッチは入れさせないでね?私に白衣のANGELを爆殺する趣味はないのよ。』



…工藤、ベルモットはバーボンと組んで何か情報を得ようとしている筈…くれぐれも気を付けて…。
静かな病室で私は時がすぎるのをただ呆然と待っていた。











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