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「この調子だと、明日には退院できそうですね。」

「ありがとうございます。すみません…二度もお世話になるなんて…」

「いえいえ、傷口が開いたと聞いて焦りましたが、大事に至らなくて何よりでした。直ぐに傷口を服で押さえたのは良い判断でしたね。一緒に来ていた彼が?」

「あ、いえ…あの人ではなくて…」


あの時自分の上着を脱いで私の傷口を押さえてくれた工藤を思い出しながら、そう言えば上着を返さないと…と思っていた私は、病室の外に見えた小さな影に目を見張った。

…工藤?それと、毛利のおじさんも…。
先生にお礼を言うと、少し外へ出ます、とだけ言って患者着の上にパーカーを羽織って私は2人を追い掛けた。


「コナン君!それと、毛利さん!」

「おお、三月ちゃんか!…ってどうしてここに?患者着なんて着て…確かもう退院した筈じゃ…?」

「あ、ああええと…そのつもりがまたコケちゃって悪化したんだよね?三月姉ちゃん!」

「じ、実はそうなんです…お恥ずかしい…。」


工藤…フォローは助かるけど、それだと私がほんとにドジっ子になるじゃないか…


「そりよりどうして毛利さんはここへ?」

「ああ、女房が盲腸で入院してな…」

「そうなんですか…!具合はどうですか?」

「全然元気だよ、さっきだって無理矢理部屋を追い出されちまって…それより、三月ちゃんは大丈夫なのか?」

「はい、明日には退院できそうです。」

これも工藤のお陰かな…と毛利さんの隣に佇む工藤の頭をわしわしと撫でる。
嫌そうな顔でこちらを見てくるが気にしないことにした。



「あれ?毛利先生じゃないですか!何してるんです?」


その声に弾かれるかのように私達がそちらへ振り返ると後ろには安室さんが立っていた。

「三月さんも、病室にいないから探しましたよ…。」


…工藤、警戒するのはいいが、顔に出し過ぎ…唯でさえ目を付けられているというのに…。

「どこか具合でも悪いんですか?」

「ああ、ちょっと女房がな…お前は何でここに?」

「三月さんのお見舞いと、序に知り合いが入院してるって聞いて見舞いに来たんですが…いつの間にかいなくなったみたいで…」


安室さんのその言葉に工藤はいっそう顔を青くさせる。
工藤の隣にしゃがんで大丈夫?と声をかける。
だめだ、動揺しすぎて私の声が届いていない。

それにしても…まさか、この人赤井さんの事、感づいて…


「コナン君は知ってるかな?…楠田陸道って男…」

その名前は、正しく赤井さんが生きている証拠を持ち合わせている男の事…
まずい、真実が安室さんにバレてしまったら工藤の計画が…そして赤井さんが…!

安室さんは是が非でもあの人を見つけ出して組織に突き出すつもりだ…なんとか阻止しなくては…。

「誰?それ…知らないよ?」

…!今の工藤の返し、警戒し過ぎてボロが出ている…
普通名前を聞いただけで即答出来る筈ないし、いくら子供の返答だからって安室さんは工藤の事を…!
思わず工藤の肩に手を置く。


「…すごいね君は。」

安室さんはニヤリと笑った直後、その辺を歩いていた見舞客らしき人達を呼び止めると工藤と同じように質問をした。

「さぁ…どんな方?歳は?」

「その人の写真とかあるかしら?」

そう、普通名前を聞かれると身に覚えがなくとも、こう答える。

「大抵の人は自分の記憶に絶対的な自身はないんです…だから普通はノーという前にその尋ね人の名前以外の情報を知りたがる…君はすごいよ!名前だけで知らない人だと確信出来るんだから…」

工藤の顔に若干の焦りがみられる。
それ以上顔に出してはいけない…耐えろ工藤…
手を置いた彼の肩を少し強く掴んだ。


「ガキの言う事を間に受けるなよ…会った事があっても名前を知らない奴はザラにいるし…あだ名とかでしか知らねぇ奴もいるからよ…」


あだ名か…そう言えば昔、私があだ名で呼ぶと嫌がる人がいたっけ……
でも、誰だったっけ?


「3!」

「2!」

「1!」

「ゼロー!!」

「…!!」

安室さんの立つ後ろにあるエレベーターの前に立つ少年のカウントダウンに私はハットする。

そう、そうだ!その人のあだ名はゼロ!
そう思い視線を少年から毛利さん達の方に移すと目を見開いて動揺している安室さんがいた。

安室さん…確かに公安のコードネームはゼロ…でも、何か…まだ何かあったような…。













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