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「金一?何言ってんだよ?事件の事相談するなら工藤新一君だろ?高校生探偵で君の彼氏なんだからさ!今は何かの事件を追ってて、この家を空けてるみたいだけどな!」

「ほーー、この家の家主はあの高校生探偵でしたか…」


沖矢さんの言葉に世良さんは顔をしかめた。


「まさか、あんた知らずに住んでいたのか?」

「ええ、ここに住んでいた新一君は何の取り柄もないただの高校生だと蘭さんから聞かされていましたし…それに、風の噂で高校生探偵の工藤新一は、事件の捜査中に命を落として…謎解きの舞台から消えたと聞いていましたから…」

その沖矢さんの言葉に蘭が「そ、そんな噂になってるんですか!?」と驚く。
無理もない。姿は見せないものの、工藤は変声機を使って高校生の工藤の声で蘭に電話を…ん、変声機?

ふと彼の首元を見た。
上着のジッパーが一番上まで上がっている…先程の喋れなかった彼は首を晒していた。
そうか、恐らく、私の予想が正しければその首元には…。


しかし、沖矢さんはその噂、一体誰から…それとも…


「死んでいるわけないだろ?ボクは2度も彼と同じ事件に関わってるんだからさ!だよな?コナン君。」

「う、うん、そだね…」


金一君と言うのは、どうやら蘭が沖矢さんについた嘘。工藤が自分の事を話さないように口止めをしていたらしい。

工藤が沖矢さんに自分の存在を隠すよう言ったということ。
考えられる要因は、1つ。
工藤が沖矢さんの事を警戒している。組織に繋がる人物として。
しかし、そんな彼を何故工藤は自分の家に?


「じゃあ今から電話してみるのはどうだ?ボクも彼の推理を聞きたいし…」

「く、工藤、出るかな〜?コナン君に資料を探す様に言っていたなら、手が離せないと思うんだけど…。」

「…それもそうだよ。新一、また何か事件に関わっているのかも…」

「いーじゃん!事件の話となると新一君が食いつかないわけが無いでしょ?」


フォローしようにも園子に切り返されてしまう。
工藤は焦るようにトイレへと逃げ込む。

…!彼を世良さんと沖矢さんが、工藤を見ている…それも真剣な顔で…。


…大体、工藤が何を考えて私をここへ読んだか、分かった気がした。

「あ、し、新一?私、蘭だけど…」

工藤はトイレで変声機を使い、蘭からの電話を受けている。
とりあえず用心して見張りをたてるか。
静かにトイレに近付き数回ノックすると、小声で扉の前に私がいると知らせる。

腕を組んでトイレの扉の横に寄りかかり、リビングの扉を見つめる。
ここならリビングの会話も微かに聞こえる。

「す、昴さんが言ってたの!新一はまるで忍…霧隠才蔵だって…」

霧隠才蔵…確か真田十勇士の1人で真田幸村に仕えた架空の忍者…

沖矢さんからの何かのヒント?彼はもしかして、事件の真相を見抜いて…
真田幸村…真田……真田……あ、そうか…!


「そうか、わかったぜ事件の真相が!!」

それと時を同じくして工藤がトイレから飛び出す。

「今すぐ今朝の現場に行ってくれ!!オレの推理通りならピッタリはまるはずだから!」

「ちょ、工藤…トイレから出たら……!!」

工藤は私にも目もくれずリビングへ掛けていく。
はあ、と溜息を吐いて私も工藤に続きリビングへ行こうと歩きだそうとすると、不意に視線を感じた。

「…沖矢さん?」

振り返った場所にいたのは、沖矢昴さん。
…まさか、今の、見られて…!

「あなたは、一体…!」

沖矢さんはしーっと、自分の唇に自身の人差し指を当てるとリビングへ足を進めた。


「…とにかく…現場に行けば彼の推理の正否が確かめられるのなら…行かない手はない。そうでしょ?高校生探偵の工藤新一君…が、そう言っているんですから。」

沖矢さんは工藤を見つめて真っ直ぐ告げる。
やはり、この人は工藤の事…

現場に向かおうと蘭達が家から出ていく中、私は足を止めてリビングに留まった。

今目の前にいる人物、沖矢昴と話をするために。
どうやら、今回もまた工藤に任せることになるなんてね。













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