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「気付かれた?」

『ああ、バーボンの奴、俺の時計型麻酔銃に気付いてるかも知れねえ、伊豆でも俺を試すようなマネを…』

「…で、テニス楽しかった?…お土産は?」

『テニス所じゃねぇ…!って赤崎、俺の話ちゃんと聞いてんのか?』

「聞いてるよ、で、簡潔に用件を言って。」

『だから…!蘭達に赤崎が入院してる事がバレちまって、それがバーボンにもバレて…!とにかく、奴が病院に来るかもしれねえからお前はジョディ先生に言って病室変えてもらえ!今日バーボンはまだ確かポアロで…』

「…いるよ?…私の後ろの方で蘭達と。」

『な、何いいいいいい!?』


だから聞かれても怪しまれない内容で先程から対応をしていると言うのに…
私が今工藤と電話をしているのは病院で共同の通話可能なスペース。
その後ろにはソファの側にテレビや雑誌が置いてあるような休憩スペースがあるのだが、ほんの数分前、見舞いに来てくれた蘭達が売店へ行くと言うので、私も付いていき、ついでに工藤に電話をしたと言うわけだ。ついでに。



「ねーねー、三月、誰と電話してるの?」

「ああ、コナン君だよ。ほら、さっきから伊豆の話してるの。」

「ガキンチョも電話するくらいならお見舞い来ればよかったのに。」

「だめよ。今日は阿笠博士の家に行くって言ってたんだから。ねえ、三月、ちょっと代わって?コナン君に伝言が…」

蘭はソファから立ち上がると真っ直ぐにこちらへと歩いてくる。
ま、まずい…スマホの通話画面には大きく工藤新一と表示されているのに、蘭にコナン君と電話をしていると言った矢先にこの画面を見られるわけにはいかない…
工藤との会話は途中だったけど、止むを得ず、私は通話終了ボタンをこっそりとタップした。

ピッ


「あ、あーごめん蘭…通話、終わっちゃった…。」

「ええー!…じゃあ私からかける。」

ああもう、次からはコナンの方にかけるか…と工藤に電話している蘭をみながら園子達の方へ視線を移した。

「…それにしても、犯人を追い掛けて階段から落ちて身体を打つなんて、三月って案外ドジっ子なのね。」

「(言ってろ…)そうなんだよね…!でも頭打たなくてよかったなあ!」

蘭や園子達には打撲で入院している事になっている。
拳銃で数回撃たれて生死をさまよってましたなんて…死んでも言えない。
ちらりと毛利さんを見ても彼はどうやら私達の話よりも美人看護師の方が気になるようで、母から聞いていた通りの人だなあ…と思いながら苦笑いしているとその横から物凄い視線を感じた。

あ…

「三月、どうしたの?顔を青くして…。」

「いや…別に…。」

「三月さん、もしかして具合が悪いとか…?」

「え、嘘!大丈夫三月?」

「い、いや、だから別に…」

「病室に戻りましょう。僕が運びます。」

「だから大丈夫です…って!ちょ…!!」


否定の言葉も虚しく、私は軽々と安室さんに確保され、あろう事かお姫様抱っこなるものくらってしまった。
毛利のおじさんはと言うとソファからズッコケ、蘭や園子は予想通り騒ぎ立てている。

病棟の通路は人通りが少ないとはいえ、看護師さん達からの視線が痛い。

やめてください…!と言おうにも安室さんにギロリと睨まれて仕舞えば蛇に睨まれたカエル状態だ。
毛利さん達には気取られていないけれども、駄目だこの人凄く機嫌が悪い…
結局何も言えずに私は自分の病室まで帰ってきた。


「三月、大丈夫…?」

「う、うん。少し休めば楽になるから…。」

苦笑いしつつベッドに横になると、園子が急にニヤつきながら「じゃあ、邪魔者はそろそろおいとましますかね。」などと言い出すものだから飲もうとしたお茶を思わず吹き出しそうになってしまった。


「そうね、三月も元気そうだし。ほら、お父さん帰るよ!」

「え?何言ってんだよ、俺達は来る時こいつの車で…」

「おじ様何言ってんのよ!タクシーで帰るに決まってるじゃない!私の家の迎えを寄越してもいいけど…」

「すみません、毛利先生…蘭さんに、園子さんも。」

「いいんです…!安室さんは三月に付いててあげてけ下さい!」

「ちょ…蘭…!」

「じゃあ三月、お大事にね!またお見舞い来るから!」

「あ……。」


蘭達は颯爽と病室から去っていき、ついに私は不機嫌MAXなこの…黒ずくめの組織幹部、バーボンこと安室透さんと2人きりになってしまった。
会うのは実にミステリートレイン以来だから…一週間くらいだろうか…

あーあ、工藤に会うなって言われてたのに…そう思いつつ彼の顔を見る。

…ああくそ、あまり考えない様にしていたのに、赤井さんがこの間あんな事言うから…。


『 どうやら君は本当に彼に惚れている様だからな。 』


嫌でも自覚しますって…。









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