「球技大会…?」
「そうそう、期末テストも終わったし、来週は球技大会…ってあんた、先生の話聞いてた?」


友人の話では来週全学年合同の球技大会があるらしい。
クラス対抗だが、明らかに技術学科と芸能学科では力の差がありすぎる為、どうやらクラスを混合した組み分けになる。

うちの技術学科のBクラスは、芸能学科Bクラスと合同らしい。
各クラス均等な人数を出し合い最低1人一種目出場、男女比は男子の方が上のため完全なる男女混合チームとなる。


ホームルームが始まるとクラス委員が黒板に種目を次々と記入していく。


・サッカーボール
・バレーボール
・バスケットボール…

どれもピンとこなかったが、野球と書きたされた瞬間、私は即座に希望用紙に野球と記入した。
しかし、女子は殆どがバレーボールに集中している。


「華咲も野球か、よろしく!」
「うん。よろしく。」

どうやら新人お披露目公演で同じ班になった彼も野球をするらしい。
…授業中も実習中も1日中ヘッドホンをつけている彼だけど流石に野球の時は外すだろうか…。


「えーあやめ野球なの?私バレーだから別だね。」
「応援はちゃんと行くから。」

取り敢えず競技の取り合いになる事なく無事に野球メンバーに決定はしたものの…流石に女子はいないか…。
バレーやサッカーでは足で纏かもしれないが、野球になら自信がある。

俄然やる気の出てきた私は彼やメンバーと試合の日までにバッティングセンターに行く約束をした。






「星谷君も野球?」
「…って事は華咲も?」

久々にteam鳳の稽古場へ遊びに…もとい、見学に行くと彼らもまた球技大会について話し合っていた。


「天花寺君は団体競技向いてなさそう。」
「なんだとこの野暮助が!俺様は天才だから何でも出来るんだよ!」
「そう言う天才天花寺君は何の競技?」


俺様はバレーボールだ、と自慢げに語る天花寺君を他所に那雪君達の会話に混ざる。
どうやら、星谷君と空閑君は野球のようだ。


「そう言えば、私のクラス、芸能学科のBクラスと合同なんだけど、誰かいる…?」
「俺と空閑はBクラスだ。」

月皇君はちらっと空閑君を見ながら答えた。
空閑君が同じ組と言うことは私は空閑君と同じチームになる訳だ。


「空閑君、得意なポジションは?」
「別に得意って程じゃねえよ。どこも普通だ。」
「2人は同じチームか…いいなー楽しそう!」
「私、星谷君と対戦するの楽しみだよ!」


柔軟をしつつ、暫く話し込んでいると稽古場の扉が開く。

「やってるかい、ボーイズ。」

鳳先輩がやって来ると一斉に話を止め挨拶をする。
鳳先輩はみんなに混ざっている私に気付くと「おや、いらっしゃいガール」と挨拶をしてくれる。

星谷君達にボーイズと言っている時はあまり何とも思わないけれど、直にガールと言われてしまうと私は少しだけ照れくさい。

鳳先輩が来ると、星谷君達は練習を始めていく。


「こんにちは、鳳先輩。」
「見学かい?熱心だね。」
「好きなんです。星谷君達のミュージカルを見ているの。」

その後暫く星谷君達の稽古を見ていた鳳先輩は急に思い立ったかのように私に話しかけた。

「そうだ、華咲。今ちょっと話いい?」
「…なんですか?」

鳳先輩はこちらへ目線を向けたまま話し始める。

「夏休み中に、合宿をしようと思っていてね。」
「チーム鳳がですか?」
「そう。それで一つ頼みなんだけど、手伝いとして付いて来て欲しいんだ。」
「手伝い、ですか。」
「合宿場の稽古場には音響や照明機材一式揃っている。合宿中は好きに使っていい。華咲にとってもそう悪い話じゃない。どうかな?」



確かに学校外でも機材に触れる機会があるのは有難い。
しかし、夏休み中となると業界研修や見学と被る可能性が高い。
少し考えさせて下さい。そう先輩に言うと、先輩は優しく笑って私の頭をポンポンと撫でる。


「無理言ってすまないね。ありがとう。」

それだけ言うと先輩は再び星谷君達の稽古に戻っていった。
私はぼーっと撫でられた頭を自分の手を置いた。
やっぱり先輩は…。










カキーン


爽快な音と共に白球が飛び交う。
同じクラスの野球メンバーと来たバッティングセンターには綾薙学園の生徒だらけだ。
チームには元野球部も少なくはない。バカスカ130キロを打つ男子の力はやはり凄い。自分では当てるのが精一杯で、飛ばすことの出来る速度は精々120キロまでだろう。

「華咲意外とやるな!」
「元ソフト部舐めんな!」


暫く打ち込みをして休憩していると、他のメンバーも何人か打つのを止め同じベンチに座りながらバッティングを眺める。


「…にしてもさ、ギャップ感じるよな。」
「ギャップ?」
「普段、音響とかカメラとか照明機材弄ってる奴らがバリバリ野球出来るなんてさ。」
「あーそれ分かる!特に華咲!」
「ええ?」

その後もかなり打ち込みをした私達は寮への帰り道にも野球の話で盛り上がっている。
よっしゃ、目指すは優勝!と意気込む1人に後のメンバーも続く。

普段機材に向き合う私達だけれど、たまにはこう言うのもいいかなと、そう思えた。













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