「まさか、空閑達と戦うことになるなんてな…」
「負けないよ星谷君…ね、空閑君。」
「ああ。」


両チームが向かい合い軽く握手をする。先程の試合、星谷君達Aクラスは圧勝だったらしいく、気は抜けない。
思わず応援席にいる那雪君に「那雪君〜」と手を振るとチームメイトの拳が私の頭に炸裂する。
那雪君は苦笑いながらも手を振り返す。隣の天花寺君は不服そうな顔しているが気にしないでおこう。

お願いします!という掛け声で試合はスタートする。
星谷君はショートを守っている。



「打てーー!」

声援が聞こえる中一進一退の攻防が繰り広げられる。
私はそこそこ活躍している方だろうか。
点を取っては取られ、取っては取られ…はやく突き放さなければ延長へもつれ込みそうだ。


「華咲達、なかなかやるな!」
「星谷君達こそ。」

バッターボックスでバットを構える星谷君は私に笑いかける。
走者は三塁、一塁というほぼ満塁の状態だ。1打逆転サヨナラがあるかもしれないが、ここを凌げば私達の勝ちだ。


「…どうやら、秘密兵器、出すしかないようだね。」
「秘密兵器?」


私の秘密兵器、という言葉にピッチャーは頷くとサッと内野へ下がった。
内野へ下がった彼の代わりにマウンドへ上がるのは…


「空閑あ!?」
「秘密兵器、ピッチャー空閑君!」
「構えろ星谷。」


まさか空閑君とバッテリーを組む事になろうとは…空閑君の投球はまだまだ未知だけれども、捕れない球ではないだろう。ぶっちゃけ秘密兵器と言うのもハッタリだ。

空閑君はマウンドを数回足でならすと私に向かって何やらサインのような物を出し始めた。


「ど、どんな球が来るんだ…変化球か…?」

星谷君は見事に同様しているが、サインを作った覚えもないのでこれもハッタリだ。…と思うが、空閑君が必死に何かを訴えるものだからついつい何かサイン決めたっけ、と不安になってしまう。

星谷君が混乱している隙に…とミットを構え投球を促す。
いよいよ空閑君が大きく振りかぶって一投目を投げる。


「ん?」
「え?」

スカッ

突然の投球に思わず星谷君は空振りしてしまう事になった…のだけれども、どうやら原因はそれだけでは無い。

球速が凄く遅いのだ。
先程までそこそこのスピードの球を打って来ただけあって、相手チームは遅い球にはタイミングが合わせずらいらしい。


「空閑君…」
「コントロールを意識すると、これ以上速くは投げられねぇ。」
「まじか。」


緩急をつけようとしているのではなく、どうやら本気でこの球速らしいが、敵チームも気づいた頃には時既に遅し。見事な三振で試合は幕を閉じていた。
彼は色々な意味で本当に秘密兵器だったのかもしれない。
悔しそうにしている相手チームに思わず同情してしまう。


「まさか空閑達のチームに負けるなんて…。」
「星谷、いい試合だった。」
「決勝戦、絶対勝てよ!」
「ああ、任せとけ。」


もうどこをどう突っ込んでいいのやらわからない。

「空閑君、そういえばあのサイン、意味あったの?」
「ああ、あれは内角から外に逃げる変化球を…」
「ごめん、思いっきり外角高めのストレートだったよ。」



Aクラスが撤収して、次の決勝戦で当たる対戦相手を待っていると、ぞろぞろとグラウンドに次に対戦するチームが集まってきた。


「あれー、華咲じゃん。まさか決勝戦の相手とか言わないよねー。」
「卯川君、可愛い顔して野球のチームなんだ。」
「かっ、可愛いとかホントありえないんだけど!?馬鹿じゃないの?」

卯川君がいるという事は次の決勝戦は1年Cクラス混合チームと言う事になる。
となると相手チームにはこの人もいるという事になる。


「あやめちゃんも野球か?意外だな。」
「虎石君…。」

登場と同時にさり気なく腰に手が回りそうな勢いだったので、空閑君の後ろへと緊急避難する。


「へー、じゃあ俺らが勝ったら、あやめちゃんは俺とデートね。」
「むり。」
「安心しろ華咲、俺達は負けない。」
「ごめん、空閑君が言っても説得力なくなってきてる。」


空閑君が頭に手を置いて微笑んでくれるが1ミリたりとも落ち着かない。空閑君のこういう事にすごくポジティブな性格は見習うべきなのだろうけど…

それにしても、彼は。虎石君は私の事を覚えているのだろうか。









「それでは球技大会、野球の決勝戦。1年Bクラス混合チーム対1年Cクラス混合チームの試合を始めます。」



「「「よろしくおねがいします!!」」」


始まった決勝戦、向かい側の選手と軽く握手を済ませると各自が持ち場へと移動する。



「なに、華咲キャッチャーなの。似合わないね。」
「卯川君は一番打者っぽいね。」


卯川君は数回素振りするとバッターボックスへ立つ。なかなか綺麗なフォームだと思う。

今回は決勝戦と言う事で相方のピッチャーとはサインを試合前にしっかり話し合った上でのこの守備。先制を許す訳にはいかない。


まずは様子見、外にはずれた低めのストレート…は見送られる。卯川君はよく球を見ているのか、それとも手が出せなかったのか。

今度は少し打者寄りのインコース、ここは打ちにくいだろうと思ったのだが放たれた球を卯川君は器用に打ち抜いた。
脚の速い卯川君はあっという間に二塁へ到達した。
















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