新人お披露目公演も終わり、いよいよ残すは結果発表となった。
ミュージカル学科1年生の皆は掲示板の前に集まると結果を今か今かと待ち望んでいる。


「はあああ…」
「おいおい華咲、お前が緊張してどうすんだよ。」


そう、私自身この結果発表には何ら関わりはない。
だが、今は付き合いの深いteam鳳の事は自分の事のように思えて仕方が無い。
緊張で固まっている那雪君の隣で私は掌を組んで祈るように掲示板を見つめる。


「大丈夫、きっと大丈夫…。」



《只今より、新人お披露目公演の審査結果を掲示します。》


アナウンスが入り、場は一気に静まる。皆それぞれ息を呑む中、いよいよ審査結果が掲示された。
全員がいち早く結果を見ようと前のめりになりながらも小さな紙へと視線を向ける。


1 team柊

トップ通過は辰己君達だ。流石と言ったところだろうか。
徐々に視線を落としていく。4位…5位……team鳳の名前はまだない。
6位…7位……

8 team鳳


「あった!!」

星谷君と顔を見合わせて声を揃える。あった、team鳳の名前が合格チームの欄にあったのだ。


「8位だ!」
「残った!!」

天花寺君は「当然だ」と笑い、月皇君もはあと安堵の息を吐いて笑う。空閑君も無言だが頷いている。
だんだんと皆の表情に笑顔が生まれる。肩を組んで喜びを分かち合う。
私はteam鳳ではないのに、星谷君は私もと、輪の中へ引き込んでくれる。
他人の合格が自分の事のように嬉しいのは初めてかもしれない。
皆が笑顔でいてくれて嬉しい。
私も一緒に喜べることが何よりも嬉しい。







「…え、打ち上げ…私も行っていいの…?」
「打ち上げつっても部屋に集まってジュース飲む位だけどな。」

合格発表も終わり、私はこの後に教室に戻って新人お披露目公演に関しての反省会を班のメンバーとする予定だ。
校舎へ戻ろうとすると、星谷君は「華咲も来るだろ?打ち上げ!」と言い出した。

「でも男子寮は女子は立ち入り禁止じゃなかったっけ…?」


そうだ、確か校則で寮への異性の立ち入りは禁止されている筈。
と思ったけれど今の寮母さんは案外緩いらしく、見つかっても少しばかり注意を受けるだけだとか。
と言うか男子寮に女子入り込んでるのか、と思っていると大体予想はついたが、連れ込んでいるのは虎石君らしい。


「でも、万が一バレたりして皆が処罰受けたり、もし退学になったりしたら嫌だからさ。」


学園の筆頭である華桜会メンバーが寮へ所属していないとはいえ、いつ何時、誰が見ているかわからない。
私は再三断った。







ーーーーつもりだったのだが。


「「「かんぱーーーい!!!」」」


「一体全体どういう事だろうか。」

「もう来ちまったもんは仕方ねえな。」
「諦めろ、華咲。」


あの後反省会が終わり校門から出た瞬間。
まるで誘拐かのように天花寺君の家の大きな車に押し込められ気付けば男子寮の中だった…という訳である。


「だってさ、華咲いないとつまんないじゃん。」

「今回の公演はお前も頑張ったからな。」

「みんな華咲さんともお祝いしたかったんだよ。」

「みんな…。」


その後は皆で持ち寄ったお菓子を食べたり、ジュース飲んで色々な話をした。
こんなに大勢で集まってわいわい騒ぐのは久しぶりで、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。





「今日は無理言ってごめんな。でも華咲がいて楽しかった。」

「私も楽しかったよ。」


星谷君に付き添ってもらい、男子寮を出る。
今日は1日で本当に色々なことがあった。


「星谷君、合格おめでとう。」

「…きっと、華咲がいなかったら今日の公演、成功しなかったかもしれない。だから本当に本当に本当に…ありがとう!華咲が新人お披露目公演の担当で本当によかった…!」


星谷君が頑張っている所をずっと見ていた。最初はあの公園で1人きりで練習していた。最初は私がアドバイスをしていたんだっけ。
それから段々と皆が星谷君の所へ集まり始めて、一つのチームになった。
励ましたりもしたし、褒めたりもした。怒ったり、喧嘩もした。
それぞれの思い出が私の脳内を駆け巡ってじわじわと瞳が熱くなってくるのがわかる。


こんな所見られたくなくて私は俯くとそのまま星谷君の手が私の頭を包み優しく自身の胸へと押し付ける。
この間抱き締められた時には感じなかったドキドキが胸に押し寄せてくる。
星谷君の胸の鼓動も頭から直接伝わってくるようだ。

「今日、星谷君が最後こけそうになった時、私何も出来なかった。」

「うん。」

星谷君はそのまま優しく相槌をうってくれる。

「でも、星谷君には最高の仲間がついてる、不思議と不安はなかった。月皇君と天花寺君が星谷君の手を掴んだ時、凄く感動したし、わくわくした。あの輪の中に飛び込んでみたくなった。」

「…ありがとう。でも、華咲だって最高の仲間だ。何処にいたって。その公演に関わっていなくたって、華咲は俺達の仲間で…それで、俺の……。」


その言葉に続きはない。星谷君は私の身体をゆっくり離すと照れ臭そうに視線を逸らした。
不思議に思って顔を覗き込むと、その頬は赤い。
あの言葉の続き、もし自惚れても良いのならきっとそう言う事なのだろうか。

私も何だか照れ臭くなってしまって、お互いに別れを告げるとそのまま自分達の寮へと戻っていった。

男子寮へ消えていく星谷君の後ろ姿を眺めながら、明日からまた普通の学校生活へ戻ると思うと寂しさを感じた。














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