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「赤崎さんの娘さんでしたか…。あの事件は、なんと言えばいいのか…。」


毛利さんはそう言い渋ると蘭達の方をちらりとみた。
いい、どうせいつかはわかる事。

「あの事件…?」

頭のうえにはてなマークを浮かべている蘭達をみて、私は口を開いた。


「私の転校理由。両親が2人とも事故死したからなんだ。」

「え…!?」
「嘘…!?」

「家が火事になってさ…その時家も全部燃えちゃったから、父さんの親友を頼ってこのへんへ引っ越してきたってわけ。…もっとも、その一家は全員家にはいないみたいだけど。」

「その一家って、まさか。」

「うん。工藤新一の家。私の父さん。優作おじさんと親友だったから。今はマンションで一人暮らししてるよ。」


大変だったね…と蘭や園子に声を掛けられる。
母は元々毛利さんの上司だったから尚のことショックだったのだろう。
それならいっそ家に来ないか…と提案をしてくるが、生憎こちらの事情でそういう訳にはいかない。

大丈夫です。結構いいマンションなんですよ。と態とらしく笑うとコナン君の手を取った。


「…え?」

「そういえばコナン君。後でさっきの推理を詳しく聞きたいって言ってたよね?…というわけで、コナン君借りるね!」

「え、あ、ちょっと!!」

じゃあ、また学校で!と振り返り、コナン君の手を引くと、逃げられないように手首をぐっと握って目的地である私のマンションの部屋まで走った。




「へ、へえ、綺麗なマンションだね。」

「借りてもらってるから…工藤優作さんにね。」

「わ、わー!三月さんの住んでる階、高いねー!」

「いつまで子供のフリしてるつもりかな?工藤新一。」


部屋の回りに誰もいないことを確認し、部屋に入ると、私はそう目の前にいるコナン君に問いかけた。


「な、何の事…?」


しらばっくれるコナン君に先程私が組み立てた推理を話したけれど、彼は今だ知らんぷりで通そうとしている。


「それに、私優作おじさんにヒント貰ったから。」

「英字新聞と…メモ?」

「メモを解読して英字新聞の文字に当てはめそれを並べ替えると…young again(若返り)。最初は何の事かと思ったけど…まさかね。」


英字新聞に赤ペンで丸をつけた英字をピラピラと彼に見せると、ついに観念したのかコナン君ははあ、と溜息を吐いた。
さあ、聞かせてもらおうか。その体の理由を。


「…そのかわり、交換条件だ。教えろ…お前の両親、火事による事故死じゃないんだろ?」

「どこで気付いたの?」

「小五郎の叔父さんは事故、じゃなくて“あの事件”って言ってたぜ。」

「なる程ね。…わかった。」


私が頷くとまずはコナン君…もとい、工藤新一は口を開いた。


「お前の言う通り俺は正真正銘、工藤新一。あれは、蘭とトロピカルランドっていう遊園地に遊びに行った時だった…」


黒ずくめの男の怪しい取引現場を目撃した工藤はその仲間に殴られ、怪しい薬を飲まされ気が付いたら身体が縮んてしまっていたという。


「黒ずくめ…」

「ああ、工藤新一が生きていると知られては周りの人間に被害が及ぶかもしれない。俺は偽名を使って蘭の家に潜り込みその黒ずくめの組織について探っている…という理由だ。」

「なる程ね…だから優作おじさんは私に工藤の事を…。」

「赤崎?」

「じゃあ次は私の話だよね。私の転校の理由は確かに両親の死。そして実家は火災により焼け落ちてしまったから。でもお察しの通り事故じゃない。」


工藤は小さな声で殺人…と呟く。私は静かに頷いた。

「あの日は忙しい母と父が久しぶりにオフで、一緒に夕食を食べる予定だったけど、私は部活で帰りが遅くなってしまった。」


あの日、家の前には変な黒い車が止まっていてその車から3人、人が降りて家の中へ入っていった。
不審に思いすぐに追い掛けて家に入ると


「拳銃で撃たれた父さんと母さんが…。母さんはその時すでに。」

「拳銃で…。」

「そう。私も銃口を突き付けられ、父は目の前で銃殺されてしまった。」

「撃った奴は見たのか…!」

「撃った奴は顔を隠していて男か女かもわからなかったけれど…声は聞いた。あと、そいつと一緒に大柄なサングラスをかけた男と…髪の長い男が車から降りてきた。2人とも帽子をかぶっていて全身…黒ずくめ。」

「何…!?それって、まさか…!」

「君がそう思うのなら、きっと工藤をその身体にしたのも同じ奴ら。父と母は仕事で彼らの事を探っていてそして、知りすぎてしまった…だから殺された。」

「お前はどうやって助かったんだ?奴らが見逃すわけが無い。」

「その時、家に火が点き直後に私は気絶させられた。そのまま焼け死んだと思われてるだろうね。気付けば私は病院にいた。家の前の道路に気絶して寝そべっていたらしいんだけど。」

「誰かが運んだってわけか…。」

「そう。それが誰かもわからないんだよね。…と言うわけで私は優作おじさんと連絡を取り、おじさんの勧めで東京に引っ越してきたって事。でもまさか工藤がこんな小学生になっていたとはね…。」

「ああ、元の身体に戻るためにも奴らを捕まえねえと。…あとさっきはありがとな。蘭に嘘付いてくれて。」


嘘というのはきっと、最近工藤新一と一緒に事件を解いたという事だ。
もちろん、本当の工藤はコナン君なのだから最近工藤新一を見るはずも無い。


「ああでも言わないと心配しちゃうからね。工藤の彼女は。」

「バーロー、彼女じゃねえよ。」


そんなに恋しそうな顔して、説得力0なんだけどな。







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