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ピピピ…ピピピ…


『ああ、わかった…俺も向かう…。』

『父さん、また仕事?私にこれから1人で映画見ろって?』


ポップコーンを片手に私は不貞腐れながら答える。
父の仕事はとにかく忙しい。
たまにこうして遊びに出掛けても直ぐに仕事の電話が入ってどこかへ消えてしまう。


『三月悪い!この埋め合わせは今度…って、お前ももう高校生なんだから、彼氏くらい作れよ。』

『…だって、学校の友達とか、いまいち好きになれないし…』

初恋の人…の件は隠していたものの、恋人がいない事はどうやら父には筒抜けだったらしい。


『優作の所の新一君とか、大阪の服部平次君とかはどうなんだ?』

『興味無い。』

はあ…とため息を付く父に、はやく仕事行きなよと急かす。
いつもはすまない、とその場を離れる筈なのに、今日の父は私に何か言いたげな顔をしていた。


『実はな、お前に是非紹介しようと思っている部下がいてな…』

『部下?その人も警察?』

紹介ってまさか彼氏ではないだろうな…と少しジト目で父を見る。
父は至ってふざけている素振りはなく真剣な顔をしていた。

『ああ、だが会うのが少し難しくてな…合わせるのはあと数年先になるな。』

『ふーん?そんなに時間かけるなんて、父さん、その人の事信頼してるんだ。』

『ああ、俺の自慢の部下だよ…降谷は。』


誇らしげに笑う父を見て私はその降谷さんに少し興味が湧いた。
結局そのまま会うことは無かったけれども。





パチリと私は目を開けた。
また、懐かしい夢を見たものだ。いつも通り起き上がろうと頭をあげようとしたが、突如身体中に痛みが走る。

自分の身体やここが自分の部屋でない事を理解し、自分がどういう状況に遭遇していたか思い出した。
そうか、私はベルモットに撃たれたんだった…。



「気が付いた?」

「…どなたですか?」

コツコツと私が横たわるベッドに近付いてきたのは見知らぬ金髪の外国人女性。
まさか、黒の組織の…!?

「彼女はジョディ・スターリング。FBI捜査官さ。」

「くど…コナン君…。」

彼女の影からひょっこりと工藤が現れるものだから、つい気が抜けて本名を口走ってしまう所だった。
ジョディと呼ばれたFBI捜査官はベッド横のイスに座ると詳しい事情を説明する。


「既にベルモットの姿はなかったけれど、あなたとその横に組織の一員らしき男が倒れていた。…そこにこのクールキッドが呼んだ私達FBIが到着したってわけ。」

「あの、組織の男は?」

「私達がついた頃にはもう、息をしていなかったわ。」

「そうですか…。」


あの時私は佐藤刑事に送ろうと思っていたメールの宛先を工藤に変え、文末に一言、「ベルモットが来る」と付け足した。
工藤は追跡メガネで私の位置を調べながらFBIに連絡をとり、私を回収して病院へ運んでくれたらしい。


「他のFBIにも報告してくるわ。」

「ありがとうございます、ジョディさん。」


ガラガラとジョディさんが病室を出ていくと、その場には私と工藤の2人きりになっていた。


「バーロー!なんでベルモットがくると分かっててあそこへ行ったんだ…!」

「だって、組織のデータが手に入れば何かわかるかもしれなかったし…」

「それでもだ!現にあいつは銃を持っていて、オメエは撃たれただろ!!もう少しで死ぬ所だったんだぞ!」


怒る工藤に何も言い返せない。
彼は私を思って怒ってくれているのだから当然か、言い返すことも謝ることも出来ずに黙り込んでいると、工藤は先程よりも優し目の口調で私に問いかける。


「…それで、お前のポケットに入ってたデータ何だけどよ。」

「暗号だった?」

「なんでそれをお前が知ってるんだよ。」

「ベルモットが読めるかどうかは分からないけれど…って言ってたから。」

「はあ?ベルモットが?」


呆れ気味に工藤は言う。本当にあのベルモットという女は何を考えているかわからない。


「…暗号はいまFBIに解読してもらってる。とにかくお前は休め。」

そう工藤に言われるとどこか安心してしまって、先程まで寝ていた筈なのに、また瞼が重くなるのを感じた。

「工藤…ありがとう。」

「気にすんな。 」








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