真っ白な車どんどん距離を縮めるとこの車の真横に並んだ。
チラリとその車をみるとコチラを真剣に見つめる安室さんと目が合った…気がした。どき、鼓動が少しだけおかしくなったけれど、そんな事なんて直ぐに忘れてしまった。
何故ならその白いRX7はこの車を追い越し、通り過ぎた…様に思えたが、次の瞬間ギャアアアン、と大きな音をたて豪快なドリフトを決めると、なんとその車体で受け止めるかのようにぶつけて、私達の乗る車を止めたのだから。
こちらの車からは小さな爆発が起きる。
咄嗟に私は車から飛び出ると、遅れて樫塚さん、その反対側にはまだ銃を工藤へ向けている女性が降りてきた。
彼女の意識は完全に安室さん達の方へ向いている。よし、今なら…と彼女の真後ろで拳を構えるが、私が攻撃を繰り出すよりも先に大きな音を立てバイクが私達が先程まで乗っていた車の上に乗り上がる。
バイクの主は「吹っ飛べえええ」と強引にバイクを動かし、強盗犯の顔をホイールにぶつけた。
バイクの主は世良真純だった。何故、世良さんがここへ?
工藤とはどうやら知り合いなようで工藤は無事でよかった〜とぎゅうぎゅうに抱き締められている。
近くには追ってきたのか博士と哀ちゃん。…それに博士の車の運転席に座っている男の人は…誰?
「三月さん。」
未だに呆然としている私に声がかかる。
安室さんだった。
「三月さん…大丈夫ですか?怪我とかしていませんか?」
そう言って安室さんは私の肩を掴んだ。
…あ、あの時と同じ…
あの時の彼も私の肩を掴んで「大丈夫か」…そう声を掛けたんだ。
その時、私の中の霧が少し晴れたような気がした。
もしかして、安室さんは…
「大丈夫です。どこも怪我はしていませんよ。」
安室さんは電話口と同じ様に安堵の息を吐くと薄らと笑みを浮かべる。
また、鼓動が早くなる。慌てて視線を他へ逸らした。
事件は収拾したけれど、安室さんの車は助手席側が破損してしまっている。修理代はどのくらいかかるのだろうか。
とりあえず車は問題なく動くようだが、もう全員が乗ることの出来るスペースはないので私は安室さんの車に、毛利さん達はタクシーを拾い家へ帰っていった。
「今日は色々なことがありましたね。」
「はい、まさか樫塚さんは亡くなった男性の方だったとは…。」
「まあ、でも」安室さんは後部座席の私を振り返る。
「三月さんが無事でよかった。」
今日の私は本当にどうかしている。心臓が高鳴って今にも破裂しそうだ。
「…今回は助かったよ、工藤。」
『バーロー!薬を躊躇なく飲みやがって!もし毒だったらどうするつもりだったんだ!』
「あのまま飲まないでバレるよりはマシでしょ…それに、工藤の事、信じてるからさ。」
『お前…』
「…何照れてんだよ。」
『て、照れてねェよ!!』
「冗談はさて置いて。ねえ、今日博士といた男の人、誰?」
『男の人…昴さんか?』
「昴さん?」
『ああ、沖矢昴さん。大学院生でーーー』
そこまで言うと急に工藤の声が途切れて突然「コナン君ー?」という蘭の声が聞こえる。
わり、切る。と手短に工藤は言うと電話は切れた。
通話終了後、パッと画面に映ったのは通話履歴。今日何度もかかってきていた番号は“工藤新一”の下にデカデカと表情されている。
確か蘭に教えて貰ったって…安室さんがかけてきたと言うことはこの電話番号は安室さんの物であっているだろう。
『無事でよかった。』
先程彼にかけられた言葉を思い出し、無意識に口元を緩ませてしまう。
そのまま電話帳の新規作成画面に入ると、名前の欄に“安室さん”と登録した。
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