綾薙学園。 音楽芸能分野の名門校である。私華咲あやめはこの春入学仕立ての1年生だ。
技術分野と芸能分野、大きく分けて二つの分野に分類されるこの学園で私は技術分野へ進学した。

勉強出来ないわけではないし、クラスは気さくな人も多くてそれなりに友達も出来た。
専攻は舞台設備。舞台照明やカメラ、音響について学ぶ専攻だ。
演技や歌は好きだけれども、人様に見せられる程の実力でもない。少しでも舞台に関わりたい一心でこの綾薙学園高等部に進学した。

しかしここからが問題である。

受験時に親に少しばかり反対された影響か、寮へ入れて貰える代わりに自分の生活費や娯楽費は自分でと、バイトを始めるよう言われてしまった。
こうしてアルバイトを余儀なくされた私は今日、目星を付けているお店へ面接に行く予定だ。

仲良くなった友人に早速その旨を伝える。

「どんな店?」
「公園の近くに、バーみたいな…ピアノがあるお店があってさ。」
「あやめってピアノ弾けたんだ。」
「弾けない。」

即答で首を横に降ると友人はガクッと崩れ落ちた。
とりあえず今日面接に行く予定だから、と伝えると、ちょっと待った!肩を掴まれ呼び止められた。

「あんた、その店の近くの公園の噂知ってる?」
「え?噂?」

出るらしいの…少し青ざめ萎縮気味に友人は答えた。

「出るって…まさか。」
「あ!信じてないでしょ!」
「信じないよ、そういうの。」


友人は恐る恐る話し始める。
目撃した生徒の話では夜な夜な公園の側を歩くと…
何でも、砂嵐と共に奇妙な声が聴こえてくるらしいのだ。


「どうせ誰かが流したデマだって。はい、終了〜。」
「あやめ意外とクールだよね。」
「そう言えばさ、もう少しで最初の実習課題出るよね。たのしみ。」


……





「いらっしゃいませ!お好きなお席にどうぞ!」
「あ、アルバイトの面接で来ました、華咲と申します。」

雰囲気の良い店員さんに連れられ奥の事務所に入る。
待機していた人の良さそうな店長から軽い質問をいくつか受けた。
結果はどうやら採用な様で、軽い質問を受けた後は世間話をしばらくした後ユニフォームやら、シフトの話やらになった。


「じゃあ明後日からってことで、よろしくね華咲さん。」
「よろしくおねがいします。」
「そうそう、同じ歳の男の子もバイトしてるから、仲良くしてあげてね。」
「は、はい。」


同じ歳のバイト仲間がいるのは正直有難い。
嫌な人ではなければいいんだけれど…取り敢えず飲み物を1杯御馳走になった後、私は帰路についた。








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