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「ねえねえ、今日はポアロに行かない?」

「ポアロ?」

「蘭の家の下にある喫茶店よ!最近イケメンが小五郎叔父様の弟子になって、なんでもそこで働いてるらしいの!」

うっとり頬を赤らめる園子に苦笑いを零す。
あれ、園子は確か彼氏が…

「もー、京極さんがいるのに、これだから園子は…」

「いいじゃない!三月も行くよね?」

「え?ああ、うん。」


園子に促されるままポアロに着いた私達は綺麗な女性店員に席へ案内され、メニューを覗き込んだ。
園子はキョロキョロと店内を見渡し、蘭に問いかける。

「ねえ、蘭、例のイケメンは?」

「え?あー、ほらあそこで今調理している…」


私も園子も蘭の指さす方を見る。
そこには金髪の男性の後ろ姿が。蘭が「安室さん」と声を掛ければ彼はこちらを振り返る。


「あれ、蘭さんじゃないですか!それに…!」

「え?」


安室さん、そう呼ばれた彼はこちらを見ると少し驚いた顔をした。
その時目が合ったと思ったのは、気の所為だろうか。
でも彼、何処かであったような…。

「ど、どうしたの?三月も安室さんもそんなに見つめ合って…知り合いだった?」

「い、いえ、はじめまして…ですよね。」

「…そうだと思いますが。」


「ま、まさか…!」

少しぎこちない私達を交互に見ながら園子はガタッと席から立ち上がる。

「一目惚れよ…!そうに違いないわ!じゃなきゃ初対面の2人が見つめ合って固まる筈ないもの…!」

「ちょ、ちょっと園子…!安室さんも三月も何とか言ってください!」


興奮気味に語る園子に違う。と否定の言葉を掛けようとしたその時だった。


「じ、実はそうなんです。いやあ、一目惚れなんて、あるんですね!」

「…は?」


その後蘭と園子の悲鳴がこだまして、女性店員も、他のお客さんからも注目を浴びてしまったのは言うまでもない。


「僕は安室透と言います。ポアロでバイトをしながら毛利名探偵の弟子として探偵をやっています。…貴方の名前は?」

「…赤崎三月です。」

「三月さんですか、素敵な名前だ。」


キャー、と再び悲鳴を上げたのは私ではなくその隣の園子。
彼、安室さんの歯の浮くようなセリフに少し身震いしつつも苦笑いを返す。
一体どういう事だろうか。まさか、本当に一目惚れなんて…

斯く言う私も顔も声も曖昧で名前も知らない男の人に一目惚れしているのだから、一概に否定は出来なかった。
しかし、どうにもこの安室という男、胡散臭い。
用心深い性格は母譲り。暫くこの男の動向を見つめる事にした。


「それにしても三月、あんたやるわねー!あんなイケメンに一目惚れされるなんて!」

「そうそう!安室さんはどう?…あ、でも三月には初恋の人が…。」

「そんな誰かもわからない男より、絶対安室さんの方がいいってー!」

「まあ、あんなイケメンに一目惚れって言われて、気にならない女子なんていないよね。」

「…!じゃあ三月も…!」

「…でも、今はちょっとそう言うのはいいかな。余裕無いから。」


手持ちのスマホを見てカバンに突っ込むと私、ちょっと事件で呼ばれたから…!と言って席から立ち上がった。


「目暮警部から少し知恵を貸してほしいって言われてさ…ごめんね、この埋め合わせはいつか。」

「事件じゃ仕方ないよね…。」

「大丈夫、蘭は工藤君でこう言うのはなれてるから。」

「ほんとごめん。現場に工藤も来てたら連絡するね!」

「え!?あ、うん!」


じゃ、と机に代金を置いて店を出ようとすると、三月さん。と、安室さんに呼び止められた。


「また来てくださいね。今度は僕の作ったサンドウィッチをご馳走しますから。」

「は、はい。是非。」

そういうと安室さんは優しく微笑んで手を振ってくれた。
ああ、イケメンだ…じゃなくて、私はメールの内容を思い出して指定された場所へと急行した。







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