球技大会当日に芸能学科のBクラスと合流するとやはりこちらの野球メンバーに女子がいる事は意外だったのか驚かれてしまった。

珍しく口を開いて「こいつ元ソフト部だそうだ。」とフォローを入れてくれた空閑君に感謝をしていると早速ポジション決めに移る。
取り敢えず希望のポジションを出し合うと見事にバラバラ、即座に決定し、軽く練習をする。



投手には芸能学科、捕手は私、内野に芸能学科、外野に技術学科という布陣だ。


短い練習が終わるとすぐに一回戦へと突入する。
試合は軟式、一試合5回で、延長有らしい、そして目指すは優勝のみ。

私は審判委員会の人から手渡されたキャッチャーマスクを被ると静かに腰を下ろしてミットを構えた。
応援席には友人やら同じクラスの人達、月皇君も見えるが、私がまさかキャッチャーだとは思わなかったのだろう。月皇君は口を開けたまま目を見開いている。


いよいよ一回戦がスタートした。
初戦に当たる事になった2年のDクラスの混合チーム相手に私達1年Bクラス混合チームは攻守共にその力を遺憾なく発揮する。

気付けば初戦は5対1でこちらの勝利で幕を閉じた。


「勝てたーー!」
「初戦突破!」


メンバーがクラスの応援席まで駆け寄ると拍手と声援が飛んでくる。
応援席を見渡すと未だにボーッとこちらを見ている月皇君と見事に目が合ったので笑ってピースサインを見せると彼も安心したかのように優しく笑った。

結果を報告しに行っていた空閑君が帰ってくると、彼は対戦表を広げて見せてくれた。

「次、1年Aクラスの混合チームだそうだ。」
「確か、星谷君のクラスだよね。」


空閑君は静かに頷く。対戦表を見る限り虎石君達Cクラスも順当に勝ち上がっている様だ。









「頑張れーー!!」
「走れ!走れ!」


一回戦が終わると次の試合まで時間があるので空きの時間に行われるサッカーの試合を観戦する事になった。
Bクラスのサッカーには月皇君が出ていて、ポジションはミッドフィルダー。何となく月皇君っぽいポジションだと思う。

相手はまさかのCクラス混合チーム。辰己君が試合に出ていた。


月皇君は華麗なドリブルでどんどんディフェンスを交わしていく。

「うま…月皇君サッカー部?」
「嫌、アカペラ部って言ってたぞ。…にしてもあいつ、ミュージカル以外でも笑う様になったな。」


空閑君の視線の先の月皇君は、少しぎこちないものの、点を決めたメンバーから求められたハイタッチをしていたり、肩を叩きあって喜んだりしている。

そんな彼の姿を見て少し頬を緩ませる空閑君を横目に、私も次第に笑ってしまう。


「空閑君て、何かお父さんみたい。」
「何だそれ。」


しかし、月皇君も辰己君も中等部からの持ち上がりで顔も広ければ人気もあるのか、所々から黄色い声援が聞こえる。

虎石君や天花寺君がモテるのは知っているけれど、やはり彼らもモテるらしい。顔も良くて歌もダンスも出来て、終いにはスポーツも出来てしまうのだから、当然なのだろうか。


グラウンドの選手を眺めていると、辰己君と目が合ってしまった。
組が違うので声に出して応援する事は出来ないが、こちらを見つめる辰己君に精一杯の応援の意味を込めて(が・ん・ば・れ)と口パクで伝える。


私の精一杯のエールにフッと微笑む辰己君。
気持ちが届いた嬉しさと、優越感に自然と表情が緩む。



結局試合はCクラスに負けてしまったが応援も盛り上がり、楽しい試合となった。


「月皇君、お疲れ様!」
「ああ、負けたけどな。」


月皇君にタオルを手渡すと彼は軽くお礼を言い受け取る。


「でも月皇君凄くサッカー上手だったよ。小さい頃やってたの?」
「…昔、よく兄とサッカーして遊んでいたからな。」
「そうなんだ。私もよく兄さんとキャッチボールしてたな…。」
「華咲も兄がいるのか?」
「そうだよ。意地悪いし、不良だけど何でも出来る自慢の兄さんだよ。」

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる兄を想像しては苦笑いをする。兄のせいで色々大変な思いはしたけれど、自分より器用に何でもこなす兄の事は心から尊敬している。


「…好きなんだな。兄さんの事。」
「うん、好き。」


「月皇君もそうでしょ 」と彼の顔を見ると顔を背けながらも頬を赤く染めて「ああ。」と答える。
何だかんだ言ったって、兄が嫌いな弟や妹なんていないのだ。



「さて、次の試合行きますか…!」
「お、おい。」
「…?」
「その…頑張れよ。華咲。」
「うん。がんばる。…顔が真っ赤だよ月皇君。」














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