9







「…って、誰も待ってねーし…。」

ガチャっと扉を開き中へ入っていく毛利さん達に続いて私も事務所の中へと踏み入れると、ある一点に違和感を感じた。


「…。」

「赤崎さん、どうかしましたか?」

「え、ああ、いえ何でも…。」


扉の前に何かを引きずった跡がある。

じっくりとその違和感を見つめているとどうやら工藤もその場所が気になったらしい。頷き合うと、私達は部屋の中を調べ始めた。


「一応、「すぐに戻る」ってメールを出したんだがな…」

「じゃあ、その内返事来るんじゃない?紅茶でも飲んで待ってる?」

「いいよ、コロンボでコーヒー飲みすぎたから…」


毛利さんはそう言うと「トイレ…」と言い、扉に近付いた。
ドアノブを毛利さんが握ろうとしたまさにその時。毛利さんの携帯がなり始めた。
毛利さんはドアノブへと伸ばした手を引っ込め、ポケットから携帯を取り出すと中身を開いた。


「お!依頼人から返事来たぞ!」

「え?」

「たった今コロンボに着いたから来てください…って」

「だったら早く行かなきゃ…!」


その文面はまるで私達をここから追い出そうとしている風にしか見えなかった。

工藤がとりあえずトイレに行く、といい出し始めるとまた、1通メールが。


「急いでみんなで来てくれ…って」


何故、犯人は毛利さんが1人ではないことを知っている。
そして、今のメールで私達を部屋から追い出そうとしている事は確信に変わる。
後はこの事をどうやって皆に伝えるかだが…



「ではまたみんなでコロンボに行きましょう!」

私や蘭の肩をぐいぐいと押し、安室さんは事務所の扉をバタンと閉じると、声を潜めて話し始める。
まさか、この人も気付いて…


「恐らく、こういう事ですよ…。」

依頼人を毛利さんに合わせたくない人物がいて、探偵事務所で事務所の人間として依頼主と落ち合うためにメールでわざわざ私達を追い出したのだ、と安室さんはいう。
それには私も同意見。おそらく工藤も。

さあ、それは本人に聞いてみましょうか。

そう言って安室さんが再び事務所の扉を開くと、急にパアン!と事務所内に大きな音が鳴り響く。
生臭い血の匂いがすぐさま私の鼻を掠める。

工藤が急いで扉を開くと、その中には全身をガムテープでぐるぐる巻にされた女性と…その傍らには拳銃を自分へ向け頭から血を流す男性の姿があった。






prev next

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -