私は今、舞台設備専攻の同級生数人と芸能系学科の校舎へと足を踏み入れている。新人お披露目公演の説明会への参加とミュージカル学科生との打ち合わせをする為だ。

やっぱり芸能系学科なだけあって美形スラッとした体型の生徒が多い。私たち技術系学科は完全に悪目立ちしてしまっている。
説明会の会場に着くと説明会はすぐにスタートした。星谷君を探したけど、なかなか見つからない。この人数で彼を探すのは流石に無理だっただろうか。

説明会が終わるとミュージカル学科生は各班練習へと戻っていった。私たちはこの後いくつかの班との打ち合わせが待っている。
打ち合わせの時間まで各班のレッスンを見て回る事になった。
…のだが。


「所謂迷子ってやつですよ…」

別れて行動したのが間違いだったか、早速迷子になってしまった。そして芸能系学科の校舎は予想外に広かった。
取り敢えず各班の練習場所が印されている地図を貰っていたのでそれを見るも今自分が何処にいるのかがまず分からない。
私は断じて方向音痴等ではない、と言い聞かせていると後ろから「どうしたの?」と声を掛けられた。


「えっと、舞台設備専攻の者なんですが、場所がわからなくて…」
「知ってる。君、さっき新人お披露目公演の説明会場にいたよね。」
「あ、ミュージカル学科の人…」

声を掛けてくれた優しそうな彼はどうやらミュージカル学科1年生の様だ。ならば話は早い。この人の班の練習を見学しよう。


「練習見学をしたくて。」
「へぇ、ならうちのチームの見学してみない?」


私が聞くよりも先に彼の方から誘ってくれた。

「ほんとですか!ありがとう!」
「いいよ、俺は辰己琉唯。team柊に所属してるよ。」
「舞台設備専攻の華咲あやめ。今回は舞台照明担当です。って、team柊って事は…スター枠の人!?」

私が資料を確認しながらそう言うとそうだよ、と辰己君は優しく笑った。


練習場所に着くと既に何人かはジャージに着替えて集まっていた。
team柊の人達は辰己君の後に続いて部屋に入った私を興味津々に見つめてくる。美形に見詰められると正直心臓とか色々持たない。

「たつみん、その子誰?」
「舞台設備専攻の華咲さん。新人お披露目公演の打ち合わせの時間まで練習見学したいみたいだから、連れて来たんだよ。」
「華咲あやめです。今度の公演では舞台照明やります。よろしく。」


最初に辰己君に話し掛けた彼は卯川君と言うらしい。口を開こうとすると辰己君にボソッと「卯川に可愛いは禁句だからね」と注意を受けた。危ない危ないうっかりその禁句を口にすることろだった。


「申渡栄吾です。よろしくお願いします、華咲さん。」
「栄吾は誰にでも敬語だから気にしないで。」

丁寧な人だと感心していると辰己君が彼とは幼なじみだと説明される。
申渡君は辰己君にさえも敬語なんだとか。
そろそろ残りのメンバーも来るはずだと辰己君が入口の扉を見つめながら言うとその扉は本当に開いてしまった。エスパーか何かだろうか。

「戌峰捕獲完了ーーーって、女の子いんじゃん!!」

扉が開いたと思ったら今度は男の子が2人入ってきた。身長が高い方の彼は何故かぐったりしている。
その人もそうだが、もう1人もかなりのイケメンである。そのもう1人は私を指さして大声を上げるとこっちへズンズン迫ってきた。
そんな彼に悪寒を感じた私は咄嗟に辰己君の後ろへ隠れる。


「かわいーじゃん、ねードコの学科?」
「虎石、彼女怖がってるから。」
「えーー別にいーじゃん。」


虎石、と聞いてあ!と反応してしまった。友人が言っていたミュージカル学科のイケメン、確か虎石って言ってた。じゃあ彼がめちゃくちゃモテる虎石君か…なんかイメージしてたのと全然違うな…だって色黒だし赤メッシュだし、チャラそうだし…。
ミュージカル学科のモテるイケメンって言うと辰己君みたいな人だと思ってた。
と、ふと辰己君の方へ視線を向けると私は自分のある失態に気付いてしまった。


「あ、ごめん。袖…。」
「いいよ、気にしないで。虎石は女の人となるとちょっと面倒くさいから、いつでも頼って。」
「面倒くさいってなんだよ辰己ー。」


咄嗟に辰己君の上着の袖を握ってしまっていたようだ。彼は優しく笑って許してくれた。辰己君が王子様のように見えて少し顔に熱が集まるのを感じた。


「こら、そこで勝手に青春禁止!俺はteam柊の虎石和泉!デートはいつでもオッケーだから。」
「デ!?…舞台設備専攻の華咲あやめです。…よろしく。」
「華咲が虎石と話す時ちょっと距離とっててウケるんだけど。」
「まるで虎と兎みたいですね。」
「はいはい、じゃあそろそろ練習始めるよ。」


和気あいあいとした空気も、辰己君の掛け声一つで一瞬にして空気が変わったのがわかった。
みんな練習モードだ。










back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -