「はー、授業終わったねー。」
「一般科目は苦痛でさ…。」


綾薙学園は専門科目の他にも一般科目も学ぶ学校だ。
私はと言うと専門授業の時間が楽しみで仕方が無く、あまり一般科目の勉強には手がつけられない。
…と友人に打ち明けると「テストで悪い点取って落第しても知らないからね」と冷たくあしらわれてしまった。
やはり自分の好きな事をする為にはそれなりに勉強する必要があるわけで…


「ね、ねえ明日の英語の小テストの勉強なんだけど…」
「ごめん、私今日この後打ち合わせだから。」


友人に助けを求めたがバッサリと切り捨てられてしまった。
明日の小テストは合格点に満たないと追試を受けなければならない。
明日はバイトはないが放課後にteam鳳の練習見学をする約束になっているのでどうしても追試だけは避けたかった。

心許無いが自力で頑張るか…ととぼとぼ学園から出ようと門を通り過ぎようとすると、誰かに声を掛けられ立ち止まる。


「華咲さん。今帰り?」
「辰己君!申渡君!」

振り返るとteam柊の辰己君と申渡君がいた。放課後で人も多いせいか他の学科の生徒から彼らは注目の的だ。やはり辰己君も申渡君もスター枠なだけあって人気があるんだと実感した。

「帰りだよ。今日はバイトもないし。」
「では私達とカフェへ行きませんか。」
「栄吾がいい感じのカフェを見付けたんだ。今から行く所なんだけど華咲さんさえ良ければ一緒に行かないかい?」


…これは。彼らに誘われた瞬間私の中ではいくつかの選択肢が浮かんだ。
1、断って寮で勉強
2、一緒にカフェへ、楽しく会話
3、一緒にカフェへ、勉強を見てもらう

…どうしても2を選びたくなる所だが、勉強はしなければならない。それに辰己君も申渡君も見るからに勉強出来そうな2人だ。
もし2人のクラスも同じ小テストがあるならば、勉強会と言う手もあるが…。


「3で。」
「3…?」
「…あ、何でもない!…2人のクラスは明日英語の小テストあったりする?」
「ええ、確かにありましたね。」
「私も明日小テストでさ…勉強しても良ければ一緒に行きたいな…なんて。」


少し遠慮がちに様子を伺うと2人は構わないよ、と優しく微笑んだ。






「いらっしゃいませ〜何名様でしょうか。」
「3人です。」
「あちらのソファーのお席へどうぞ。」


やってきたカフェは少しシックな落ち着いた雰囲気のお店だ。平日の夕方だと店内はかなり空いている。
私達は奥の方の広い席へと通された。流石申渡君はセンスが良いなと思った。

私の隣に辰己君、向いに申渡君が座ると辰己君がメニューを広げて「好きなもの頼みなよ。」と、どうやら辰己君の奢りみたいだ。
一応1度断りをいれたが、気にしないでと一蹴されてしまう。


「華咲さん、俺達英語は得意だからさ、勉強手伝うよ。」
「いいの!?ほんとにありがとう!」
「早く終わらせて華咲さんと喋りたいからね。」


にこにこ笑う辰己君を眺めながら私は少し照れてしまって逃げるようにメニューに目を向けた。

「俺はこのケーキと紅茶のセットで。」
「では私はこちらのケーキとコーヒーをお願いします。」
「私は…このパフェと…いちごオレで…。」


ご注文ありがとうございます、と店員さんがハンディ機を片手にお辞儀する。散々迷ったが、奢ってもらうということで、辰己君や申渡君と同じくらいの値段の物を注文した。

「そういえば、月皇も好きだったよね、いちごオレ。」
「ええ、確かそうでした。」
「意外…。」
「月皇は甘い物好きだよ。」

そう言えば那雪君と月皇君はこの2人と同じく中等部の出身らしい。会話から察するに以前から交流があったのがとれる。

「月皇君って中等部の時はどんな人だったの?」
「そうだね…もっとトゲトゲしてたかな。」
「最近丸くなりましたね、彼。以前はあまり人を寄せ付けない印象でした。」

最近という単語にふと、私は思った事を口にする。

「星谷君…。」
「確かに星谷の影響かもね。彼は不思議な人だから。」
「星谷君を見てると、何だか自分も頑張ろうってなれるんだよね…不思議。」

辰己君は星谷君を少し気にしているらしく、その後は暫く星谷君の話をした。
星谷君は本当に不思議だ。決してセンスや技術がある訳ではないけれど、彼には惹きつけられる何かがある。現にそれを辰己君達も感じ取っている訳で。


「今度は月皇も誘って皆で来ようか。」
「そうですね。彼の好きそうなメニューが沢山ありますし。」

「なんだか、皆が仲が良くて安心した…。」
「安心?」
「あ、いや、変な意味じゃなくて…この間の卯川君と月皇君の事もあったしもっと敵対してるのかと思った…。」

「…それは無いです。」
「申渡君。」

首を降る申渡君に辰己君が続く。

「彼らの事は素晴らしいと思っているよ。尊敬もしているし友好的でいたいとは思うけど…」


辰己君の一言に一瞬ゾッとする何かを感じる。

「俺達の敵ではない…かな。」

それが彼のプライドなのか、私自身が思っていたものと違う答えが返ってきたからなのか、それは分からない。
でも、彼が本気で言っているのは顔を見れば分かる。


「さて、それは置いといて、華咲さん、勉強しようか。」
「…う、お願いします。」
「我々の指導は厳しいですよ。」





2人のお陰で次の日の小テストは満点だったけれど… 密かに誓おう、もう2人に勉強見てもらうのは止めよう。









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