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「…それで、ゲームソフトの件だが、売り元の名義はお前の父になっている。」

「やっぱり…見たことあるようなゲームだと思っていたんですが、多分あれ私の物です。…確か、ゲームを売るには身分証明書が必要でしたよね。」

「ああ、コピーを見せてもらったが、お前の父の免許証で間違いないようだ。本当にお前の父が売った物か、それとも…」

「組織の…例えばベルモットが変装、免許証を偽装して売却したか…ですかね。どちらの可能性もありますね…最も、日付次第ですが。」


流石の組織の連中でも売却日時は店で管理する以上、変更する事は出来ないはず…肝心なのは、そのゲームが父が死ぬ前に売られた物なのか、はたまたその逆なのか、という事。
こっそりコピーを取ってもらった書類を見せてもらう。
と言うか赤井さんこれをどうやってこっそりコピーしたと言うのですか…

売却した日付は父の生前になっている…それに


「この筆跡…父の物です。」

筆跡を真似ることは出来ても偽物なら私はすぐに分かるだろうし、記入するのに手間取っていれば店員も不審がるだろう。



「では、あのメモリーカードは父親が?」

「そう見て間違いないでしょう…。」

「ああそれと、どうやらこのソフト、売り出し日の指定があったらしい。異例のケースだから店員が確りと覚えていたよ。」

「…誰かに回収させやすくするため…という事でしょうか。」

「ああ、多分な。そして俺以外にもその話を聞きに来ていた人物が、事件前にいたらしい。」

「それが黒ずくめ…という訳ですね。」



腕を組んで目を閉じる。

確かにゲームソフトを売ったのは父で間違いないだろう。
メモリーカードも恐らく集めたデータを父が暗号化した物…
しかし、疑問点がいくつか浮上してくる。

何故、元の家と離れたあのゲームショップで売ったのか。
その売ったゲームショップは本来誰に回収して欲しかったのか。
父さんはあのメモリーカードが組織に狙われていた事を知っていた…?だから、誰かに自然に回収して貰えるようにショップに、しかも売り出し日を指定してまで隠した。

そして、暗号化したのが本当に父なのだとしたら、回収すべき人物が暗号の解き方を知っていると見てほぼ間違いない筈。


「…赤井さん。何の根拠もありませんが、私の予想が正しければ、あのメモリーカード、解読するのはFBIより適任がいるかも知れません。」


ほお、と赤井さんも何かを察したようにニヤリと笑う。

あのメモリーカードは今、自分達が追いかけているとある組織との取引を行うに当たってのキーアイテムになるのかもしれない。

そして、その行き着く先には彼が…安室さんがいる。


「取り敢えず、メモリーカードはそのままFBIが持っていてください。必要とあらば私が貰い受けます。多分向こうも、アレがこちらにある事は勘づいている筈ですから。」

「まったく、何時もながら恐ろしいお嬢さんだ…。」

「彼に比べれば私は大した事ありませんよ…ですよね、赤井さん。」

どうだかな…と赤井さんはまた笑った。


「…赤井さん、そう言えば前に私のこと、流石あの人の娘…って言ってましたよね。私の両親と知り合いだったんですか?」

「ああ、両親と言うよりも、君の母親とな。」

「え?母さんですか…?てっきり父さんの方だと…。」

「前に俺が日本で捜査している時に少し世話になってな…。お前とも会った事があるんだぞ?」

「…え?私と…赤井さん?」

「ああ、確かお前は…小学生くらいの頃だったか。」


記憶を遡ってみるもその様な記憶はさっぱり抜け落ちているようで…と言うか赤井さん、何故それを最初に言わなかったのだろう。


「全然覚えてません…。」

「まだ小さかったし、一度だけだったからな。今より大人しくて可愛らしかったぞ。」

「今は可愛くなくて悪かったですね。」

「別にそうは言っていないが。」

「…赤井さんに言われてもときめきません。」

「安室君ならときめくのか?」

「そういう事を言ってるんじゃありません。」

「やはり可愛くないな。」

「赤井さん…?」

「冗談だ。」













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