「新人お披露目公演?」

配られたプリントを眺めながら呟く。
舞台設備専攻にはそれぞれ他の学科の舞台をサポートする授業がある。
いろいろな学科に割り当てられるのだが、私はどうやらミュージカル学科1年生の新人お披露目公演というイベントの担当に割り当てられたらしい。

「あらら、私はあやめと一緒の担当じゃないや。」
「お互い頑張ろ。」

演目の内容把握や舞台構成をミュージカル学科の人達と打ち合わせる必要があるが、取り敢えず打ち合わせは来週以降かららしい。
初の実践だけあって科はなかなかに盛り上がっている。


「でもいいな〜、ミュージカル学科ってイケメン揃いらしいよ。」
「興味無いってば…」
「もー、またまたあやめは…。」


友人の眼はいつも以上にキラキラ輝いている。

「1年生の虎石君って人、凄くイケメン見たいだよ〜凄くモテるんだって」
「へ、へえ。」

興奮気味に前のめりになりながら語る友人と連動するかのように仰け反りながら冷や汗を浮かべる。
別に腫れた惚れたな事柄にまるっきり興味が無いわけではないけれども、今は授業に夢中な私にあまりそういうものは想像がつかない。


「いい人いたら教えてよね!勿論あやめの恋は一番に応援してあげる!」
「い、いたらね…。」


取り敢えず同じくミュージカル学科を担当するクラスメイトと担当決めをし、私は舞台照明に落ち着いた。
そして授業が終わると今日からはアルバイト生活が始まる。
寮に帰りほんの少し化粧をすると、足早にバイト先へと向かった。



「今日から入りました華咲あやめです、よろしくおねがいします。」

ぺこりと深くお辞儀するとよろしくねー、と幾つも声が聞こえてきた。店長にユニフォームを渡され更衣室で着替えるように促された。



「改めて、今日からバイトに来てくれることになった華咲あやめさん。まだ高校1年生だからみんな色々面倒見てあげてね。」
「よろしくおねがいします!」

じゃあ発声練習からしようか、と店員さんに連れられ基礎を学んだ。
ホールスタッフなんて単純だと思っていたが色々と奥が深い。


「華咲さん、ちょっと来てー。」
「は、はい!」

店長に呼ばれそちらへ向かうとスラッと背の高い男の人が立っていた。
歳は大体同じくらいだろうか、ああ、彼がもしかして同い年の人だろうか。

「華咲さんと同じ高校一年生の空閑愁君。仲良くしてあげて。」
「…よろしく。」

空閑君の第一印象は、静かな人と言うところだろうか。
2人少し休憩して来なよ、と店長。ごめんなさい、沈黙に耐えられません。
精一杯勇気を振り絞り、せめて何か共通の会話があれば、と話しかけた。


「く、空閑君はどこ校?」
「綾薙学園だ。」
「え!!」


あまりの衝撃に声が出てしまう。
自分はアルバイトを始めたとはいえ、綾薙学園は名門校なのであまりアルバイトをしているイメージがない。少々以外に感じた。



「私も、私も綾薙だよ!空閑君!」


どうやら空閑君は音楽が相当好きなようで話に火がつくと全く動いていなかった彼の舌は饒舌に音楽への情熱を語り、圧倒されてしまった。人間、好きな事が関わるとここまで性格が変わるとは。


バイトの時間はあっという間に過ぎ、私は帰路についた。
そう言えば彼の専攻を聞き逃してしまったけれど…また今度聞いたらいいか。

空閑君は寡黙そうな人だからもしかしたら同じ技術学科かもしれない。














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