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小林さんと約束をした3日後、警察庁に着くと彼は入口前で待っていた。
私に気付くとお互い軽く会釈を交わす。

「こんにちは。無理を言ってしまい、申し訳ありません。」

「いえ、我々も赤崎さんの私物は娘さんに預かってもらうべきだと思っていましたから…」


小林さんはそう言うと、詳しい話は喫茶店に行ってから…と、警察庁から遠ざかるように私を車へ促した。
流石に中には入れてもらえない…か。
一応警戒はされているようだ。
メモリーカードの件を考えると、この人は恐らく私が拳銃で撃たれた事、組織のメンバーと接触した事やFBIと繋がりがある事を知っている。
さらにメモリーカードを所持している疑いがあると見られているに違いない。

父やこの人の正体を勘づいている事をこの人に悟らせてはいけない。
何もしらない、ただ巻き込まれた仕事仲間の娘を演じる必要がある。


喫茶店に着くと好きな物を頼むよう促され、注文が終わると遺品の入った大きな紙袋を手渡される。

「中身は我々も見ていない。元々赤崎さんからは自分の娘に預けるように言われていたもので…。」

「…そうでしたか。…今、少し中身を確認させて頂いても?」

「ええ、構いませんが。」

袋の中身を大雑把に見ていくと、予備のスーツや筆記用具等、特に変哲の無いものが入れられていた。
流石に職業を匂わせるものは省かれているか…。
その中から、カサ…と何か紙のような物を見つけ、取り出してみると、1枚の封筒が現れた。

表面には父の筆跡で三月へと書かれた私宛の手紙だった。

ちらりと小林さんを見てみても彼は全くしらない、とでも言うかのように首を横に振った。


「ありがとうございます。持ち帰って改めて見てみます。」

「ええ。…それと、あなたにいくつか聞きたい事が…。」

「…何でしょうか。」


多分向こうは私の事を警戒している。
こちらも確り警戒しているとはいえ油断ならない。
ゴクリとつばを飲み込んで、彼からの質問を待った。


「貴方はなんでも、高校生探偵だとか…。」

「…そんな大層なものではありませんよ。ただの高校生です。」

「そうですか…いえ、ね。あなたがこの間この付近のゲームショップで起きた殺人事件を見事解決したと聞いたもので…。」

「それは…」


誰から聞いたのですか?
その言葉を思わず飲み込む。
両親が死んでからというもの、警察には私の事は他に漏らさないようにしてもらっている。
私があの事件に関わった事は警視庁捜査一課しか知らないはず…誰か知り合いの刑事にきいたのか…
それか、あの近辺にいたのか。
もしこの人達が父に言われてあの日、あの店に並んでいたとするならば、私が店内に入っていくのも見た、という事になる。


「たまたま友人と近くを通った際に捜査一課の方とお会いしたんです。」

「そうだったのですね。そう言えばお母さんは捜査一課の警部さんでしたね。」

「はい、昔から母の関わる事件によくついてまわっていました。」

「あなたのお母さんは大変洞察力に優れた、優しい方でしたから…似たのですかね。」

「…そうだといいのですが…。」

「そういえば、あの事件、何でも犯人が逃亡したとか。」

「そうなんです。私も追いかけたのですが、裏路地に入られてしまって…お恥ずかしい話、階段から落ちて気絶した挙句、全身打撲で入院するハメに…」


入院した事について触れても彼が病院に来ていたことを打ち明けることはなかった。
やはり、彼は何もこちらに情報を与えるつもりはないらしい。

時計を気にし始めた小林さんを見て、そろそろタイムオーバーか…と思い、お礼を言うと私は再び、彼に警察庁前へ送ってもらった。


「今日はお時間を取らせてしまって、すみませんでした。」

「いえ、また何かありましたらいらしてください。身体の方もお大事に。」






結局わかったことと言えば彼が私に探りを入れていたということ…恐らくメモリーカードについてだろうか。

取り敢えず、この父からの手紙に何かがあるに違いない。
その足ですぐ自宅へ戻ると私は手紙の封を切った。








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