パタンとそのまま私はリビングのドアを閉じて彼へと向き直る。
「あれ?あなたは行かなくても良いんですか?」
「はい、事件はコナン君に任せました。それより私は気になることが。沖矢昴さん…いや本名を教えて貰ってもいいですかね。」
「気付いているんでしょう?…コナン君から色々聞いていた様ですし。」
「そうですね、それじゃあ先ず話は…その変装を解いてからにしましょうか。」
「ええ、もちろん。」
そう言ってゆっくりと変装を外したのは、沖矢昴より
少し歳上の男…目は先程私が見たものと同じ…そう…。
「FBI捜査官の、赤井秀一さん…ですよね。」
「いつから気付いていた。」
「杯戸病院や来葉峠の件はコナン君から聞いていましたから。それに、赤井さんの来葉峠での話をしている時の彼、妙に落ち着いていたんです。彼の言い回しが余りにも態とらしいのでいろいろ考えているうちに赤井さんの死は偽装されたものではないかという事に気付きました。そして、声の出せない理由、貴方はあの時変声機をしていなかったから。その首元の。」
赤井さんは取り外した変声機をチラつかせほお、と笑った。
CIAの諜報員で組織に潜入している水無怜奈が赤井秀一を来葉峠で殺射殺、焼殺した件と杯戸病院に潜んでいた楠田陸道という組織のメンバーだという男。
工藤はそれを私に話した時に態と私に不審がらせるようにあえて重大は事は伏せ、現場で起きた詳細を事細かに教えてくれた。
まるで解けと言わんばかりに。
「随分と頭が切れるんだな。」
「貴方に言われたくないです。私の事も知っているくせに。」
そう聞いても赤井さんはただニヤリと微笑むだけ。
「ふ…FBIにスカウトしたいくらいだ。」
「駄目ですよ。この日本で…私をFBIにスカウトするなんて。」
「そうだったな…流石あの人の娘と言うことか。」
私も彼と同様に微笑む。
「貴方は、彼を…コナン君の事にどこまで気付いているんですか…?」
「それじゃ、交換条件と言うことで教えてくれないか?君と…あの安室とか言う探偵の関係を。」
「え?事情聴取?襲われたって、大丈夫なの?」
『ああ、蘭達が返り討ちにしたからな。』
でしょうね…と電話口に苦笑いをこぼしつつ工藤の話に耳を傾ける。
『それで、今回の件でまた蘭に怪しまれちまって…あの後家に工藤新一が来たように話しておいてくれねぇか?』
「それはまあ良いけど…」
『どうした?珍しく声が不機嫌だな。』
「…そう聞こえた?だって工藤が私に隠し事するから。…来葉峠の事とか。」
『…ああ、その事か。』
「全部吐いてくれるよね。私たちの間に隠し事はなし…だったっけ。」
『…まあ、気が向いたらな。てゆーか、お前自分で気付いてるんじゃねぇか。』
「私、エスパーじゃないから、これから工藤が考えてる事、わからないんだけど。…あ、あと沖矢昴さんに伝えておいてよ。」
『昴さんに?』
「あなたは好みのタイプじゃないけど…付き合ってもいいってね。」
『…は?』
じゃあ、蘭に電話するから…と通話を切ると私は電話帳を開く。
蘭を探すのは通話履歴の方が早いかもしれない。そう思い立って通話履歴を開くと思わず手が止まる。
工藤新一と毛利蘭の間に挟まれた“安室さん”という文字が目に止まった。
私と彼との関係…か。
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