その後1度扉が開いた際に犯人達の話し声が聞こえてきた。
どうやら成り行き殺人だったらしい。
工藤が扉が閉まったのを確認して高木刑事に連絡を試みるも、電話は繋がらない。
阿笠博士には繋がったが、それと同時に充電が切れてしまった。
「おめえら、持ってるものを俺の前に出してくれ!」
工藤に言われてそれぞれ持っていたものを出し合うと、彼は何か閃いたのか光彦君がもっていたレシートと歩美ちゃんがもっていた綿棒、元太君の持っていたかゆみ止めで何かを始めた。
「あいつらに見られても気づかねえ暗号を作ってやっから…」
成程…このレシートは感熱紙…酸性の発色剤をかゆみ止めに含まれているアンモニア…これはアルカリ性だからそれを綿棒につけてレシートの文字を消して暗号をつくる…
工藤は英字を消すとcorpse…死体という意味のも単語を作った。
「仕上げにこの冷蔵者のナンバーを下に表示されているカード番号や電話番号をうまく消して表せば、この車は死体を乗せてるの伝えられるってわけさ…」
「すごーい!」
工藤はそれを大尉の首輪に括りつけると大尉を離した。
「大尉はきっとポアロに行くはずだ…」
「ね、ちょっと、あのこ、ポアロに行くってことはあの暗号、あの人も…」
「逆にあの人に見せるためにあんな暗号にしたんだよ…」
そう、あんな暗号に気付く人なんて、安室さんくらい…。
安室さんが暗号に気付いてここまで来てくれると信じている工藤に私は少し頬を緩ませた。
哀ちゃんは警戒しているようだけど…。
「…!ねえ、く…コナン君。この荷物、博士の家に届くケーキじゃない?」
「…!でかした!今日はあの人は家にいるはず…」
「うん。あの人ならきっと…」
ケーキの入ったダンボールを手渡すと、工藤は宛先に工藤様方、と付け足した。
これでこの荷物は博士の家でなく赤井さんのいる工藤家に届くはず…!
赤井さん…気付いて…!
ケーキを取り出した宅配業者はもう1度扉を開くと小さな荷物をトラックに投げ入れる。
赤井さんが集荷を頼んだんだ…とするとその中身は…
思った通り、携帯が入っていた。
「安全かつ確実に奴らを捕まえるには…直接俺の口から警察に状況を伝えた方が…」
「そんな事させるかよ」
工藤が携帯に手をかけた瞬間、再びトラックの扉が開かれた。
どうやら、ついに気付かれてしまったらしい。
「さっきと荷物の配置が微妙に変わっていたから一応覗いて見たら…あの猫の他にこんな泥棒猫が6匹も忍び込んでいたとはな…」
「そ、それでどーすんだよ、この子供達…」
「決まってんだろ?携帯を取り上げてこのままここに閉じ込めて凍死させるんだよ!…さあ、携帯をだしな。」
「…コナン君、私が持っていく…」
「な、何言って…」
「もしもの時は頼んだ…」
そう言って私は工藤から携帯を奪い取ると宅配業者へ近づいていく。
くっ…寒さで身体が思うように動かせない…
「よし、そのまま渡せ…。」
「…はい。」
そう言うと私は携帯を後ろにいる工藤へ投げ、宅配業者に飛びかかった。
「お、おい!?」
「コナン君!!はやく警察に連絡を…!!」
「くそっ!この女…!」
工藤が警察に連絡するまでの時間が稼げればそれでいい…!
体制を立て直した業者の男に引き剥がされるとそのまま私は荷台に突き飛ばされてお腹を脚で踏みつけられた。
…!!ま、待ってそこは…!
「ぐっ…!!」
「三月さん!!」
や、やば…この間の傷口が開いて…血が…
宅配業者の男はニヤリと笑って私をトラックの奥へ突き飛ばし、工藤から携帯を奪おうとした。
もう、ダメか…!
そう思った時だった。
突然、外から車のクラクションが聞こえたのは。
「すみませーん!この路地せまいから…譲ってもらえますか?」
この声、あ、安室さん…!!来てくれたんだ…
すかさず元太君達が扉へ詰め寄り安室さんへ助けを求めた。
「た、探偵の兄ちゃん!!助けて〜!!」
「はやくしないと、三月さんが…!!」
「…!三月さんも中に!?」
「この人達に倒されちゃって、お腹から血が…!」
「…!」
荷台の奥で寝かされ、工藤に服で傷口を押さえて貰っている今の状態では、安室さんがどんな顔をしているのかはわからなかった…でも
ドカッ!!
「言ったでしょう?傷付けたくないから譲ってくれと…まあ、三月さんに手を出した時点でそれは無理な相談ですが。」
声が確実に…怒っていた。
「三月さん!大丈夫ですか!?」
安室さんはそのままもう1人も気絶させると荷台へ乗り込み、私を抱え上げる。
「なん…とか…。」
「さあ、はやく病院に…!コナン君、三月さんは僕の車で送っていくから、君は警察に連絡を…!」
「う、うん…頼んだよ…安室の兄ちゃん…。」
そのまま安室さんの愛車の後部座席に寝かされ、白いRX7は発進した。
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