鳳先輩からアレンジをすると伝えられてから1週間。寝る間も惜しんだ数日間で舞台演出班は無事team鳳の演出を完成させた。
今日はいよいよミュージカル学科新人お披露目公演の日だ。
今日は星谷君達ミュージカル学科だけでなく、私達舞台設備専攻の班にとっての新人お披露目公演でもある。
本番前に軽く調整とリハーサルをして、後は公演開始を待つのみである。



「ーーーこれより新人お披露目公演を始めます。ミュージカル学科第二次選考を兼ねたステージ、皆さん心残りのない様に全力で臨んで下さい。」


衣装に着替えたミュージカル学科生達がステージに集まると、華桜会主席の柊先輩の挨拶が始まる。私の位置は客席の最後方。ステージから1番遠いオペレーター席だ。
左腕にはスタッフだと分かるように黄色い腕章を付けて、いよいよ自分がミュージカルに携わるんだと思うと心が震えた。
それに、こんなに遠くからでも公演を控えた皆の緊張が私達にも伝わってくる。

星谷君達はどの当たりだろうかと見渡すと一発でわかってしまった。他の全員が衣装を纏っている中、彼らはいつもの同じジャージ姿だっだからだ。


「何故ジャージ…?」
「さ、さあ…。」


「それでは、出場の順番をくじ引きで決めます。チームリーダーは前へ。」


一斉に各チームのリーダーが前へ出てきてクジを引き終えるとそこで公演開始時間まで一旦解散となる。
手早く印刷されたプログラムを手渡されて気付いた事は、星谷君達がトリだと言う事。

最初の班まで少し時間があるので星谷君達に声でも掛けられればと私は控え室へ向かった。




「皆調子はどう…。って何か空気重い?」
「華咲…俺と握手してくれ!」
「…え?」


控え室へ入るといきなり星谷君に握手を迫られる。
どうやら占いの運勢が悪く、握手をすると運気が上がるらしい。

「わ、私で良ければ…」
「ありがとう華咲ーーー!」



「と、取り敢えず星谷君は占いなんて気にしない!皆落ち着いて頑張って。私はオペレーター席から見てるから。」
「華咲さん。ありがとう。」

まだ少し緊張しているのか眉が少し下がっている那雪君。

「お前もしっかりな。」

照れながらも返事はしっかり返してくれる天花寺君。

「ああ、お互い頑張ろう。」

優しい笑顔で肩を叩いてくれる空閑君。

「心配するな。気楽に。」

落ち着かせてくれる月皇君。

「華咲が担当じゃなかったら、もしかしたら俺達は今日の公演、納得のいくミュージカルが出来なかったかもしれない。だから、ありがとう!今日俺達が踊るのは俺達team鳳だけじゃなくて、華咲や演出班、皆で作ったアヤナギショウタイムだ!」

太陽の様な笑顔で私に力をくれる星谷君。


きっと今日は私にとってすごく特別な日になる。
絶対成功させたい。皆で作ったアヤナギショウタイムを大勢の人に見てもらいたい。


「頑張ろうね。」



いよいよ新人お披露目公演の幕が開く。



……





順調に公演は


《次はteam柊です。準備をお願いします。》

F班の公演が終わり幕が一旦下りるとアナウンスが入る。
いよいよ辰己君達team柊の順番だ。

客席から舞台へ向かう五人に視線を送ると辰己君と目が合ってしまった。
team柊の皆は真っ白な衣装がとても良く似合っているし、表情も落ち着いて見える。

辰己君へ応援の意味を込めて笑顔で手を振ると、伝わったからなのか、彼も笑顔で手を振ってくれる。

それに気付いた他の四人も笑顔でこちらへ手を振ってくれる。
…虎石君の投げキスは少しばかり余計かもしれない…。



team柊の安定した歌や踊りに客席からは数々の感嘆の声が上がる。
今日来ている人の中には有名なプロダクションの方等、業界へ携わっている人がいるらしい。

そんな人々も魅了してしまう彼等の演技の前では、次の班の人達は霞んで見えてしまう。
それを誇らしく思ったり、逆に悔しくも思えた。今日舞台に上がる人達は全員がこのステージに全力をかけているのだから。

それから幾つもの班の公演が終ラストはいよいよ、team鳳の皆の出番となった。


新しいアヤナギショウタイムは、team鳳の皆はどう評価されるだろうか。受け入れて貰えるのだろうか。自分は失敗しないだろうか。皆落ち着けているだろうか。

一番緊張しているのはもしかしたら私なのかもしれない。
舞台へ向かう星谷君達を見ると皆こちらへ笑顔を見せてくれた。そんな皆の笑顔に心無しか私の緊張も解けていくように思えた。



…しかし、那雪君シスターズが修繕したと言うあの衣装、もはや原型を留めていない。
いや、似合っているけれども…!
















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