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…い

…おい!…っ!

…起きろ!赤崎!



「…!!!」


はっとして目を覚ますと私を必死に揺さぶる工藤の姿があった。側には哀ちゃんの姿もある。良かった、ほっと胸をなで下ろす。

あれ、そういえば私は確か、安室さんに…


「お前、こんな所で寝てるなんて…まさか、何かあったのか!?」

「……なんでもない。ちょっと昨日、ゲームのし過ぎで寝不足なだけ。」

「お前、もうちょっと危機感をだな…!」

「それで、組織のメンバーは釣れたの?」


工藤は、少し言いにくそうに口篭ると、私にイヤホンを差し出した。
つけろ、と言うことで間違いはないようだ。


「お前、何があっても絶対に騒ぐなよ。」


コクンと頷き、イヤホンをつけると少しザザっと雑音が聞こえた後に聞きなれた声が聞こえてきた。


『バーボン。…これが僕のコードネームです。』


「まさか、安室さんが組織の一員、バーボンだったとはな…おい赤崎、大丈夫か。」

「…大丈夫。」


『このコードネーム、聞き覚えありませんか?君の両親や姉とは会った事があるんですが…』


「『ええ…知っているわよ。お姉ちゃんの恋人の諸星大とライバル関係にあった組織の一員…お姉ちゃんの話だと、お互い毛嫌いしていたらしいけど…』」

哀ちゃんがマイクに向かい聞こえてきた安室さんからの質問を答える。どうやらベルモットの侵入を有希子さんから聞いた工藤は作戦を開始するために怪盗キッドを探し当てられたようだ。

そう考えている間にも宮野志保に扮した怪盗キッドはバーボン…安室さんによって奥の貨物車へと追い詰められてしまった。
安室さんは宮野志保を生きて組織に引き渡す、と言っている。
前に奴らの仲間の女、ベルモットはその場で哀ちゃんを殺そうとしたらしいのだが…生きたまま連れ戻す理由…考えられるのは…。


『大丈夫じゃないみたいよ。この貨物車の中、爆弾だらけみたいだし。どうやら、段取りに手違いがあったようね。』

『仕方ない、僕と一緒に来てもらいますか…』


その言葉に今度は工藤が顔を顰める。
そう、一番簡単なのはこの場で宮野志保を始末してしまう事。


『…!手榴弾!!だ、誰だ!?誰だお前!?』

その安室さんの言葉の直後に一際大きな爆発音が起こる。
ヒヤリと冷や汗が走る。キッドよりも真っ先に安室さんの心配をしている私を、工藤はどう思うだろうか。

私は双眼鏡をもち、ほっと一息つく工藤に「…ちゃんと逃げられたみたいね」と話しかけた。

「じゃ、作戦も成功した事だし、私はそろそろ他の所に…」
「待て赤崎。」

「…何?」

「まさか、バーボンの所に行くつもりじゃないだろうな…」

「…だって私、安室さんと車内で会う約束してたんだよ?行かなきゃ不自然…だったよね。私達が勘づいてる事、教える訳には行かないよね。」

「だめだ、行くな!あいつは組織の一員なんだぞ!わかってるのか!?それに多分まだベルモットが近くに…」

「わかってる。…行かないから、今日一緒に乗り込んだ人の所に戻るだけだから。」


工藤を振り切って私はそのまま廊下へと出た。


「なんて顔してるんだ。」

「赤井さん…随分と酷いこと言うんですね。…それでさっきの件ですけど…」

「ああ、彼に爆発を浴びせるつもりは無い。無事だ。」

「…そうですか。」

「まあ、かなりの賭けだったが、どうやら成功したようだな。」

「そうですか、それは良かった。…ん?」

私のスマホが突然震えだしたのでポケットから取り出して手に取る。

「電話か?」

「…いや、メールですよ。」


メールの画面を開くと、

暫く会えない

と本文の欄に短く書かれていた。
宛先は…ああ、やっぱりあの人からだ…。

スマホを胸に抱えて私は駅につくまで目を閉じた。










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