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「…とにかく、犯人はカップに毒を塗り…須東さんを殺害したのは明白な事実!その毒を入れていた容器や袋が現場であるこの病室のどこからも発見されなかったと言う事は…入れ替わりでこの病室から出たという…あなた方2人のどちらかが犯人と言うことになります。」


いや、違う…そんな事をしたら毒のついたカップが誰かの手に…


「でも度胸がある犯人だよね?だって僕がカップに毒を塗ったら絶対外に出ないもん!」

「そう。席を外した間にカップの紅茶を誰かが飲んだり、入れ替わってしまう可能性がありますから。毒を塗る犯人がそんな危険な真似はしませんよ。」

「た、確かに…三月君とコナン君の言う通りだ…とすると犯人は一体…?」

「…そんなの決まってますよ。」

「1人いるじゃない!堂々とカップに毒が塗れて、そのカップから1度も目を離さなかった人…だよね?ゼロの兄ちゃん!」


工藤は安室さんを見据えてニヤリと笑う。
…工藤、いつかは気付くとは思っていたけれど…流石名探偵。
おそらく工藤はさっき安室さんがゼロという言葉に動揺を見せた事から彼が公安ではないか、という事を察している。
父からヒントを得た私とは違って彼は全くのノーヒント…まったく…適わないな。

「ええ、コナン君と三月さんのヒントでなんとなく…。その人物は事前に毒を塗ることも、その毒の容器を捨てる事も出来…犯行当時この病室から一歩も外に出ることなく…毒を塗った自分のカップを被害者の物とスリ替えるチャンスを虎視眈々と狙っていた人物…それは高坂樹理さん…あなたしかいませんよね?」


そう、毒は最初から病院に持ち込んでいて、部屋の外かどこかへ捨てた…
あとはカップを左手で取らないように気をつければ自分が毒を口にすることはない。


「樹理が飲んでいたのは青いハーブティーで、伶菜が飲んでいたのは赤いハーブティー…!いくらレモンが浮いてたからって取り違えるわけないじゃない!」

「そう、このレモンこそが…このトリックの肝だったんですよ。」

「肝…?」

「…では、検証と行きましょうか。みなさん、コナン君の持つコップに注目を。」

私は工藤の持つコップを指さす。お湯を注ぐとカップの中身は真っ青に染まる。バタフライピーだ。

「コラ!また勝手に現場の遺留品を…!」

「さっき病院でもらったお湯だよ!このレモンもね!」

「そう。この青色のバタフライピーに…コナン君。レモンを入れてくれるかな?」


わかったー!と工藤は青いハーブティーの上にレモンを浮かべる。
そう、肝はレモン。

「あれれ〜!おっかしいぞ!!」

「(相変わらず態とらしい…)」

「レモンを入れたらどんどん赤くなってるよ!!」


そう、レモンの酸性に反応したハーブティーが変色したのだ。
そして、当然酸性で赤くなると言う事は、高坂さんがカップを磨くのに使っていたというアルカリ性である重曹を加えると、再び青に戻る。

安室さんはそれを実践し、事件の流れを説明する。
そして最後に決定的な証拠である、被害者のカップに付いていた口紅を拭った親指を工藤に指摘され、高坂さんはついに犯行を認める事となる。




無事事件が解決したところで、病院内を散歩がてら警部や工藤達を外まで送る事にした。
安室さんも今日は用事があるので帰るらしい。


「…それにしても、ノイローゼで流産したとは…流石に今回は同情してしまいますね…。」

高木刑事はスッキリしない顔で空を見上げる。

「だからと言って人を殺していい理由にはなりませんよ。刑事さんが何いってるんですか、高木さん。」

「ははは…。でも女性にとって流産となるとやっぱりショックなんだよね?」

「…さあ、私は子供を産む立場に立ったことがありませんから…でも、私なら許します。」

「ええ?」

「最初から本当に大切な友人だからこそ、はっきり言えば良かったんです。腹に溜めずに。言わない優しさとストレスを溜め込んで我慢する事は違いますから。」

そうだ、今日の被害者だって高校時代からの友人なのだったら傲慢な部分をハッキリと指摘していればこんな事にはならなかったのだ。
言わずに我慢する事は優しさではない。言わなければ一生分かり合えない事だってあるのだから。


「三月って、ホント真っ直ぐだよね…。」

「蘭も人の事言えないよ。」

「ですね…本当に赤崎警部にそっくりだ…。」

「なんたって私は、母さんの子ですから。」

誇らしげな顔で高木刑事に笑いかけるも、彼は少し気まずそうに私から視線を外してしまう。
彼もまた母の部下の1人だったので、母の事を思い出してセンチメンタルになってしまったのだろうか。









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