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樫塚さんはお待たせ、よかったら飲んでね。と私たちにジュースを差し出して来る。

「お姉さん、ありがとう!」

「ありがとうございます。」


丁度喉も渇いていたのでジュースを飲もうとキャップを開けると、思いのほか軽い力でキャップの蓋は開いた。
どうやらこのジュースはどういう訳か開封済みらしい。
何か細工がされてあるということは明らかだが、あけてしまった以上飲まずそのままキャップを締めると、樫塚さんには怪しまれてしまうだろう。

しかも、樫塚さんは今私を見ている。

私達を人質にしたいなら殺すはずがない。
毒…ではない。おそらく睡眠薬。
少量ならば時間も短いし、何か大きな音で目を覚ますだろう。
私は大人しくジュースを飲むことにした。ミラー越しに工藤が少し驚いているのが分かった。


工藤、後は頼んだよ。


私は少量ジュースを口に含むと徐々に意識を手放していった。









ピリリリ…ピリリリ…


けたたましく鳴る電話の音で私は目を覚ました。

睡眠薬を飲んだせいもあり、まだ満足に手足を動かす事は出来ない。
がこの車にいま私以外誰も乗ってない事はわかった。
工藤…。

手を伸ばして発信元を確認する。
登録していない番号だ。おそらく携帯からの電話だろうが、番号自体見覚えがない。
少し不審に思いつつ通話ボタンを押すと大きな声が耳を刺す。


『三月さん!!??』

「…安室さん?」

『無事ですか!?』

「ええ、でも、何で番号…。」


安室さんは焦り気味に私の安否を確認するとふう、と安堵の息を漏らす。しかし、私は安室さんに電話番号を教えた覚えはない。


『蘭さんに教えて貰ってかけていたんです!彼女はコナン君の方に…って!それどころじゃありませんよ!!今どこに??』

「えーと、すみませんどの当たりかはわからなくて…駐車場です。コナン君も…無事です。」

『車は止まっているんですね?彼女は?』

「車から出ていきました。多分帰ってくると思いますよ。」


死んでも睡眠薬を飲まされただとか、今犯人とコナン君が銀行強盗の自宅を訪れているだとか、言えない。

私は自分のスマホのGPS機能を使って大体の位置を安室さんに伝えると、何かあったらかけ直します、と電話を切った。

安室さん、必死だったな…。心配されるのも悪くないなあ、等と不謹慎な事を考えつつドアを開けようとすると、それよりも早く、助手席のドアが開き、拳銃を工藤の頭に突きつける女性が乗り込んできた。


「くど…コナン君!?」
「アンタも仲間ってこと?なら黙って返すわけにはいかないね!!」


女性はフロントガラスに向かって1発発砲し、運転席に座る樫塚さんを威嚇すると車を出すよう、強要してきた。
状況に頭が追いつかないが、とりあえずこの助手席の女性が銀行強盗の最後の1人だろう。
私は後ろの席から拳銃を奪う機会を伺うが、狭い車内、更には工藤のコメカミに突きつけられている拳銃。
正直、私がここで何かして事態が急変するとは思えないし、工藤が撃たれてしまい、私が今度は人質になる確率が高い。
…下手には動けない。心配で付いてきておいてこのザマとは…

なにか手立てはないかと窓の外へ視線を移すと、物凄いスピードで近付いてくる白い見知った車が見えた。






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