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「…でもなんで被害者は左手に…」

「右手が何かでふさがっていたからですよ…」

「例えば携帯電話の写真を見ていたとか…そう、人は何かに夢中になるとその他の事が疎かになる…たとえ、カップの位置や取っ手の向きが変えられていても気付かずに取ってしまう…その心理を利用して犯人は被害者に毒を飲ませたんでしょう…」

「…つまり、スリ替えトリック…。気付かれずに被害者のカップに毒を入れるより、自分のカップに毒を入れてスリ替える方がローリスクですから。」


しかし、問題はカップの中身…紅茶の色は全てバラバラ、しかも被害者のティーカップにのみ、レモンが浮かべられていた。

犯人はどうやって紅茶のスリ替えを…?


事情聴取の様子を私と工藤は病室のカーテンの隅に潜んで見ていた。

どうやら3人とも動機はある様だし、全員自分のティーカップに口を付け、紅茶を飲んでいるらしい。


「青いバタフライピー、赤いハイビスカスティー、茶色いペパーミント、黄色いカモミール…なあ赤崎、お前、紅茶は詳しいのか。」

「からっきし。父さんも母さんもコーヒー派だったし、家に紅茶はあんまり置いてなかったからなあ…。」

「お前紅茶って感じじゃねぇしな…。」

「…そういう工藤もね。」




「…2人で何の話ですか?」

「…!!」

「…紅茶が好きかどうか…って言う話ですよ。安室さん。」

安室さんが私たちの方を不思議そうにのぞき込みながらそう問いかけてくる。
…もしかして、工藤って呼んだの…聞こえてない…よね?

「そうそう!三月お姉さんは紅茶なんて飲まないんだってーー!それよりさー、みんなでお茶を飲み始めてから部屋から外に出た人っている?」


「え、ええ。私と時枝が入れ違いで一度ずつ…樹理と伶菜はずっと部屋にいたと思うよ…伶菜がポットにお湯をもらいに行っていたみたいだけど…あれは私と時枝がここに来る前だし…」

「じゃあ、あのティーカップもその時病院から?」

「いいえ、あれは樹理のカップよ!重曹を使ってピカピカに磨いてるって言ってたし…」


重曹…油を分解する成分があり、クレンジング効果もあるので掃除によく使われ…口内を清潔に保つ重曹うがいなんてものもある…まあ、紅茶好きならカップにアカが沢山付くだろうし持っていても問題は無い…か。

そして、どうやら毒がついていたのは紅茶ではなくティーカップ…まあ、毒を入れる隙も無い中紅茶に毒を入れる事もリスクが高い、まあ何より現場で毒物を入れた容器は発見されなかったようだし…


「コラ!何してるのよもぉー!さがしちゃったじゃない!」

「ら、蘭…」

「三月もいたの…!?もう、勝手にコナン君を連れ回さないでよね!」

「あ、いや…成り行きっていうか…はは。」

「ほら、もう帰るよ!」

蘭はそう言って工藤の手を引くが、工藤はその場にぐっと押し留まる。


「あ、でも事件が…」

「事件って…さっきパトカーのサイレンの音してたけど…まさかこの病院で何かあったの?」

「病院で見舞い客を毒殺…で、目暮警部も毛利のおじさんも頭を抱えているけどもう少しで何か分かりそうなんだよね。…ね、コナン君。」

「そ、そう!三月姉ちゃんの言う通りだよ!」

「三月…そうは言ってもね、ほらコナン君、窓の外を見てみて…青いお空が真っ赤になっちゃってるでしょ?子供は帰る時間なの。」

…え?

「蘭…今なんて…?」

「え?だから、青いお空が真っ赤に…」


青が赤に…!!そうか…そういう事か…!
工藤と思わず顔を見合わせお互い笑みを浮かべる。
その様子だとどうやら工藤もトリックがわかったようだ…。

そして勿論…今の会話を聞いていて私達と同じ顔で空を見ている安室さん…いや、零君、あなたも当然…!


「だから事件はお父さんや警察に任せて……って!ちょっと…!!」







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