「この度、このクラスに転入する事になった赤崎さんだ。仲良くしろよ!」
突如として訪れた新しいクラスメイトに毛利蘭は胸を弾ませた。
にこにこと愛想の良い笑みを浮かべて挨拶をする彼女にはとても好感が持てたし、なにより、彼女の席は蘭の真隣だ。
早速仲良くなろうと声を掛ければ予想通り、彼女はそれににこやかに返答し、すぐに2人は打ち解けた。
「へえ、あの毛利名探偵の娘さんなんだ。」
「お父さんを知ってるの?」
「そりゃもちろん。数々の難事件を名推理で解決してるってね。尊敬しているんだよ?」
「ええ!お父さんが聞いたら喜ぶわよ!」
「なになに?私も話に混ぜなさいよ!」
蘭に園子!と呼ばれた彼女は品定めをするかのようにじぃっと三月を見るとふふん、と笑った。
「結構可愛いじゃない。私程じゃないけどね!」
「あはは…ありがとう。えっと…」
「鈴木園子。園子でいいわよ。私も三月って呼ぶから!」
「うん。よろしく園子。」
それから放課後となり、今日は部活の無い蘭の提案で、3人で喫茶店へ行くことになった。
「それにしても、どうしてこんな時期に転校を?」
「そ、それは…」
三月は少し答え辛らそうに口を濁すと「そ、そういえば2人とも彼氏は?」と会話をそらした。
が、その話題に年頃の女の子が食いつかない筈がない。
直ぐに会話は恋愛話にシフトされる。
「私も蘭も彼氏いるんだよね!ね、蘭!」
「ええ!?私と新一はそんなんじゃ…!」
「あら?私一言も工藤君なんて言ってないけど?」
「工藤新一?」
「そうそう。蘭の幼馴染みで恋人なのよねー!」
「知ってる。東の高校生探偵、工藤新一。まさか彼に彼女がいたとは…」
「え?三月って、新一の知り合いなの?」
「ああ、ちょっと親同士が仲が良くて…でも、蘭が不安になる様な関係じゃないからお気になさらず!」
それから工藤新一と蘭の話、その後に園子の恋人の話を再三聞かされ、園子はふと三月に問いかける。
「三月は?そういう人いないの?」
「残念ながら、いた事はないかな。」
「えー!その顔でいた事ないって…どんな詐欺よ。」
「じゃ、じゃあ好きな人とかは?」
蘭のその問いかけに三月は眉をひそめると小さな声で「いるよ」と漏らした。
「もっとも、名前すら知らないんだけどね。」
「うっそ!もしかして一目惚れってやつ!?」
園子にそうだよ、と苦笑いを見せる。
「ちょっと事件に巻き込まれた時に助けて貰ってさ…しかもそれが四年前。」
「めちゃくちゃ昔…!でも三月はまだその人の事…」
「好きだよ。」
愛おしそうに目を細めて遠くを見つめる三月に、私達、三月の恋応援するからね!と園子が手を取って告げると三月は嬉しそうに笑った。
「蘭姉ちゃん、園子姉ちゃん、こんな所にいたんだ。」
「あ、コナン君。」
「なんでガキンチョがこんな所に?」
「外から2人が見えたから来ちゃったー!」
コナン君…と呼ばれた無邪気に笑う小学生の男の子は蘭達から視線を三月に移した瞬間、げ、と顔をしかめた。
「…三月がどうかしたの?」
「お、お姉さん、だあれ?」
顔をしかめたコナンは心無しか顔色も悪く見える。
問い掛けられたので三月は素直に自己紹介すると、彼もまた「江戸川コナンだよ」とぎこちなく返した。
「何?私の顔になんか付いてる?」
「べべ、べっつに〜!」
「コナン君って…」
そう、三月が切り出した所で突如喫茶店の奥の方から女性の悲鳴が聞こえた。
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